悪夢のエロオスガキわからせ性教育

蓮實長治

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悪夢のエロオスガキわからせ性教育

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 十数年前に学校の性教育の内容が大きく変ったらしい、と云うニュースを聞いた時、俺は既にエロ同人作家になっていたが、大して気にも留めなかった……だが……。

「何で、ここ何年か、お客さんがおっさんばかりなんすかね? 若くても三十後半ぐらいですよね」
 俺は、同人誌即売会で隣のブースの人からそう聞かれた。
「さぁ……? でも言われてみれば……」
「あ……どうも……」
 その時、客としてやって来たのは……顔見知りのロリもの専門の同業者の杜冬彦だった。
「な……なんか、元気無さそうですね」
 俺は、やつれまくった様子の杜冬彦にそう言った。
「いや……俺の同人誌を委託してるサイトの大半で……俺のアカウントがBANされちゃって……もう、俺の同人誌は、事実上、ネットでは売れなくなりました……」
「えっ?」
「買ったヤツから『グロ描写をやるんなら、ちゃんとR18Gにしろ。俺は普通のグロ無しのエロを読みたいんだ』みたいなクレームが相次いじゃって……」
「はぁっ? でも……杜さんの作品って、たしか、ほとんどが……」
「ええ、昔懐かしの『メスガキわからせおじさん』モノに、そのクレームが来たんですよ」
「PTAのBBAからのクレームですか、それ?」
「いや、それが……20代男性がほとんどみたいで……」

「すいません……あの……この表紙のイラスト、もう少し、こう……その……何と言うか……収録されてるマンガの内容が判るようなモノに変えてもらえませんか?」
 数ヶ月後、単行本を出す事になった俺は、編集者にそう言われた。
「えっと……どう云う意味ですか?」
「この単行本の収録作品って、レイプものが半分以上ですよね?」
「それが……?」
「最近、レイプもの中心の内容の単行本で、表紙のイラストの感じが……何って言うか……その……グロって言うか、禍々しいって言うか……そんな感じのモノじゃないと、若い人がSNSで『表紙詐欺』とか叩く事が良く有るんですよ……」
「え? 表紙詐欺って?……今の絵だってエロだと判る内容ですよね?」
「いや……その……最近の20代の人は……レイプものは『エロ』じゃなくて『グロ』だと認識してるみたいなんですよ」

「多分、原因はこれです……」
 編集者に見せられたそれは……十数年前の学校の性教育の内容の大幅見直しの後に使われるようになったマンガ形式の男子向けの副読本だった。
「うわああああ……何ですか、これっ?」
「今の若い人の中には……ロリコンものとかレイプものを見ると……それを学校で読まされた時のトラウマが蘇える人が、かなり居るんですよ」
 とんでもない内容だった……。いわゆる昔懐かしの「メスガキわからせおじさん」もの。ただし……「1人の女の子の人生が『メスガキわからせおじさん』のせいで無茶苦茶になるのを、その女の子に恋心を抱いていた男の子の視点から描く」と云う、大人でもこんなモノを読まされたら数日勃たなくなりそうな内容だった。
「子供の時に、こんなモノ読ませたら……人生歪みますよ!! 文科省は何考えてるんですか?」
「あの……ニュースで聞いてませんか?」
「何を?」
「困った事に……今、少しづつですが、この性教育による効果が出てるらしいんですよ……」
「ええ、そりゃ、こんなモノを読まされた世代が大人になったら、世の中が絶対におかしくなりますよ!!」
「そここそが困った点なんです……」
「えっ?」
「だから、ニュース見てないんですか? ここ数年、性犯罪をやるのは中年以上で二十代の性犯罪者は激減してて……あと、ほんのわずかですが、年々、少子化に改善の兆しが見られてるらしいんですよ……」
 嘘だ……嘘だと信じたい……。
 どう考えても逆の事が起きないとおかしいだろう!!
 でも……万が一……俺達にとって「当り前」だと意識する事さえ無かったほどに「当り前」だった事が単なる絵空事だったとしたら……そして、世の中が全体として良くなった結果、もし、俺達が不利益を被るのなら……一体全体、俺達はどうすればいいんだ?
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