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存在しない戸籍と「裏切り」すら出来ない筈の「裏切り者」
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最近はPCやスマホでも、ここまで高度な音声処理が出来るのか……。
一部だけ切り取ってるのに、切り取られた部分で言い終ってるようにしか聞こえない。
まぁ、これを「ノイズ除去処理」だと強弁するのは、あまり良心的には思えないが……。
いや、呑気な感想を抱いている場合ではない。
被害者は私なのだから。
今にして思えば、あんな怪しいメディアが相手だった時点で、こっち側も電話内容を録音しておいた方が良かったかも知れない。
発端は数日前に、あるWEBメディアからの電話での問い合わせだった。
ネット右翼系のWEBメディアだと云う時点で嫌な予感がしたが……。
「あの、A国の大統領選挙の暫定当選者であるB候補の選挙不正に関してですが……現職のT大統領の弁護士によれば、B候補がM州のE郡で大規模な不正を行ない、E郡の有権者が全員、B候補に投票していると云う不自然な結果が……」
何故、A国の大統領選挙についての陰謀論が、この日本で広まっているのか、さっぱり判らないが……まぁ、一応、言っておくべきだろう。
「あの……A国のM州にE郡なる地域は有りません」
「えっ? そんな馬鹿な?」
「WEBメディアとは言え、報道機関でしょ? 地図を見て調べる位の裏を取って下さい」
「でも……地図から消された町なんてのも昔……」
「それは別の国の話ですし、そもそも、A国の『郡』には複数の市町村が含まれています。町1つ地図から消すのとは訳が違いますよ」
「はぁ……そうですか……。では……B候補には戸籍が無いと云う話は本当ですよね?」
「えっ?」
「ええ……ですから、A国の戸籍を調べても、B候補の情報が無い……つまり、B候補は、そもそも、A国人では無く、A国を乗っ取ろうとする他国の工作員……」
「んな訳無いでしょ」
「根拠は何ですか? A国の戸籍にはB候補の戸籍が無いと云うのは……確実な情報のようですが……」
どこが確実……いや、論理学の基礎が頭に浮んだ。
「α→β」と云う命題は、αが真の場合はβも真である事がこの命題が真である条件の1ついだが、αが偽の場合はβが真でも偽でも真になる。
高校や大学での論理学や集合論の授業・講義で居眠りをしていたヤカラにはピンと来ない話だろうが、ベン図を描けば、一発で判る話だ。
「そりゃ、たしかにB候補の戸籍が無いのは確実ですね……」
そのWEBメディアは、私のこの回答の最初の部分だけを切り取って掲載した。
ご丁寧にも、音声ファイル……ただし加工されたモノまで動画サイトにUPしやがった。
私の回答の続きは、こうだ。
「だって……A国には戸籍制度が有りませんから……。そもそも戸籍は東アジアに特有な制度で、今でも残っているのは、日本を入れても2~3ヶ国だけですので」
このニュースは、A国に逆輸入された。
もちろん、戸籍制度が無いA国で報じられる場合は「意訳」が必要だった。
そして、意訳の内容はこうだった。
「B候補にはA国籍が無いのは確実と日本の国際政治学者が明言」
言うまでもなく、私はSNSや大学や研究室のWEBサイトなどあらゆる手段を使って、「私の発言」が、ほぼ捏造に近いモノだと云う事実を広めようとした。
その結果起きたのは、SNSアカウントへの攻撃や、大学・研究室への抗議メールの山だった。
その多くには、こう書かれていた。
「裏切り者」
……いや、裏切りたくても、元からお前らの側じゃない。
一部だけ切り取ってるのに、切り取られた部分で言い終ってるようにしか聞こえない。
まぁ、これを「ノイズ除去処理」だと強弁するのは、あまり良心的には思えないが……。
いや、呑気な感想を抱いている場合ではない。
被害者は私なのだから。
今にして思えば、あんな怪しいメディアが相手だった時点で、こっち側も電話内容を録音しておいた方が良かったかも知れない。
発端は数日前に、あるWEBメディアからの電話での問い合わせだった。
ネット右翼系のWEBメディアだと云う時点で嫌な予感がしたが……。
「あの、A国の大統領選挙の暫定当選者であるB候補の選挙不正に関してですが……現職のT大統領の弁護士によれば、B候補がM州のE郡で大規模な不正を行ない、E郡の有権者が全員、B候補に投票していると云う不自然な結果が……」
何故、A国の大統領選挙についての陰謀論が、この日本で広まっているのか、さっぱり判らないが……まぁ、一応、言っておくべきだろう。
「あの……A国のM州にE郡なる地域は有りません」
「えっ? そんな馬鹿な?」
「WEBメディアとは言え、報道機関でしょ? 地図を見て調べる位の裏を取って下さい」
「でも……地図から消された町なんてのも昔……」
「それは別の国の話ですし、そもそも、A国の『郡』には複数の市町村が含まれています。町1つ地図から消すのとは訳が違いますよ」
「はぁ……そうですか……。では……B候補には戸籍が無いと云う話は本当ですよね?」
「えっ?」
「ええ……ですから、A国の戸籍を調べても、B候補の情報が無い……つまり、B候補は、そもそも、A国人では無く、A国を乗っ取ろうとする他国の工作員……」
「んな訳無いでしょ」
「根拠は何ですか? A国の戸籍にはB候補の戸籍が無いと云うのは……確実な情報のようですが……」
どこが確実……いや、論理学の基礎が頭に浮んだ。
「α→β」と云う命題は、αが真の場合はβも真である事がこの命題が真である条件の1ついだが、αが偽の場合はβが真でも偽でも真になる。
高校や大学での論理学や集合論の授業・講義で居眠りをしていたヤカラにはピンと来ない話だろうが、ベン図を描けば、一発で判る話だ。
「そりゃ、たしかにB候補の戸籍が無いのは確実ですね……」
そのWEBメディアは、私のこの回答の最初の部分だけを切り取って掲載した。
ご丁寧にも、音声ファイル……ただし加工されたモノまで動画サイトにUPしやがった。
私の回答の続きは、こうだ。
「だって……A国には戸籍制度が有りませんから……。そもそも戸籍は東アジアに特有な制度で、今でも残っているのは、日本を入れても2~3ヶ国だけですので」
このニュースは、A国に逆輸入された。
もちろん、戸籍制度が無いA国で報じられる場合は「意訳」が必要だった。
そして、意訳の内容はこうだった。
「B候補にはA国籍が無いのは確実と日本の国際政治学者が明言」
言うまでもなく、私はSNSや大学や研究室のWEBサイトなどあらゆる手段を使って、「私の発言」が、ほぼ捏造に近いモノだと云う事実を広めようとした。
その結果起きたのは、SNSアカウントへの攻撃や、大学・研究室への抗議メールの山だった。
その多くには、こう書かれていた。
「裏切り者」
……いや、裏切りたくても、元からお前らの側じゃない。
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