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第二章:Fair Game
シルバー・ローニン(5)
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「ややこしい事になったな……」
この2人をTCAとやらに帰らせれば……それは、この2人の命を狙っている者達が居る場所に送り返すのと同義だ。
しかし……男の子の方にとっては……「こちら側」は完全に未知の世界。適応出来るかは、やってみないと判らない。
『あ~、それはともかく、良い報せと悪い報せが2つづつ有る』
「何すか?」
『良い報せ1。ややこしい事を考えるのは後回しに出来そうだ』
「嫌な予感しかしない……」
『悪い報せ1。田代駅近くに停車してた車が動き出した。全部で5台。5分以内にお前たちと接触する見込みだ』
私はそれを聞くと背負っていたリュックサックを降し、隠しポケットから大型ナイフと……ある武器を取り出す。
「あ……あの……銃とか無いの?」
そう聞いたのはスカート姿の少女。
「有るには有るが……おそらくは防弾仕様であろう車を止めるのは……難しいな」
『良い報せ2。強力な応援を3人向かわせた。悪い報せ2。だが、そちらの現在位置まで、後一〇分はかかる』
私は、大型ナイフを抜く。
虹を思わせる金属光沢。しかし……この光沢は「構造色」と呼ばれるもので、金属成分はほぼ0。X線カメラにも映らず、金属探知機でも検出は無理で……やろうと思えば、旅客機の客室への持ち込みも不可能ではない。
そのナイフで、私は近くに有った交通標識の支柱を切り……このナイフは「硬度は低いが柔軟性が有り、折れにくく、曲りにくく、割れにくい」素材の「地」に、「硬度が高いが衝撃に弱く脆い」素材の粒が混っている。
二〇年ほど前に開発された特殊金属素材「不均一非結晶合金」の発想を非金属素材にも応用したものだ。
「あ……あの……そんなので……」
「来たぞ」
そう言って、旭は深く息を吸い込み……。
「オン・アニチ・マリシエイ・ソワカ‼」
太陽の光を思わせる「何か」が5台の車に命中。車の表面には、文字のようにも見える文様が浮かんだが……。
「防御呪文だけは相殺出来たが……中の奴は無事だ」
5台の車の表面に浮かんだ文様は……砕け散った……ように見えた。
「止まってッ‼ えっ⁉」
スカート姿の少女は……車の運転手に対して精神操作能力を使ったが……何か不足の事態が起きたようだ。
「我、身命を愛さず、但、無上道を惜しむ」
私は「火事場の馬鹿力」を引き出す自己暗示キーワードを唱え、投槍器で急拵えの槍を投げ付ける。
槍は……最も前を走っていた車の窓ガラスを貫通。
その車はコントロールを失ない……。道路から近くの田んぼに落ちる。
後続の車も次々と停車。
「そ……それ……何?」
「古代人の武器だ。弓矢が発明される前に、槍をより速くより遠くへ投げるのに使われていた。ところで……何か気になる事でも有ったのか?」
「あ……あの車のドライバーにブレーキを踏ませようとしたんだけど……変なのよ」
「何がだ?」
「効いてるのに効いてない」
「はあ?」
「つまり……その……お前の精神操作が効いた『手応え』みたいなモノは感じたのに……実際にはブレーキを踏まなかった、って事か? って……なんだありゃ?」
田んぼに落ちなかった残り4台から出て来たのは……奇怪な集団だった。
この2人をTCAとやらに帰らせれば……それは、この2人の命を狙っている者達が居る場所に送り返すのと同義だ。
しかし……男の子の方にとっては……「こちら側」は完全に未知の世界。適応出来るかは、やってみないと判らない。
『あ~、それはともかく、良い報せと悪い報せが2つづつ有る』
「何すか?」
『良い報せ1。ややこしい事を考えるのは後回しに出来そうだ』
「嫌な予感しかしない……」
『悪い報せ1。田代駅近くに停車してた車が動き出した。全部で5台。5分以内にお前たちと接触する見込みだ』
私はそれを聞くと背負っていたリュックサックを降し、隠しポケットから大型ナイフと……ある武器を取り出す。
「あ……あの……銃とか無いの?」
そう聞いたのはスカート姿の少女。
「有るには有るが……おそらくは防弾仕様であろう車を止めるのは……難しいな」
『良い報せ2。強力な応援を3人向かわせた。悪い報せ2。だが、そちらの現在位置まで、後一〇分はかかる』
私は、大型ナイフを抜く。
虹を思わせる金属光沢。しかし……この光沢は「構造色」と呼ばれるもので、金属成分はほぼ0。X線カメラにも映らず、金属探知機でも検出は無理で……やろうと思えば、旅客機の客室への持ち込みも不可能ではない。
そのナイフで、私は近くに有った交通標識の支柱を切り……このナイフは「硬度は低いが柔軟性が有り、折れにくく、曲りにくく、割れにくい」素材の「地」に、「硬度が高いが衝撃に弱く脆い」素材の粒が混っている。
二〇年ほど前に開発された特殊金属素材「不均一非結晶合金」の発想を非金属素材にも応用したものだ。
「あ……あの……そんなので……」
「来たぞ」
そう言って、旭は深く息を吸い込み……。
「オン・アニチ・マリシエイ・ソワカ‼」
太陽の光を思わせる「何か」が5台の車に命中。車の表面には、文字のようにも見える文様が浮かんだが……。
「防御呪文だけは相殺出来たが……中の奴は無事だ」
5台の車の表面に浮かんだ文様は……砕け散った……ように見えた。
「止まってッ‼ えっ⁉」
スカート姿の少女は……車の運転手に対して精神操作能力を使ったが……何か不足の事態が起きたようだ。
「我、身命を愛さず、但、無上道を惜しむ」
私は「火事場の馬鹿力」を引き出す自己暗示キーワードを唱え、投槍器で急拵えの槍を投げ付ける。
槍は……最も前を走っていた車の窓ガラスを貫通。
その車はコントロールを失ない……。道路から近くの田んぼに落ちる。
後続の車も次々と停車。
「そ……それ……何?」
「古代人の武器だ。弓矢が発明される前に、槍をより速くより遠くへ投げるのに使われていた。ところで……何か気になる事でも有ったのか?」
「あ……あの車のドライバーにブレーキを踏ませようとしたんだけど……変なのよ」
「何がだ?」
「効いてるのに効いてない」
「はあ?」
「つまり……その……お前の精神操作が効いた『手応え』みたいなモノは感じたのに……実際にはブレーキを踏まなかった、って事か? って……なんだありゃ?」
田んぼに落ちなかった残り4台から出て来たのは……奇怪な集団だった。
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