荒神録 ─ Demonic Divinity Saga ─ BELIEVER

蓮實長治

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第一章:無間道

兄(3)

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「この子が、お前の新しい弟だ」
 連れて来られた、その子も困惑しているようだった。
 叔父の1人の息子……戸籍上は、俺の従兄弟だった。……養子縁組の届けを役所に出すまでは。
 親類の中で、唯一の味方だった「沼田のおじさん」は妹に奪われた。
 妹は、「沼田のおじさん」の養子になり、この地獄のような家から抜け出す事が出来た。
 しかも、俺は、どうやら、この家の本当の子供じゃなかったらしい。
 子供の頃に、途方もない才能が有ると勘違いされて、遠い親類から、この家にもらわれてきた子供。
 それが俺だ。
 そして、俺が小学校の頃に、俺の才能は父や祖父の勘違いだと判明した。
 まぁ、それも仕方ない。「今の基準で過去を裁くな」ってのは正論であり、もし、それに異を唱える権利が有る奴が居るなら、その過去の基準のせいで人生を無茶苦茶にされる級の余程ロクデモない目に遭った奴ぐらいだろう。……つまり、俺のような奴だ。
 しかし、もう、この時期には、俺の心は折れていた。状況に流されるだけの、自分で決断が出来ない駄目な人間と化していた。
 俺が物心付く前、この家に引き取られた頃は、いわゆる「特異能力者」の存在が一般に明らかになって間も無い時期で、当の「特異能力者」達でさえ、ようやく……例えば「魔法使い」系であれば、自分達の同業・同類が、かつて思っていたよりも遥かに多く世の中に居る事を知ったばかりで……以下、妖怪系・超能力者その他色々も以下同文だった。
 つまり、俺が、このクズな一家の養子になった頃に、やっと、流派・宗派を超えた「魔法使い」系同士の横のつながりが出き始めたばかりで、後には「当り前」になった「魔法の常識」も、その頃の「魔法使い」系にとっては常識でも何でもなかった。
「あ……あの……」
「何だ?」
 ひょっとしたら、これが俺の人生で「最も」ではないにせよ2番目か3番目ぐらいには勇気を出した瞬間かも知れない。
「この家の新しい跡継ぎが出来たのなら……僕は、元の家に返してもらえませんか?」
 俺がもらわれてきた子供なら……本当の親が居る筈だ。
 多分だが、本当の親の元なら、この家よりもマシだろう。
「二度と、そのような事は言うな。お前は、この家の子供だ」
 映画やドラマやアニメであれば、感動的なセリフだろう。
 でも……残念ながら、俺が居る世界は現実で、現実では作り話より、もっと酷い事などいくらでも有る。
 用済みの筈なのに、この地獄のような家から解放されない……。
「では、学校が終ったら、毎日、修行を行なう」
 だが、父は……自分が用済みになったと思い込んでいた、その時の俺にとって、意味不明な一言を告げだ。
「修行には、お前も同席しろ。さぼる事は許さん」
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