魔導兇犬録:HOLDING OUT FOR A HERO

蓮實長治

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第一四章:悲しみに振り向けば明日が見えないよ

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「教えて下さい。やり方を……」
「お前の友達が放ってる邪気を取り込んで、友達に返せ」
 えっ……?
「そ……そんな事やったら……」
 邪気・瘴気・闇の力・ケガレ……何と呼んでもいいけど、そう呼ばれる「気」「霊力」「魔力」は……早い話が「人間の心身に悪影響が有る魔法的な力の総称」だ……。そんな事をすれば……。
「お前なら出来る。だが、失敗の可能性も有る。失敗すれば、お前は死ぬか……下手したら人じゃない化物に変る。そうなったら、お前の友達を殺すしか打つ手は無くなる。最悪の場合は、お前も一緒にだ。だから、お前にやらせたくなかった」
「あ~、あたしは、ややっこしい説明は苦手だけど……
 そう言ったのは……優那ちゃんが放つ「邪気」を押えている強化装甲服パワードスーツの魔法使い。
「なら、最初から、それを言え。居るんだな、使使。……やれやれ、そんな所だろうと思ってたら、やっぱりか……」
 護国軍鬼は、そう言った。
「何で判った?」
「お前らが迷ってるのが見え見えだったからだ。成功率が余りに低いなら、そもそも、そいつに、そいつにしか出来ない手が有る事を教えない。だが、そいつに『お前なら出来る』と言い切れるほどの成功率じゃないから、やらせるかどうかを迷っていた。お前らが見込んでる成功率は5割未満だが2割以上、そんな所だろ?」
「判ってて、一芝居打ったのか?」
「言うまでもない。あ、全部、打ち合わせなしのアドリブだ、この2人は、私が本気でやると思ってた」
「そ……そんな、人が悪過ぎ……」
 沙也加ちゃんの彼氏が、悲鳴に近い一言。
 続いて、沙也加ちゃんのお兄さんが……自分の口を指差した後、何かのハンドサイン。
「悪い、忘れてた」
 護国軍鬼は、そう言って、沙也加ちゃんのお兄さんの口から拳銃を引き抜いた。
「あと、芝居だったなら、そいつを踏んでる足は、もうどけて良いだろ」
「何で?」
「何でって、何で?」
「私があいつだったら、私が足をどけた途端に、電撃をブッ放つ」
 護国軍鬼は、沙也加ちゃんを指差して、そう言った。対して、沙也加ちゃんは……ノーコメント。
「やれやれ……ただし、あたしが知ってる奴は、キャリアうん十年の超ベテラン。そいつは、超ド新人。お前の言う通りだ。成功率は5割はいってねえ。けど、そいつが思ってるよりは、ずっと高い。そ~ゆ~ビミョ~なラインだと思ってくれ」
「そうか……」
 護国軍鬼は、あたしの肩に手を置いた。
「いいか……『何としても生きて何かをやり遂げる』という断固たる決意と、自分の生命や未来への徹底的な無関心……人間ってのは、それを同時に心に抱く事が可能だ。そして、それをやらなければ成し遂げられない事が有る。出来るか?」
「ちょ……ちょっと……そんな事……どうやれば……」
「私は……教えてやれん。勉強でもスポーツでも武術や格闘技でも……そして、私には魔法が使えないが、多分、魔法でも……。天才は、少なくとも一点に関しては秀才に劣る。絶対に、優れた教師、優れたコーチには成れない。私は、。だから、他人にそれをどうやるかを教える事は出来ん」
「じゃあ、そんなアドバイス、役に立た……」
「でも、それを何と呼ぶかは知っている」
「えっ?」
「『何としても生きて何かをやり遂げる』という断固たる決意と、自分の生命や未来への徹底的な無関心……それを1人の人間が、同時に自分の心の中に合わせ持つ事……それは一般的には、こう呼ばれる……」
「何?」
だ」
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