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序章
「うん」なんて言うんじゃなかった
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今日も、いつものように憂鬱な気分で学校に向かう。
僕の気持ちそのもののような、どんよりと曇った空。
中学の頃、萌香姉さんが、長時間残業と職場のセクハラで鬱になった時、職場の最寄り駅で、どうしても電車から降りられなくなった、と云う話を聞いた時は……そんな事も有るのか? と思ったけど……高校に入って、そう云う事が起きるって事が信じられるようになった。
いや「信じられるようになった」なんて呑気な話じゃない。
僕の身にも起きるようになった。
高校まで、あと三〇〇mぐらい。道には、同じ高校の制服を着た人達が多くなっていく。
そんなに暑くないのに、汗が止まらなくなる。
あと、二〇〇mぐらい。僕がいじめられてるのを見て見ぬフリをしてる奴らの姿がちらほら見える。
だんだん動悸が激しくなる。
逃げ出したい。
今日はサイレンの音だ。学校まで、あと、一〇〇mぐらいになって、時々、幻聴が聞こえる事が有る。多分、心の奥底からの「これ以上、先に進めば、ロクな事にならない」と云う警告。
きっと、突然、死んでしまう時ってのは、自分の死因なんてよく判らないまま死ぬんだろう。
ほんの数秒前まで、僕が死ぬとしたら……萌香姉さんみたいに鬱で自殺だろう、と思っていたのに。
まぁ、高校卒業前に死ぬだろうって予想だけは当たった。当たっても、少しもうれしくない予想だけど。
僕の場合は、学校から背を向けて逃げ出している途中で、突然、視界が白一色になり……。
何も見えない。
何も聞こえない。
感じているのは苦痛だけ。でも、熱いのか痛いのかさえ区別が出来ない。
ともかく、モノ凄い苦痛だ。でも、叫び声さえ上げられない。
「ええっと……田中翔さんですか?」
アニメの女性声優さんみたいな声。どこか、おどおどとしている。
そう言えば、他の音は聞こえないのに、何故、この声は聞こえるんだろうか?
「あなたは死にました」
ラノベみたいに、何かのアクシデントで死んだので、どこかに転生させてくれる、とでも言うのだろうか?
「いえ、アクシデントと言えるかどうか……ちょっと説明が難しいので……」
じゃあ、天国か地獄に直行なのか? 学校に行かずに済むなら、それは、それで構わないけど……。
「ともかく、貴方を必要としている人達が居ます。……ええっと、厳密な意味では『人』じゃ有りませんが……。他の世界での使命を果たせば……天国……ともかく平和な世界で、半永久的に、のんびり暮す資格がもらえます」
判った。じゃあ、その他の世界とやらに連れて行ってくれ。
「はい、じゃあ、最終確認です。ええっと……あの……あたしと契約して異世界に転生してもらえますか?」
うん……。
「な……なんだ、こりゃあっ⁉」
当然、自分の顔は見えない。しかし、手足や胸や腹を見る限り……今の僕の姿は、周囲で同じように混乱状態になってる(少なくとも、そう見える仕草をしている)何百体……ひょっとしたら何千体もの悪魔達と同じ姿をしているんだろう。
「じゃあ、これからオリエンテーションを受けてもらった後に、アァラィアンとカーラケーヤのどちらが向いてるかの性格テストをして、その後に『出荷』先に合わせた肉体改造を受けてもらいます」
小学校5~6年か中学1~2年ぐらいに見える女の子が宙に浮いている。白いドレスに金髪のツインテール。目は右が緑で左が紫のオッドアイ。
声は、僕に異世界転生を持ち掛けた声と同じだ。
よく見ると、遠くの方で、髪型や服装は微妙に違うみたいだけど似たような宙に浮いた女の子が「悪魔」達に何か説明をしている。
「おい、どうなってるっ⁉ こんな事、聞いてねぇぞっ‼」
他の「悪魔」達も大声でヒステリックに喚き散らしていた。
「ええっと……ここは……複数種族……と言うか複数系統の……そうですね『魔族』が永遠の戦いを続けている世界です。……その内でも2つの勢力が3位以下の勢力に大差を付けていて……地球の日本から転生してきた皆さんにも判り易く言えば、う~んと……片方は自分達を『アァラィアン』と呼んでいます。性格は『体育会系』。もう片方は自分達を『カーラケーヤ』と呼んでいて、性格は『ヒャッハー系』と言った所ですね。皆さんは、どちらかの勢力に傭兵として入ってもらいます」
「何だよ。冗談じゃない。ここって地獄なの?」
僕は思わず、そう呟いた。
「あ、田中翔さんが良い事を言われましたね。そうです。ここは……複数系統の『魔族』が、ここに堕ちてくる人間の魂を巡って、ほぼ永遠に戦いを続ける『地獄』ですね」
その時、近くに居た他の「悪魔」が驚いたような顔をした。
いや、本当に驚いてるかは判んないけど、驚いたように見える表情になった。
「おい、お前、田中なのか? 柊第3高校1年B組の……」
「えっ?」
「同じクラスの佐藤だよ……。佐藤環輝だ」
「俺は、木村。木村大和だ」
「じゃあ、ひょっとして、こいつは……」
「う……うん、俺、渡辺。渡辺光宙」
ちょっと待ってよ……何が起きたんだ?
何故、ここに……僕をいじめてた奴らが居るんだ?
でも、これだけは確かだ……。
ここは……本当に地獄だ。
僕の気持ちそのもののような、どんよりと曇った空。
中学の頃、萌香姉さんが、長時間残業と職場のセクハラで鬱になった時、職場の最寄り駅で、どうしても電車から降りられなくなった、と云う話を聞いた時は……そんな事も有るのか? と思ったけど……高校に入って、そう云う事が起きるって事が信じられるようになった。
いや「信じられるようになった」なんて呑気な話じゃない。
僕の身にも起きるようになった。
高校まで、あと三〇〇mぐらい。道には、同じ高校の制服を着た人達が多くなっていく。
そんなに暑くないのに、汗が止まらなくなる。
あと、二〇〇mぐらい。僕がいじめられてるのを見て見ぬフリをしてる奴らの姿がちらほら見える。
だんだん動悸が激しくなる。
逃げ出したい。
今日はサイレンの音だ。学校まで、あと、一〇〇mぐらいになって、時々、幻聴が聞こえる事が有る。多分、心の奥底からの「これ以上、先に進めば、ロクな事にならない」と云う警告。
きっと、突然、死んでしまう時ってのは、自分の死因なんてよく判らないまま死ぬんだろう。
ほんの数秒前まで、僕が死ぬとしたら……萌香姉さんみたいに鬱で自殺だろう、と思っていたのに。
まぁ、高校卒業前に死ぬだろうって予想だけは当たった。当たっても、少しもうれしくない予想だけど。
僕の場合は、学校から背を向けて逃げ出している途中で、突然、視界が白一色になり……。
何も見えない。
何も聞こえない。
感じているのは苦痛だけ。でも、熱いのか痛いのかさえ区別が出来ない。
ともかく、モノ凄い苦痛だ。でも、叫び声さえ上げられない。
「ええっと……田中翔さんですか?」
アニメの女性声優さんみたいな声。どこか、おどおどとしている。
そう言えば、他の音は聞こえないのに、何故、この声は聞こえるんだろうか?
「あなたは死にました」
ラノベみたいに、何かのアクシデントで死んだので、どこかに転生させてくれる、とでも言うのだろうか?
「いえ、アクシデントと言えるかどうか……ちょっと説明が難しいので……」
じゃあ、天国か地獄に直行なのか? 学校に行かずに済むなら、それは、それで構わないけど……。
「ともかく、貴方を必要としている人達が居ます。……ええっと、厳密な意味では『人』じゃ有りませんが……。他の世界での使命を果たせば……天国……ともかく平和な世界で、半永久的に、のんびり暮す資格がもらえます」
判った。じゃあ、その他の世界とやらに連れて行ってくれ。
「はい、じゃあ、最終確認です。ええっと……あの……あたしと契約して異世界に転生してもらえますか?」
うん……。
「な……なんだ、こりゃあっ⁉」
当然、自分の顔は見えない。しかし、手足や胸や腹を見る限り……今の僕の姿は、周囲で同じように混乱状態になってる(少なくとも、そう見える仕草をしている)何百体……ひょっとしたら何千体もの悪魔達と同じ姿をしているんだろう。
「じゃあ、これからオリエンテーションを受けてもらった後に、アァラィアンとカーラケーヤのどちらが向いてるかの性格テストをして、その後に『出荷』先に合わせた肉体改造を受けてもらいます」
小学校5~6年か中学1~2年ぐらいに見える女の子が宙に浮いている。白いドレスに金髪のツインテール。目は右が緑で左が紫のオッドアイ。
声は、僕に異世界転生を持ち掛けた声と同じだ。
よく見ると、遠くの方で、髪型や服装は微妙に違うみたいだけど似たような宙に浮いた女の子が「悪魔」達に何か説明をしている。
「おい、どうなってるっ⁉ こんな事、聞いてねぇぞっ‼」
他の「悪魔」達も大声でヒステリックに喚き散らしていた。
「ええっと……ここは……複数種族……と言うか複数系統の……そうですね『魔族』が永遠の戦いを続けている世界です。……その内でも2つの勢力が3位以下の勢力に大差を付けていて……地球の日本から転生してきた皆さんにも判り易く言えば、う~んと……片方は自分達を『アァラィアン』と呼んでいます。性格は『体育会系』。もう片方は自分達を『カーラケーヤ』と呼んでいて、性格は『ヒャッハー系』と言った所ですね。皆さんは、どちらかの勢力に傭兵として入ってもらいます」
「何だよ。冗談じゃない。ここって地獄なの?」
僕は思わず、そう呟いた。
「あ、田中翔さんが良い事を言われましたね。そうです。ここは……複数系統の『魔族』が、ここに堕ちてくる人間の魂を巡って、ほぼ永遠に戦いを続ける『地獄』ですね」
その時、近くに居た他の「悪魔」が驚いたような顔をした。
いや、本当に驚いてるかは判んないけど、驚いたように見える表情になった。
「おい、お前、田中なのか? 柊第3高校1年B組の……」
「えっ?」
「同じクラスの佐藤だよ……。佐藤環輝だ」
「俺は、木村。木村大和だ」
「じゃあ、ひょっとして、こいつは……」
「う……うん、俺、渡辺。渡辺光宙」
ちょっと待ってよ……何が起きたんだ?
何故、ここに……僕をいじめてた奴らが居るんだ?
でも、これだけは確かだ……。
ここは……本当に地獄だ。
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