Neo Tokyo Site04:カメラを止めるな! −Side by Side−

蓮實長治

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第二章:IN THE HERO

高木 瀾(らん) (2)

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「おい、何で、ウチのアカウントで対戦相手の方が格好良く見える動画を流してんだッ?」
 いきなり撮影チーム用のテントに、『入谷七福神』の関係者らしい中年男が怒鳴り込んで来た。
「えっと……それは……その……」
「誰がやったッ⁉」
「私のアイデアです」
 そう言って私は手を上げた。
「……誰……?」
「撮影のバイトです」
「バイトが、何、勝手な事やって……」
 ところが続いて……。
「あの……ウチのエラいさんが……試合の様子をコマ落しして動画サイトで流すのは卑怯じゃないか? ってうるさいんで、やめてもらえますか?」
 そう言って来たのは「報道」の2文字の間に菊と仏教の法具の輪宝を組合せたマークが描かれた腕章を付けた、三十過ぎの太り気味の気の弱そうな男性。
 多分……「寛永寺僧伽」側の撮影スタッフなのだろう。
「へっ?」
「いや、だって、ウチの選士の武器の正体が丸判りでしょ」
「あの……この試合って、セコンドとかチームメイトが助言するのも反則ですか?」
「いや、そりゃ、反則じゃないけど、撮影スタッフはセコンドでもチームメイトでも無いでしょ。……ってか、誰?」
「バイトです」
「バイト?」
「おい、だから、何でバイトが話をややこしくするような真似を……」
 ところが、ところが、更に続いて……撮影スタッフ用のテントに慌てて駆け込んで来た人が……。
「すいません、関口選士から無線連絡です。関口選士が連れて来た撮影のバイトに代ってくれって……」
「何で?」
「何で?」
「何で?」
(以下略)
 …………。
 撮影スタッフほぼ全員と、怒鳴り込んで来た中年男と、クレームを入れに来た相手チームの撮影スタッフが、ほぼ同時に、同じセリフを口にした。
「はい」
『おい、お前なら判るだろ、あの錫杖の正体は何だ? お前なら、どう戦う?』
「時間が無いんで、敬語抜きで手短に言うぞ……」
 わざとコマ落しをしたカクカクした中継動画の中で、関口の対戦相手が振っているのは……錫杖に見せ掛けた、中国武術のある武器に良く似たモノだった。
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