お前らが「いいね」したせいで俺は……

蓮實長治

文字の大きさ
1 / 1

お前らが「いいね」したせいで俺は……

しおりを挟む
 何だ? どうなってるんだ?
 クレジットカードの明細を見ると、いつもの月の何倍もの請求額だった。
 ある問題を起こして、大学の正採用の教員から非常勤講師に格下げになり、収入が減った途端にこれだ。
 一体、俺は、何にこんな金を使ったのだ?
 えっ?
 明細を良く見ると、SNSで相互フォローしている人達が開催してくれた「鴨葱こと内山雄二さんを励ます会」の日に開催場所だった飲み屋でとんでもない額を使っていた。

 俺はSNS上で「鴨葱」と名乗っていた。
 そして、数ヶ月前までは、当時の政権を擁護するような投稿を多くやっていた。
 その際に、筆がすべって……いや、PCのキーボードやスマホの画面からの入力だが……あの頃の政権を批判していたある女を揶揄するような事を書いてしまった。
 その投稿には、沢山の「いいね」が付き……「いいね」中毒になった俺は……。
 しかも、俺はタイミングを見誤った。
 当時の政権は、ある失敗が理由で、ほんの1~2週間の内に「支持率史上最高」から「支持率一〇%」に急落したのだ。
 俺は、当時の政権の支持率低下は一時的な事かマスゴミの虚報だと思っていた……。
 しかし、その考えは間違いだった。首相は、あっと云う間に変り……そして、前政権が隠していた不祥事が次々と明るみに出て……。
 しかも、しかも、更に迂闊な事に、俺がセクハラまがいの事まで書いて揶揄してた女は……分野は違うが、俺より遥かに有名な研究者だったのだ。
 俺の勤務先の大学には、あの女が雇った弁護士から、内容証明付の郵便が送られてくる事になった。

「鴨葱さんは悪くないっすよ。最近の風潮がおかしいだけっすよ。俺達は鴨葱さんを応援してますから」
 SNSで相互フォローしてくれてた人達は「鴨葱こと内山雄二さんを励ます会」と称する飲み会を開催し……しかし、飲み会の代金は酔っ払ってた俺に払わせたらしい。
 クソ、お前らが散々「いいね」したせいで、俺はより過激な事を書くようになったんだぞ。
 それなのに、何て真似を……。
 そう思いながら、SNSを見ると、フォロワー数が記憶より2~3桁少なくなっていた。

 おかしい。
 IDやハンドルを覚えている奴を検索してもSNS上に、そんなアカウントは無かった……。
 数少ないヒットしたアカウントは……俺の知らない誰かだった。
 メールやLINEで連絡を取ろうとしても……メールはエラーで返って来るし、奴らのLINEのアカウントも消えている。
 奴らが「いいね」してくれた俺の投稿は……「いいね」数が、これまた記憶より1~2桁少なくなっている。
 SNS上に有るのは俺への罵倒ばかりで……擁護してくれる投稿は……稀に有ったが、明らかに頭がおかしい奴がやったモノばかりだ。

 一体、何が起きてるんだ?
 最後の手掛かりは……。
 俺は「鴨葱こと内山雄二さんを励ます会」が行なわれた飲み屋に電話をかけ……。
「あの……先月の○日に、そちらを利用した者ですが……」
 だが、その飲み屋の店員だか店長だかの一言で……俺の意識は……。
「ああ、覚えてますよ。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...