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第4話「朝起きたら、家の前で元・公爵令嬢がモンスターに襲われていたので、自作の剣を貸してみた」
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ふかふかのベッドで目を覚ますと、小鳥の囀り……ではなく、金属が弾け飛ぶような甲高い音が聞こえてきた。
「……ん? なんだ?」
俺は土魔法で錬成したケイ素シリカの透明な窓ガラス越しに、外の様子を窺った。
俺の快適なコンクリートハウスの庭先(昨日まではただの荒野だった場所)で、一人の少女が三匹の「フォレストウルフ」に取り囲まれていた。
「くっ……! また、剣が……ッ!」
少女は銀色の髪を振り乱しながら、折れた剣の柄を握りしめていた。
動きは素人ではない。むしろ、無駄のない美しい身のこなしだ。しかし、彼女がウルフの硬い頭骨を殴りつけた瞬間、安物の鉄剣がパキンとあっけなく砕け散ってしまったのだ。
「あの戦い方……魔法を使わずに、純粋な腕力だけで魔物を叩き切ろうとしてるのか? そりゃ普通の鉄じゃ耐えられないだろ」
俺は寝起きの頭で冷静に分析する。
このままでは彼女はウルフの餌食だ。せっかくの静かな朝を、血生臭い事件で台無しにされたくはない。
俺はため息をつき、パジャマ代わりの麻の服のまま、玄関の重厚なコンクリート扉を押し開けた。
「おい、そこの君」
「えっ……!? 誰ですか、あなた! 逃げてください、ここは危険――」
「これ、使ってみてくれ」
俺は昨日、自分の護身用に作っておいた『超高純度炭素鋼の剣』を、彼女の足元へ放り投げた。ズンッ、と重い音を立てて剣が地面に突き刺さる。
「剣……? でも、どうせ私の力じゃ一振りで……」
「いいから。俺の安眠のために、さっさとソイツらを片付けてくれ」
少女は躊躇いながらも、その無骨な剣の柄を握った。
その瞬間、彼女の瞳が大きく見開かれた。
「この剣……重いのに、手に吸い付くように馴染む……!」
ウルフの一匹が、隙を見せた少女の喉笛に食らいつこうと跳躍した。
「ハァッ!!」
少女が剣を横に薙いだ。
空気を裂く、鋭い破擦音。
直後、宙を舞っていたウルフの体が、まるで豆腐でも切るように真っ二つに分断された。
「え……?」
少女自身が一番驚いていた。
続けて襲いかかってきた残りの二匹も、彼女が軽く剣を振り下ろしただけで、一切の抵抗を許さずに両断された。
血飛沫ひとつ浴びていない無傷の刀身を見て、少女はワナワナと肩を震わせた。
「す、すごい……。私が全力で振っても、刃こぼれ一つしない。魔力による強化もかかっていないのに、純粋な『鉄の質』だけでこれほどの強度を……!? まるで、神話の宝剣……!」
興奮冷めやらぬ様子で、少女はこちらに駆け寄ってきた。
よく見ると、ボロボロの革鎧を着ているが、その顔立ちは驚くほど整っており、どこか高貴な気品すら漂っている。
「あ、あの! 助けていただき、ありがとうございます! 私はクレア。冒険者ギルドでCランクとして活動しています!」
「俺はレンだ。まあ、怪我がなくてよかったよ。じゃあ、その剣を返して――」
「レン様! お願いがあります!!」
クレアは俺の言葉を遮り、勢いよく土下座のような姿勢で頭を下げた。
「私を、あなたの専属護衛として雇っていただけないでしょうか!?」
「……はい?」
「私は元々、王都の公爵家の生まれでした。ですが、魔力が一切使えない『無能』であったため、実家を追放されたのです。代わりに異常なまでの筋力を持っていましたが……どんな武器を使ってもすぐに壊してしまい、借金ばかりが嵩んで……」
クレアは愛おしそうに、俺の作った剣を頬に擦り付けた。
「ですが、この剣なら私の全力に耐えられます! 報酬は三食と寝床、そしてこの剣を使わせていただけるだけで構いません! どうか、どうかお願いします!」
見捨てられた元・公爵令嬢と、ハズレ枠として廃棄された俺。
妙な共通点を感じた俺は、頭を下げる彼女と、自分の作った広すぎるワンルームを交互に見比べた。
「……三食、料理を作ってくれるなら考えてもいいぞ」
「本当ですか!? ありがとうございます、ご主人様!!」
こうして、俺の気ままな異世界スローライフに、美少女の同居人が加わることになったのだった。
「……ん? なんだ?」
俺は土魔法で錬成したケイ素シリカの透明な窓ガラス越しに、外の様子を窺った。
俺の快適なコンクリートハウスの庭先(昨日まではただの荒野だった場所)で、一人の少女が三匹の「フォレストウルフ」に取り囲まれていた。
「くっ……! また、剣が……ッ!」
少女は銀色の髪を振り乱しながら、折れた剣の柄を握りしめていた。
動きは素人ではない。むしろ、無駄のない美しい身のこなしだ。しかし、彼女がウルフの硬い頭骨を殴りつけた瞬間、安物の鉄剣がパキンとあっけなく砕け散ってしまったのだ。
「あの戦い方……魔法を使わずに、純粋な腕力だけで魔物を叩き切ろうとしてるのか? そりゃ普通の鉄じゃ耐えられないだろ」
俺は寝起きの頭で冷静に分析する。
このままでは彼女はウルフの餌食だ。せっかくの静かな朝を、血生臭い事件で台無しにされたくはない。
俺はため息をつき、パジャマ代わりの麻の服のまま、玄関の重厚なコンクリート扉を押し開けた。
「おい、そこの君」
「えっ……!? 誰ですか、あなた! 逃げてください、ここは危険――」
「これ、使ってみてくれ」
俺は昨日、自分の護身用に作っておいた『超高純度炭素鋼の剣』を、彼女の足元へ放り投げた。ズンッ、と重い音を立てて剣が地面に突き刺さる。
「剣……? でも、どうせ私の力じゃ一振りで……」
「いいから。俺の安眠のために、さっさとソイツらを片付けてくれ」
少女は躊躇いながらも、その無骨な剣の柄を握った。
その瞬間、彼女の瞳が大きく見開かれた。
「この剣……重いのに、手に吸い付くように馴染む……!」
ウルフの一匹が、隙を見せた少女の喉笛に食らいつこうと跳躍した。
「ハァッ!!」
少女が剣を横に薙いだ。
空気を裂く、鋭い破擦音。
直後、宙を舞っていたウルフの体が、まるで豆腐でも切るように真っ二つに分断された。
「え……?」
少女自身が一番驚いていた。
続けて襲いかかってきた残りの二匹も、彼女が軽く剣を振り下ろしただけで、一切の抵抗を許さずに両断された。
血飛沫ひとつ浴びていない無傷の刀身を見て、少女はワナワナと肩を震わせた。
「す、すごい……。私が全力で振っても、刃こぼれ一つしない。魔力による強化もかかっていないのに、純粋な『鉄の質』だけでこれほどの強度を……!? まるで、神話の宝剣……!」
興奮冷めやらぬ様子で、少女はこちらに駆け寄ってきた。
よく見ると、ボロボロの革鎧を着ているが、その顔立ちは驚くほど整っており、どこか高貴な気品すら漂っている。
「あ、あの! 助けていただき、ありがとうございます! 私はクレア。冒険者ギルドでCランクとして活動しています!」
「俺はレンだ。まあ、怪我がなくてよかったよ。じゃあ、その剣を返して――」
「レン様! お願いがあります!!」
クレアは俺の言葉を遮り、勢いよく土下座のような姿勢で頭を下げた。
「私を、あなたの専属護衛として雇っていただけないでしょうか!?」
「……はい?」
「私は元々、王都の公爵家の生まれでした。ですが、魔力が一切使えない『無能』であったため、実家を追放されたのです。代わりに異常なまでの筋力を持っていましたが……どんな武器を使ってもすぐに壊してしまい、借金ばかりが嵩んで……」
クレアは愛おしそうに、俺の作った剣を頬に擦り付けた。
「ですが、この剣なら私の全力に耐えられます! 報酬は三食と寝床、そしてこの剣を使わせていただけるだけで構いません! どうか、どうかお願いします!」
見捨てられた元・公爵令嬢と、ハズレ枠として廃棄された俺。
妙な共通点を感じた俺は、頭を下げる彼女と、自分の作った広すぎるワンルームを交互に見比べた。
「……三食、料理を作ってくれるなら考えてもいいぞ」
「本当ですか!? ありがとうございます、ご主人様!!」
こうして、俺の気ままな異世界スローライフに、美少女の同居人が加わることになったのだった。
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