64 / 93
第四章:Heart of Darkness
高木 瀾(らん) (4)
しおりを挟む
「待て」
「えっ?」
「あの男……もう正常みたいだぞ……」
オレンジ色の服を着たゾンビもどきに追われているBボーイを助ける為に駆け出そうとした直前、関口が私に声をかける。
「『あの男』って、追われてる方じゃなくて……追ってるゾンビもどきの事か?」
「そう……。余程、気配を隠すのが巧い『悪霊』に取り憑かれてんじゃなけりゃ……正気に戻ってる筈だ」
何か理由が有って、ゾンビもどきのフリをしているらしいが……その「理由」は何だ?
「判った」
「えっ?」
今回、「えっ?」と言ったのは関口だった。
私は駆け出し……そして……。
「伏せろッ‼」
「うわああああッ‼」
「うわああああッ‼」
私が叫んだ直後、男の悲鳴が2つ。
私は手にしていた大型バタフライ・ナイフを展開。
周囲の人間には、強化プラスチックの棒か何か中から、突如、刃が飛び出てきたように見えただろう。
逃げていた「原宿Heads」の構成員は私の指示通り、しゃがみ込み……。
その頭上を刃が通過。
刃はギリギリでゾンビもどき……もしくは、そのフリをしている受刑者の顔に命中しなかった。
その受刑者の顔に浮かんだ表情は……ゾンビもどきではなく、感情と知性を持つ人間のものだった。
「な……なにしてやがるッ‼」
周囲から一斉に絶叫。
「あんたこそ、何してた?」
私はゾンビもどきのフリをしていた囚人に、そう訊いた。
「殺す気かッ⁉」
「わざと刃が届かない位置から攻撃した。命中しないのが確実なのを『攻撃』と呼べればだが」
「正気に戻すにしても、手荒過ぎるだろ」
「四谷百人組」の女性が、声を荒げる。
「いや、この人物は最初から正気のようだ。ゾンビもどきのフリをしていた理由は不明だが」
「え……えっと……」
ゾンビもどきのフリをしていた受刑者は……腰を抜かして座り込み……そして……。
「うわっ‼ 汚ねえぞ、ボケッ‼」
さっきまで、ゾンビもどきのフリをしていた受刑者に追われていたBボーイの怒号。
「だ……だってよう……って、あんたら、そもそも誰だ?」
「貴方達を救助に来た。まずは、質問に答えてくれ。質問は3つだ」
「ええっと……」
「1つ目。何故、ゾンビもどきのフリをしていた?」
「い……いや……えっと……意識を取り戻したら……看守が、あんたの言う『ゾンビもどき』になって、囚人や他の看守を襲ってて」
「それで?」
「何とか逃げ出したら、マトモな奴と『ゾンビもどき』が入り混じってる状態だったんで……」
「だから?」
「『ゾンビもどき』のフリをしてたら、『ゾンビもどき』に襲われないかと思って……」
……。
…………。
……………………。
「すまん、私には『魔法』関係の知識がそれほど無いので判らないのだが……」
私は関口に問い掛けた。
「なんだ?」
「この人物がやった行為は、類感呪術とやらの一種か?」
「えっ?」
「あの男……もう正常みたいだぞ……」
オレンジ色の服を着たゾンビもどきに追われているBボーイを助ける為に駆け出そうとした直前、関口が私に声をかける。
「『あの男』って、追われてる方じゃなくて……追ってるゾンビもどきの事か?」
「そう……。余程、気配を隠すのが巧い『悪霊』に取り憑かれてんじゃなけりゃ……正気に戻ってる筈だ」
何か理由が有って、ゾンビもどきのフリをしているらしいが……その「理由」は何だ?
「判った」
「えっ?」
今回、「えっ?」と言ったのは関口だった。
私は駆け出し……そして……。
「伏せろッ‼」
「うわああああッ‼」
「うわああああッ‼」
私が叫んだ直後、男の悲鳴が2つ。
私は手にしていた大型バタフライ・ナイフを展開。
周囲の人間には、強化プラスチックの棒か何か中から、突如、刃が飛び出てきたように見えただろう。
逃げていた「原宿Heads」の構成員は私の指示通り、しゃがみ込み……。
その頭上を刃が通過。
刃はギリギリでゾンビもどき……もしくは、そのフリをしている受刑者の顔に命中しなかった。
その受刑者の顔に浮かんだ表情は……ゾンビもどきではなく、感情と知性を持つ人間のものだった。
「な……なにしてやがるッ‼」
周囲から一斉に絶叫。
「あんたこそ、何してた?」
私はゾンビもどきのフリをしていた囚人に、そう訊いた。
「殺す気かッ⁉」
「わざと刃が届かない位置から攻撃した。命中しないのが確実なのを『攻撃』と呼べればだが」
「正気に戻すにしても、手荒過ぎるだろ」
「四谷百人組」の女性が、声を荒げる。
「いや、この人物は最初から正気のようだ。ゾンビもどきのフリをしていた理由は不明だが」
「え……えっと……」
ゾンビもどきのフリをしていた受刑者は……腰を抜かして座り込み……そして……。
「うわっ‼ 汚ねえぞ、ボケッ‼」
さっきまで、ゾンビもどきのフリをしていた受刑者に追われていたBボーイの怒号。
「だ……だってよう……って、あんたら、そもそも誰だ?」
「貴方達を救助に来た。まずは、質問に答えてくれ。質問は3つだ」
「ええっと……」
「1つ目。何故、ゾンビもどきのフリをしていた?」
「い……いや……えっと……意識を取り戻したら……看守が、あんたの言う『ゾンビもどき』になって、囚人や他の看守を襲ってて」
「それで?」
「何とか逃げ出したら、マトモな奴と『ゾンビもどき』が入り混じってる状態だったんで……」
「だから?」
「『ゾンビもどき』のフリをしてたら、『ゾンビもどき』に襲われないかと思って……」
……。
…………。
……………………。
「すまん、私には『魔法』関係の知識がそれほど無いので判らないのだが……」
私は関口に問い掛けた。
「なんだ?」
「この人物がやった行為は、類感呪術とやらの一種か?」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
アブナイお殿様-月野家江戸屋敷騒動顛末-(R15版)
三矢由巳
歴史・時代
時は江戸、老中水野忠邦が失脚した頃のこと。
佳穂(かほ)は江戸の望月藩月野家上屋敷の奥方様に仕える中臈。
幼い頃に会った千代という少女に憧れ、奥での一生奉公を望んでいた。
ところが、若殿様が急死し事態は一変、分家から養子に入った慶温(よしはる)こと又四郎に侍ることに。
又四郎はずっと前にも会ったことがあると言うが、佳穂には心当たりがない。
海外の事情や英吉利語を教える又四郎に翻弄されるも、惹かれていく佳穂。
一方、二人の周辺では次々に不可解な事件が起きる。
事件の真相を追うのは又四郎や屋敷の人々、そしてスタンダードプードルのシロ。
果たして、佳穂は又四郎と結ばれるのか。
シロの鼻が真実を追い詰める!
別サイトで発表した作品のR15版です。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる