悪夢の未来転生

蓮實長治

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悪夢の未来転生

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「ええっと……貴方は……2020年代の日本人ですよね?」
 気が付くと、やたらと汚なく暗い寒い建物の中で、俺は、汚いボロボロの服装の中高年の男達に囲まれていた。
「だ……誰だ……あんた達は?」
「日本亡命政府の者です」
「亡命政府?」
「はい……ここは貴方の時代から見た未来の……月です」
「月って……空に有る月?」
「そうです……この時代の日本には……外国に国を売り渡した売国奴しか残っていません。我々、日本を愛する普通の日本人は……地球に居場所が無くなり……この月の地下の流刑地に送られたのです……。月への植民実験を兼ねて……」
「ちょ……ちょっと待って、どうして、そんな事になったの?」
「貴方の時代ごろに、何故か、日本人の大量絶滅が起きまして……。その結果、日本は……国のていを成さなくなりました」
「えっ?」
「つまり、我々は、貴方を日本人の大量絶滅より救い出し、この未来の世界の月の地下の植民地に転生させたのです」
「は……はぁ……。そりゃ、どうも……」
「それで、貴方に証明していただきたいのですが……」
「何を?」
「貴方が生きてた時代の日本は、世界に冠たる素晴らしい国だったと……」
「ええ、TVでは、いつも『日本スゲェ!!』的な番組が放送されてましたよ」
「TV?」
「どうかしましたか?」
「ネットでは、どう言われてましたか? 当時の記録ではTVや新聞は嘘ばかりで、真実はネットにしか残ってないと……」
「ええっと……」
「GDPは中国より上ですよね」
「あ……あぁ……ええっと……1人当りは……」
「1人当り?」
「中国は人口が多いですし……」
「つまり、1人当りのGDPは世界有数なんですよね?」
「ええっと……どうだったかな?」
「我々の手に有る政府の公式記録では、世界有数の豊かな国だったと記されていますが……」
「はぁっ?」
 ちょっと待て、その「政府の公式記録」って、本物の「政府の公式記録」か?
 そう思った時、周囲から怒りと怨嗟の声が轟いた……。おそらく、俺が素頓狂な声をあげたのと、そんな馬鹿な、と云う表情かおをしたせいだろう。
「またか……」
「何故、いつもだ……?」
「どうして、日本を愛する普通の日本人は転生せず、偽の日本人ばかりが、この時代にやってくるのだ?」
「失敗だな、こいつも殺すしか無い」
 周囲の薄汚ない連中は……ある者は、見るからに切れ味の悪そうな刃物を、別の誰かは、どこからか錆び付いたトンカチを持って来て……。
「ちょっと待て、最期に1つだけ聞かせてくれ。あんた達は、一体、今まで、どれだけ、俺の時代の人間を転生させたんだ?」
「知るか。少なくとも、ここの10万の人口を500年は養えるだけの冷凍肉は確保出来たが……」
 待て……まさか、こいつらは俺の時代で死んだ誰かを転生させるんじゃなくて、こいつらが俺の時代の誰かを転生させると、そいつは俺の時代で死ぬ事になるのか? だとすると……。
「待て、俺の時代で日本人の大量絶滅が起きた理由と、それを防ぐ方法を教え……」
 だが、言い終える前に、羽交い締めにされた俺の喉に、錆び付いて、刃が所々欠けたナイフの刃が、ゆっくりと刺さっていき……。
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