彼らは××が出来ない

庄野 一吹

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〈Prologue.冬場 隆二の企み〉

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『りゅーじ?』
『じゃあ、りゅーちゃん?』
『りゅーちゃん!』

 きゃらきゃらと天使のような笑みを浮かべた3人は、丸みをおびた手をこちらへ差し出してきた。

『『『よろしくね、りゅーちゃん!』』』

 今の住所へ引っ越して来たのが4歳の時。

 新しい家の近所には、俺と同い年の3人の男の子がいた。住む所も歳も近いとくれば自然と交流を持つようになり、俺達はいつも一緒だった。
 何をするにも、何処へ行くにも4人で1セット。俺らを見れば大人達は「相変わらず仲良しだね」と微笑ましくみつめる、近所でも評判の仲の良さだ。


 だから、初めてアイツらに会った瞬間。
 俺が内心で悲鳴をあげていただなんて、誰も想像すらしないだろう。

(りゅーちゃんって……やっぱりあの冬場ふゆば 隆二 りゅうじじゃねーか!!)


 俺は出会う前から、もっと言えば生まれる前から彼らの事を知っていた。いわゆる“前世の記憶”っていうやつで。

 タイトルは忘れてしまったが、その当時とても流行していた少女漫画があった。ヒロインが3人の魅力的な男性と甘酸っぱい恋愛繰り広げる学園ラブコメで、先が気になる物語展開と魅力的なキャラ、思わず悶えてしまう胸キュン要素に世の女性達は夢中になった。
 女子にモテたければコレを読め!なんて言われ、男性にもバイブル的な存在として人気が出て、かく言う俺もモテたい一心で読破した一人である。

 恋愛は障害が多いほど盛り上がるという事で、この作品にもヒロインらを邪魔する悪役キャラが居た。

 それがヒーロー達の幼なじみである冬場 隆二だ。
 優秀でイケメンな幼なじみ達にコンプレックスを抱いていた冬場 隆二は、彼らが思いを寄せるヒロインを自分の物にしようと画策する。だが隆二の努力虚しく惹かれあうヒロイン達、最終的にはもうアイツらの恋が成就しなければなんでもいい!とヒロインに危害を加えようとするとんでもない奴だった。
 読者からもだいぶ嫌われてたなぁ。最後はこれまでの行いがバレて、周りに冷たい目を向けられながら退学していったっけ。

 そんな冬場 隆二に、俺は転生してしまったのだ。

 意地悪そうな三白眼と下卑た笑みが似合う顔。漫画のビジュアルをそのまま小さくしたような姿に、鏡を見るたび薄々嫌な予感はしていた。
 けれどイケメン幼なじみはいなかったから安心していたのに、まさか引っ越し先で出会うなんて。え、俺って高校退学になっちゃうの? 幼なじみ達蹴落とすために女の子利用するクソ野郎になんの?

 ……ていうか、こんな奴に絶っっ対彼女できないじゃん!!

 皆の前で悲鳴をあげる事はなんとか堪えたが、その日の夜は熱を出して寝込んだ。


 お先真っ暗な将来と普通に苦しい高熱に枕を濡らしながら、俺は一生懸命今後の身の振り方について考えていた。今のところ漫画のような悪役ムーヴをするつもりはないけど、これからヒーロー達を憎まない保証も無いしなぁ……あんな完全上位互換な存在が身近に居たら、性格歪む可能性は十分あり得るし。
 えぇー嫌だよー。他人の当て馬で花の高校生活を消費するなんて悲し過ぎるよぉぉ。べそべそとひとしきり悩んだ後で、俺は良い案を思い付いた。


 そうだ、3人がヒロインに惚れなければ良いんだ。ヒーロー達を憎みその想い人を傷付けることになるなら、アイツらが誰も好きにならなければ、俺は誰も傷付けずに済む。恋する隙なんて与えなければ良い。熱に浮かされた脳みそには、これ以上ない妙案に思えた。

 グッバイ悪役! アデュー当て馬! ウェルカム ニュー ワールド! 俺は原作をぶっ壊し、平穏無事に高校を卒業する。そして今世でこそ、可愛い彼女をゲットするんだ!


 こうして、俺の計画は始動した。
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