悪夢のテロ対策AI

蓮實長治

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悪夢のテロ対策AI

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「こんな事になったのも、犯人が間違った行為を選択した結果です」
 「元」を含めた与党幹部や閣僚が選挙演説の際にテロリストに襲撃されると云う事件が年に数回の頻度で起きるようになって5年以上。
 テロリストによる与党の大物への襲撃を予測するAIが開発されたはいいが、予測は外れ、ついに現職の総理大臣が死亡する事になった、
「そりゃ、テロリストだから法的・倫理的に間違った真似をするでしょうが……何が言いたいんですか?」
 あまりの事態に、へっぽこ極まりないテロ予測AIの開発責任者である警察官僚が国会で証人喚問を受ける事になった。
「我々のAIに間違いは有りません。間違った選択をしたのはテロリストの方です。その結果として、AIの予測が外れたに過ぎません」
「え……えっと……何を言われてるか判りませんが……テロ予測AIが『警固を厳重にすべき』と進言した地域では、ほぼ毎回、何も起きませんでしたよね?」
「そうです。AIの進言通り警固を厳重にした結果です」
「ですが、毎回のようにテロが起きてるのは、テロ予測AIが『通常警固で問題無し』と判断した場所ですよね?」
「それが、テロリストどもが阿呆である所以です。奴らは間違った場所でばかり犯行を行なっている」
「あの……何か変じゃありませんか?」
「何がですか?」
「例えば、テロ予測AIが『テロの危険あり』と判断しているのは、政府・与党の政策に反対している人が多い地域、それも、それらの反対運動が組織化されているような場所だ」
「常識的に考えて、そのような場所では政府関係者や与党幹部へのテロが起きる確率が高まると思いますが?」
「ですが、実際にテロが起きてるのは、むしろ与党支持者の割合が平均的かそれ以上で、政府・与党の政策への反対運動が特に無い地域だ」
「それが、テロリスト達が非合理的な阿呆である理由です。全くもって、テロが起きる筈の無い場所でテロを起こしている」
「ちょっと待って下さい。それは、テロ予測AIが裏をかかれているって事では?」
「その考えは非合理的です。ここ数年の政府・与党関係者を狙ったテロは一匹狼ローンウルフ型が大半です。使
「ですが、予測は外れ続けている」
「ですから、テロリストの方が阿呆なのです」
「なら、テロ予測AIに対して、その阿呆のやる事を予想出来るような学習をさせてるんですか?」
「その考えは非合理的です。ここ数年の政府・与党関係者を狙ったテロは多発しているとは言え、百件未満です。AIの学習データとして使うには全然サンプル数が足りません」
「ちょっと待って下さい。じゃあ、テロ予測AIの学習データは何なんですか?」
「そりゃあ……長年テロ対策を行なってきた、公安の優秀な……」
「おい、ちょっと待てッ‼」
「え……えっと……どうしたのでしょうか議員? 冷静になって下さい……」
「冷静になれるかボケっ‼ 私の事を、散々、非論理的だと言ったり、テロリストを阿呆呼ばわりしてたあんたこそ、とんだ大馬鹿じゃねえかッ‼」
「あ……あの……言われてる事が理解出来かね……」
「だ・か・らッ‼ 何でッ‼ ッ⁉」
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