上 下
55 / 105
第七章:Reach

(6)

しおりを挟む
『秘かに両方始末するのと、ニュースになるようなぶつかり方をさせた上で鎮圧するの、どっちがマシだと思う?』
『厄介だな。短期的に見れば前者だが、長期的に見れば判断が難しいな。両者がしばらく冷戦状態になってくれるのがありがたいが……』
 九州と関西の「正義の味方」達がオンラインで打ち合わせをしていた。
 発言者の顔は不明。音声も変性されたもの。モニタには発言者を示すシンボルと発言者の所属と暗号名コードネームが表示され、場合によっては、音声ではなくテキスト・メッセージによる「発言」も有る。
「ちょっと待って、この打ち合わせへの韓国の釜山プサンチームの参加を要請する」
 そう言ったのはらんさん。
「ああ、多分だが……私も同じ事を考えてた」
 続いて日焔さん。
「え?」
『言いたい事は大体予想が付くが、一応、訊く。質問は何だ?(翻訳:韓国語→日本語)』
 続いてテキスト・メッセージでそう表示される。なお、日本語のテキスト・メッセージの下には原文と思われる韓国語の文章。
「すまない、釜山チーム。『熊おじさんホールディングス』が日本に送り込んだのは、福岡で目撃されたチームだけか?」
『まだ未確認。ただし、日本に暗殺部隊を派遣したのが判ったのとほぼ同時に、熊社長とその直属チームの所在が不明になった。(翻訳:韓国語→日本語)』
 ところが、更に打ち合わせに広島の廿日市はつかいちチームが参加。
『大阪でマズい事が起きそうだって話だけど……事態が更にややこしくなるかも知れない』
「どうした?」
『佐伯漣が大阪に向かうそうだ』
 全員が……唖然となった。
 佐伯漣……それは広島県を実効支配している暴力団「神政会」のラスボスを超えた裏ボスだ……。
「何の為に?」
『えっと……「大阪」と「神政会」が共同経営してる会社の株主総会だそうだ』
「何だ、その会社は?」
『何て言うか……「魔法少女」ってが有るだろ。それの会社だ』
『あ……ちょっとマズいぞ。多分だが……「大阪」は。何だったら、「使
 和歌山県内のチームのメンバーから更に指摘。
「戦闘要員よりもレスキュー隊が必要な事態になりそうだな……それも、数千人単位で……」
 らんさんが絶望的な声をあげた。
しおりを挟む

処理中です...