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ナチスの手口に学んではどうかね?

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「あの、総理、就任から、そろそろ3ヶ月ですよ……」
「それがどうした?」
「国会を開けって、野党もマスコミも五月蝿いんですけど、どうします?」
「無視しろ」
「いや、でも、所信表明演説をやらないと、総理がどう云う政策をしたいのか、さっぱり判らないって言われてるんですけど……」
「所信表明演説なら、俺が総理になった時の特別国会でやっただろ」
「参院・衆院合わせて、たった、一〇分のね」
「長けりゃいいって、問題じゃね~だろ」
「でも、問題は山積みですよ。総理に就任されてから、超弩級の台風が5つも上陸して、震度6以上の地震が7回。アメリカ・中国・台湾・ロシア・韓国・インド・東南アジア諸国・中東諸国・アフリカ諸国、全部、外交関係は悪化」
「いい加減にしろ。俺が官房長官だった頃、国会対応のストレスで、どれだけ髪が抜けたと思ってるんだ?」
「どっちみち、一ヶ月半後には通常国会ですよ。準備はしてますか?」
「だから、国会なんか出たくねぇって言ってるだろ」
「でも、どう足掻いても、通常国会は始まりますよ」
「畜生、どうすりゃいいんだ……。折角、苦労して総理になったのに、ちっとも楽出来ねぇって、どう云う事だよ?……何とか、国会を開かずに済む方法は……あ、そうだ。国会議事堂を爆破して、その罪を適当な野党に擦り付けろ。国会議事堂が無ければ、国会を開く事は出来ねぇだろ」
「はぁ?」
「俺の何代か前に総理だったあのボケ老人が言ってただろ、『ナチスの手口に学んではどうかね?』って」
「……い……いや、そう云う意味でしたっけ?」
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