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調理師スキル持ちのネトウヨですが、戦時中にタイムスリップしたけど何とか助かりそうです。
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「で……本当にお前が『未来の日本』から来た日本人なら……この戦争で日本がどう勝つかを言えんのだ?」
長勇と云う変な名前の日本軍の参謀は、俺を、そう問い詰めた。
畏れ多くも……昭和天皇陛下を人相を悪くしたような風貌の、言葉に九州弁訛りが有る男だった。
俺の時代で言うなら……アラフォーぐらい。
「えっと……こ……こ……こ……子供の頃から……あ……あ……あ……頭が悪くて……その……が……学校で習ったけど、覚えてなくて……えへへへ……」
「確かに……独活の大木のような体付きで……この調子なら……本当かも知れんの……」
俺は、単に恐怖と緊張でキョドってただけだった。それが却って良かったようだ。
……このオッサンは、俺を……憐み半分、見ちゃいけないモノを見ちまった半分の……(作者註:知的障害者を意味する差別的ネットスラングにつき自粛)でも見るような目で見ていた。
スマホは奪われた。もちろん、手元に有っても使えない。
サイフも同じ。もちろん、中の金も電車用のICカードも役に立たない。
「なら……歴代の天皇陛下の名前を言ってみろ」
「へっ?」
「言えんのか? 日本人なら誰でも言えて当り前じゃぞ」
ま……まずい……。敵軍のスパイだと思われてる……。
だが、オッサンは溜息を付いた……。
「本当に……(作者註:知的障害者を意味する差別用語につき自粛)のようだな」
原チャリで通勤している最中に事故に遭った俺は……何故か、昔の中国の南京の近くにタイムスリップしていた。
……それも、第二次大戦の南京戦……あれ? さっき「今年は昭和十二年だ」と聞いたけど……第二次大戦は、まだ、始まってなかったような……。
駄目だ……スマホでネット検索が出来ないと……マジで俺は……(作者註:一部自粛の理由書くの、そろそろ面倒臭くなってきた)かも知れない……。
あ、待て……良い言葉が有った……大東亜戦争だ。
俺は、大東亜戦争の南京戦の最中の中国の南京にタイムスリップしており……よりにもよって、日本軍の兵隊さん達から「便衣兵」と見做されて殺されかけた寸前……兵隊さん達は……何か俺の服装や様子が変な事に気付いてくれた。
「お前……図体がデカか割に……力が無かの……。何の役に立つんじゃ?」
俺は……輸送人夫に回された。しかし……この時代の平均的な日本人よりも……体はデカいが体力も持久力も無い。
「えっと……料理を少し……」
「はぁ……そうか? 板前か? なら……ためしに、今晩の晩飯を作ってみろ」
輸送人夫のリーダーは、そう言った。
Fランの大学を出てから就職が出来ず……十年近く飲食店でバイトをしてる内に、気付いたら調理師免許を取っていたのだ。
あっと言う間に、俺は、長って云う変な名字の参謀の料理人になっていた。
食材なんかは俺の時代と色々違う。
俺の時代の同じ食材より品質が良いのも有れば、悪いのも有るし……俺の時代に当り前だった食材でも、この時代では手に入らないモノも有る。
だが、段々と勝手が判ってきた。
それに、ちょっとしたコツや基本……それこそ「野菜を大体同じ大きさに切る」みたいな事は身に付いている。
この時代の一流の料理人にかなう訳は無いが……それでも「かなり料理が巧いヤツ」扱いされるようになった。
しかし、長のオッサンは……付き合えば良い人だが……冷静に考えたら酷いヤツだった。
南京戦の後に、自慢気に……「便衣兵が混ってるかも知れないので、逃げてる民間人を後から機関銃で撃たせた」とか、とんでもない事を吹聴し……。
え……まさか……「南京大虐殺」なんて大嘘が広まったのは……このオッサンのせいなのか?
しかも、私生活は、この時代の言い方を使えば「飲む・打つ・買う」。
でも……喩えるなら「気のいい親分」ではあるんだよなぁ……。
日本は戦争に負けるが……それを、この時代の人間に言う訳にはいかない。
俺は、長のオッサンの異動に伴なって……朝鮮半島に移り……。
ひょっとしたら……この世界は……アニメなんかに良く有る「別の時間軸」ってヤツで……俺の知ってる歴史と違う歴史を辿っているのかも……。
だが……ネットが無い以上、俺が元居た「時間軸」と同じ歴史なのか、違う歴史なのか……確かめる事は出来ない。
そして、俺はズルズルと状況に流され続けた。不安と、ほんの少しの希望を心に抱えたまま……。
やがて、日本はアメリカに宣戦布告し……俺は長のオッサンに付いて東南アジアに移り……。
日本は……負けてるようだ……。
マズい……このままじゃ戦争に巻き込まれて死ぬ可能性が……。
でも、俺の知ってる歴史と違う歴史である可能性が……ほんの少しだけ……。
昭和十九年十月……希望が見えた。
どうやら……「台湾沖航空戦」と言われる戦いで、日本が大勝利をしたらしい。
俺の知ってる歴史だと……聞いた事が無い「日本軍の勝利」だ……。
元の時代で、ネトウヨ扱いされていた俺だが……「大本営発表」が信用出来ない事は知っている。
けど……大敗北を大勝利だと言ったりする筈は無いだろう。
まぁ……話半分だとしても、米軍は戦艦や空母を何隻か失なった筈だ……。
そして翌年。俺の知ってる歴史だと、終戦の年。
「俺は、沖縄に転勤になった。お前も付いて来るか?」
長のオッサンは、俺にそう言った。
「え……ええ……もちろん」
俺の知ってる沖縄戦は……とんでもなく悲惨な事になっていた……と思う。
だが、この歴史では……米軍の戦力は……俺の知ってる歴史より低下してる筈だ……。
少なくとも、空母と戦艦、それぞれ何隻かを失なってるだろう……。
絶望的なのは確かだ……。でも……俺の知ってる歴史ほどじゃない……。
長勇と云う変な名前の日本軍の参謀は、俺を、そう問い詰めた。
畏れ多くも……昭和天皇陛下を人相を悪くしたような風貌の、言葉に九州弁訛りが有る男だった。
俺の時代で言うなら……アラフォーぐらい。
「えっと……こ……こ……こ……子供の頃から……あ……あ……あ……頭が悪くて……その……が……学校で習ったけど、覚えてなくて……えへへへ……」
「確かに……独活の大木のような体付きで……この調子なら……本当かも知れんの……」
俺は、単に恐怖と緊張でキョドってただけだった。それが却って良かったようだ。
……このオッサンは、俺を……憐み半分、見ちゃいけないモノを見ちまった半分の……(作者註:知的障害者を意味する差別的ネットスラングにつき自粛)でも見るような目で見ていた。
スマホは奪われた。もちろん、手元に有っても使えない。
サイフも同じ。もちろん、中の金も電車用のICカードも役に立たない。
「なら……歴代の天皇陛下の名前を言ってみろ」
「へっ?」
「言えんのか? 日本人なら誰でも言えて当り前じゃぞ」
ま……まずい……。敵軍のスパイだと思われてる……。
だが、オッサンは溜息を付いた……。
「本当に……(作者註:知的障害者を意味する差別用語につき自粛)のようだな」
原チャリで通勤している最中に事故に遭った俺は……何故か、昔の中国の南京の近くにタイムスリップしていた。
……それも、第二次大戦の南京戦……あれ? さっき「今年は昭和十二年だ」と聞いたけど……第二次大戦は、まだ、始まってなかったような……。
駄目だ……スマホでネット検索が出来ないと……マジで俺は……(作者註:一部自粛の理由書くの、そろそろ面倒臭くなってきた)かも知れない……。
あ、待て……良い言葉が有った……大東亜戦争だ。
俺は、大東亜戦争の南京戦の最中の中国の南京にタイムスリップしており……よりにもよって、日本軍の兵隊さん達から「便衣兵」と見做されて殺されかけた寸前……兵隊さん達は……何か俺の服装や様子が変な事に気付いてくれた。
「お前……図体がデカか割に……力が無かの……。何の役に立つんじゃ?」
俺は……輸送人夫に回された。しかし……この時代の平均的な日本人よりも……体はデカいが体力も持久力も無い。
「えっと……料理を少し……」
「はぁ……そうか? 板前か? なら……ためしに、今晩の晩飯を作ってみろ」
輸送人夫のリーダーは、そう言った。
Fランの大学を出てから就職が出来ず……十年近く飲食店でバイトをしてる内に、気付いたら調理師免許を取っていたのだ。
あっと言う間に、俺は、長って云う変な名字の参謀の料理人になっていた。
食材なんかは俺の時代と色々違う。
俺の時代の同じ食材より品質が良いのも有れば、悪いのも有るし……俺の時代に当り前だった食材でも、この時代では手に入らないモノも有る。
だが、段々と勝手が判ってきた。
それに、ちょっとしたコツや基本……それこそ「野菜を大体同じ大きさに切る」みたいな事は身に付いている。
この時代の一流の料理人にかなう訳は無いが……それでも「かなり料理が巧いヤツ」扱いされるようになった。
しかし、長のオッサンは……付き合えば良い人だが……冷静に考えたら酷いヤツだった。
南京戦の後に、自慢気に……「便衣兵が混ってるかも知れないので、逃げてる民間人を後から機関銃で撃たせた」とか、とんでもない事を吹聴し……。
え……まさか……「南京大虐殺」なんて大嘘が広まったのは……このオッサンのせいなのか?
しかも、私生活は、この時代の言い方を使えば「飲む・打つ・買う」。
でも……喩えるなら「気のいい親分」ではあるんだよなぁ……。
日本は戦争に負けるが……それを、この時代の人間に言う訳にはいかない。
俺は、長のオッサンの異動に伴なって……朝鮮半島に移り……。
ひょっとしたら……この世界は……アニメなんかに良く有る「別の時間軸」ってヤツで……俺の知ってる歴史と違う歴史を辿っているのかも……。
だが……ネットが無い以上、俺が元居た「時間軸」と同じ歴史なのか、違う歴史なのか……確かめる事は出来ない。
そして、俺はズルズルと状況に流され続けた。不安と、ほんの少しの希望を心に抱えたまま……。
やがて、日本はアメリカに宣戦布告し……俺は長のオッサンに付いて東南アジアに移り……。
日本は……負けてるようだ……。
マズい……このままじゃ戦争に巻き込まれて死ぬ可能性が……。
でも、俺の知ってる歴史と違う歴史である可能性が……ほんの少しだけ……。
昭和十九年十月……希望が見えた。
どうやら……「台湾沖航空戦」と言われる戦いで、日本が大勝利をしたらしい。
俺の知ってる歴史だと……聞いた事が無い「日本軍の勝利」だ……。
元の時代で、ネトウヨ扱いされていた俺だが……「大本営発表」が信用出来ない事は知っている。
けど……大敗北を大勝利だと言ったりする筈は無いだろう。
まぁ……話半分だとしても、米軍は戦艦や空母を何隻か失なった筈だ……。
そして翌年。俺の知ってる歴史だと、終戦の年。
「俺は、沖縄に転勤になった。お前も付いて来るか?」
長のオッサンは、俺にそう言った。
「え……ええ……もちろん」
俺の知ってる沖縄戦は……とんでもなく悲惨な事になっていた……と思う。
だが、この歴史では……米軍の戦力は……俺の知ってる歴史より低下してる筈だ……。
少なくとも、空母と戦艦、それぞれ何隻かを失なってるだろう……。
絶望的なのは確かだ……。でも……俺の知ってる歴史ほどじゃない……。
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