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第一章:無間道
妹(6)
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それから2月ほど、休みの日には関東各地……それどころか、甲信や静岡、更には日本海側まで行く事も有った……に出掛ける事になった。
出掛けた先は、どうやら、私の実家と「同業」らしかった。
つまり、修験道系の呪術者達だ。
どうやら、その呪術者達は、呪術・魔法・心霊術……何と呼んでも良いが、その手の「術」で、私の「何か」を調べているようだった。
調べ終った後も、叔父……今は父と長く話し込む事も多かった。
「今日で終りだ。慣例の一〇人が揃った」
「慣例って?」
「大昔、誰かが仏教の僧侶になるには、一〇人の立ち会い人の僧侶が必要だった。三師七証と言われている。戒律を授ける者が1人。その補佐が2人。そして、戒律を授ける儀式の証人が7人。それに倣って、ウチの流派でも、誰かが新しく修行を始める際は、自流・他流を問わず、一〇人に意見を求めていた……と言っても戦前まではの話だが……」
「何で、昔はやってたけど、今はやってない事を、私にはやったの?」
「お前は、特殊過ぎる」
車で帰っている途中に、新しい父は、そう説明した。
「修験道系の呪術では、術の得手不得手や、術者としてのタイプを一言で言い表す『記号』として、仏教の神仏の名前を使う。これを『守護尊』と呼ぶ」
その日は、天気予報が外れて、大雨だった。
そんな時間でも無いのに、外はすっかり暗くなり、車のワイパーが雨を払っていた。
「仏教の神仏には序列が有る。単なる神と仏や菩薩の間には、天と地ほどの位の差が有り、同じく神でも、仏や菩薩が仮に下位の神の姿を取っているとされる権神と呼ばれる神と、実神と呼ばれる純然なる神には、やはり格の違いが有る。ただ、我々にとって重要な事は、守護尊の位や格と術者の力の間に、余り関係は無いと云う事だ」
「え……? どう云う事?」
マンガやアニメやゲームなら……その「守護尊」が格上である程、力も強い筈……そう思っていたのに、意外な話になってきた。
「位の高い仏や菩薩は、簡単には願いを叶えてくれない代りに、願いが叶った事による副作用は、ほぼ無い。位の低い神は、安易に願いを叶えてくれるが……神とは言っても仏や菩薩ほどの知恵は無いので、願いが叶った事によるしっぺ返しが起きる場合が有る……そう言われている。今風に言えば、位が高いほど、中々『OK』と言ってくれないが、一度『OK』と言ってくれたなら、アフターサポートもバッチリ、位が低いほど、安易に『OK』をしてくれるが、アフターサポートは期待出来ない、と言った所かな?」
「え……えっと、じゃあ……その?」
「位の低い神の力を借りた術ほど西洋魔術で言う『黒魔術』に近いモノになる。仏や菩薩を守護尊とする術者より、神を守護尊とする術者の使う術こそ副作用が大きいものになり、神の中でも、仏や菩薩の化身とされる神よりも純然たる神の場合が、より、危険になる。西洋魔術では、危険性や副作用の有る術は『邪悪なモノや危険なモノの力を借りたせい』と解釈するが、我々は『位が低く知恵が足りないモノの力を借りたせい』と解釈する」
叔父は厳しい表情になった。
「位の低い守護尊だったとしても、術者の力は、そこそこ以上になる事も多い。しかし、位の低い守護尊の術者ほど、修行の過程は危険なモノになる。力を制御出来る技術や心を身に付けない内に、強力な力に目覚めてしまう可能性が高いからだ。位の低い守護尊の場合は、早い内に力が目覚めるが危険。逆に位の高い守護尊の場合は、大器晩成型で安全、と言った所だ」
「……じゃあ、えっと……私は、どうなの?」
「わからない」
「えっ?」
「お前の守護尊は極めて位の高い存在だ。意見を求めた同業者も同じ結論だった。しかし、お前の力は既に目覚めている」
父は溜息をついた。
「多分だが……お前の才能がズバ抜けているせいだろう。しかし、この『業界』では……才能が有る者ほど修行中に自滅する危険が高い」
出掛けた先は、どうやら、私の実家と「同業」らしかった。
つまり、修験道系の呪術者達だ。
どうやら、その呪術者達は、呪術・魔法・心霊術……何と呼んでも良いが、その手の「術」で、私の「何か」を調べているようだった。
調べ終った後も、叔父……今は父と長く話し込む事も多かった。
「今日で終りだ。慣例の一〇人が揃った」
「慣例って?」
「大昔、誰かが仏教の僧侶になるには、一〇人の立ち会い人の僧侶が必要だった。三師七証と言われている。戒律を授ける者が1人。その補佐が2人。そして、戒律を授ける儀式の証人が7人。それに倣って、ウチの流派でも、誰かが新しく修行を始める際は、自流・他流を問わず、一〇人に意見を求めていた……と言っても戦前まではの話だが……」
「何で、昔はやってたけど、今はやってない事を、私にはやったの?」
「お前は、特殊過ぎる」
車で帰っている途中に、新しい父は、そう説明した。
「修験道系の呪術では、術の得手不得手や、術者としてのタイプを一言で言い表す『記号』として、仏教の神仏の名前を使う。これを『守護尊』と呼ぶ」
その日は、天気予報が外れて、大雨だった。
そんな時間でも無いのに、外はすっかり暗くなり、車のワイパーが雨を払っていた。
「仏教の神仏には序列が有る。単なる神と仏や菩薩の間には、天と地ほどの位の差が有り、同じく神でも、仏や菩薩が仮に下位の神の姿を取っているとされる権神と呼ばれる神と、実神と呼ばれる純然なる神には、やはり格の違いが有る。ただ、我々にとって重要な事は、守護尊の位や格と術者の力の間に、余り関係は無いと云う事だ」
「え……? どう云う事?」
マンガやアニメやゲームなら……その「守護尊」が格上である程、力も強い筈……そう思っていたのに、意外な話になってきた。
「位の高い仏や菩薩は、簡単には願いを叶えてくれない代りに、願いが叶った事による副作用は、ほぼ無い。位の低い神は、安易に願いを叶えてくれるが……神とは言っても仏や菩薩ほどの知恵は無いので、願いが叶った事によるしっぺ返しが起きる場合が有る……そう言われている。今風に言えば、位が高いほど、中々『OK』と言ってくれないが、一度『OK』と言ってくれたなら、アフターサポートもバッチリ、位が低いほど、安易に『OK』をしてくれるが、アフターサポートは期待出来ない、と言った所かな?」
「え……えっと、じゃあ……その?」
「位の低い神の力を借りた術ほど西洋魔術で言う『黒魔術』に近いモノになる。仏や菩薩を守護尊とする術者より、神を守護尊とする術者の使う術こそ副作用が大きいものになり、神の中でも、仏や菩薩の化身とされる神よりも純然たる神の場合が、より、危険になる。西洋魔術では、危険性や副作用の有る術は『邪悪なモノや危険なモノの力を借りたせい』と解釈するが、我々は『位が低く知恵が足りないモノの力を借りたせい』と解釈する」
叔父は厳しい表情になった。
「位の低い守護尊だったとしても、術者の力は、そこそこ以上になる事も多い。しかし、位の低い守護尊の術者ほど、修行の過程は危険なモノになる。力を制御出来る技術や心を身に付けない内に、強力な力に目覚めてしまう可能性が高いからだ。位の低い守護尊の場合は、早い内に力が目覚めるが危険。逆に位の高い守護尊の場合は、大器晩成型で安全、と言った所だ」
「……じゃあ、えっと……私は、どうなの?」
「わからない」
「えっ?」
「お前の守護尊は極めて位の高い存在だ。意見を求めた同業者も同じ結論だった。しかし、お前の力は既に目覚めている」
父は溜息をついた。
「多分だが……お前の才能がズバ抜けているせいだろう。しかし、この『業界』では……才能が有る者ほど修行中に自滅する危険が高い」
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