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第三章:Do the right thing

シルバー・ローニン(9)

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「何が起きてるんだ?」
「い……一応、あの変なピカピカ頭が呼び出した悪霊どもは『逆隠形結界』に閉じ込められてる」
「その何とか結界って、どれ位持つの?」
「あと、『悪霊ども』って、何故、複数形なのだ?」
 裕子……TCAから亡命した姉弟の姉の方と私は逃げながらあさひに質問。
「どれ位持つかは判らん……あと……ピカピカ頭が呼び出した悪霊の数だけど……判らん……」
「何で、どっちも判んないのよッ?」
「悪霊の個体数は……凄く多い」
「だから、何がどうなってる?」
「あのピカピカ頭……ここら辺の半径数百mを……一般人が立入ると即死レベルの心霊災害地帯に変える級の『魔法』を使いやがったんだ」
「って、ここ、繁華街のド真ん中でしょッ?」
 もし、奴が、この姉弟を狙っているのなら……一番、狂っているが、一番、確実な方法だ……。
 どんな強力な「特異能力者」でも……下手をすれば「特異能力者の中の更に例外級の化物」である「神の力を持つ者」であっても……確実に苦戦し……かなりの確率で殺されるような相手が居る。
 そして、そんな真似が出来るのは……何の特異能力も持たぬ人間であるかも知れない。
 化物を殺せる化物……それは「特定の1人か2人の人間を殺す為なら、何万人が巻き込まれて死んでも知った事か」……そう云う思考が出来る人間の屑だ。
 どうやら……この姉弟を狙っている者は……外道だが後先を考えない馬鹿だ……。
 そして、権威主義的・中央集権的な政治体制の地域では、往々にして「外道だが後先を考えない馬鹿」が権力を握る。
 私達が博多駅の外に出た頃には……あさひが呼んだレスキュー隊が到着して一般人の避難誘導をしていた。
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