俺達で変身ヒーロー特撮を復活させる……筈が……アレ?

蓮實長治

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第1章:堕落への旅路(ヴィランズ・ジャーニー)

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「そろそろ中年になろうって、いい大人が、何、こんな所で、熱くなってんですか?」
 その時、助け船が現われた。
 ……ただし……。
「おっと、先に言っとくべきだったな。すいません、遅れました」
「い……いや……いいけど……」
「でも、こんな所で、オタ話も何なんで、カラオケ屋にでも行きます?」
「金かかるだろ」
「ですけどねえ……まあ、いいか……」
 こいつは、古賀と同じく、俺が大学の頃に入っていた特撮研究会の後輩の小柳だ。
 まぁ……ただ、特撮研究会一の問題児で……。
「で、本物の『ヒーロー』に接触出来たはいいんですけど、何か成果は有ったんですか?」
「い……いや……ためしに、自分達のヒーロー活動の様子を撮影してみないかと言われてさ……」
「で、この3人で、やるとして……誰がカメラマンで、誰が音響で、誰が照明なんですか? そもそも、この人数じゃカメラ複数台で撮影はキツくないですか?」
「いや、ちょっと待て、カメラマンはともかく、照明や音響まで現場に連れてくって、それ……やらせじゃ……。第一、照明とか音響の機材が無いよ」
「あの、先輩……」
「何だよ?」
「じゃあ、手ぶれが有ったり、綺麗じゃない映像になるのも覚悟の上で、小型カメラで、照明なしの自然光撮影で、本物のヒーロー活動を撮影する……と?」
「そうだよッ‼ それしか手が無いだろッ‼ 俺達の夢の第一歩だッ‼ 何事も、まずは行動に移して……」
「先輩が観たかったヒーローものって、そ~ゆ~モノなんですか?」
 ……。
 …………。
 ……………………。
 はい、来た。
 こいつは、早い話が「たまたま特撮研究会に入っただけの面倒臭いサブカル系映画マニア」だ。
 東京があんな事になる前は「映画秘宝」と「キネマ旬報」を両方とも毎号買ってたよ~なたぐいの……。
 学生時代の夏休みに東京や京都まで行って、ガチでバイトとしてプロの映画撮影に参加したレベルの(いや、その夏休み後は、映画撮影のバイトが忙し過ぎたせいで、ノイローゼだか鬱だかになって大学を休学したが)。
 でも、だからこそ、俺達が観たい特撮ヒーローものを俺達の手で作るには、こいつが必要になる。
「あの……そんなヒーローものなら……先輩が嫌いな映画監督達が、山程撮ってますよ……。ドキュメンタリー映画出身とか社会派とか果ては元々は芸術映画出身だった奴とかが、そんな連中が撮ったヒーローもの」
「う……」
「そう言うのが嫌いだから、自分で、自分が観たいヒーローものを撮ろうとしてんですよね?」
「え……えっと……あ……あのさ……お前……」
「『批判するなら代案だせ』とか、脳味噌やられたSNS中毒みて~な事を言い出すつもりじゃないっすよね?」
「あ……ああ、悪いかッ⁉ そうだよ、批判するなら……」
「先輩、先輩が接触した『ヒーロー』って、普通の奴らじゃないでしょ。早い話が『ヒーロー』達の中でも……何かイカれてるんじゃないかって奴ら……」
「へっ? な……何で、判った?」
「やっぱり……」
「イカれてるって訳じゃないけど、その、自分達で正統派じゃないって言ってた。えっと……他のヒーローのやり方に異議を唱えてるみたいな……」
「じゃ、そいつらが、俺達に接触した理由は簡単ですよ」
「へっ?」
「俺達に自分らのプロパガンダ映像を撮って欲しいんですよ。そうじゃなかったら、取材OKなんてする筈が無い」
 お……おい……待て……その……えっと……。
「え……えっと、俺達は、単に何も考えずに頭空っぽにして楽しめるヒーローものを作りたくて……」
「今の時代、無理でしょ。ヒーローが現実に居るのに……社会とも政治とも関係ないヒーローものなんて、作れる訳ないでしょ」
 そして……無慈悲な駄目押しの一言……。
「むしろ、そういう何か変な所が有るヒーローチームのプロパガンダに徹した方が……少なくとも映像の見た目だけは、先輩が観たがってる、昔のヒーロー特撮みて~なモノが出来上がるんじゃないですか?」
「う……うん……そうかもな……」
「でも、覚悟だけはしといた方がいいっすよ」
「おいおい、自分から言い出して……何を……」
「積極的に広報活動やろうとしてるヒーローなんて、どう考えても普通じゃない。万が一、身元がバレたら、どんなすげ~能力が有っても、命が危ない。寝てる時に自宅にロケット弾とか撃ち込まれたら、どんなヒーローだって大概は死ぬ。そして……優秀で有名なヒーローほど、身元がバレた場合、誰かに狙われる危険が有る」
「え……えっと……」
「先輩の選択肢は2つに1つです。後味の悪い結末が待ってる可能性を覚悟の上で、そいつらの為にプロパガンダを作って、その報酬を、先輩が作りたい作品の製作費に回すか。さもなくば、その、何か裏が有りそうなヒーローとは縁を切って……」
「待って、先輩が接触した連中が、ヒーローとしてはマズい連中だとして、縁を切れるの?」
 小柳が、そこまで言った時、急に横で話を聞きながら考え込んでた古賀が割り込みを入れる。
「えっ?」
「だって……先輩は向こうの身元知らないのに……」
「大丈夫、偽名を使った」
「あ……あの……」
「何?」
「先輩が接触したヒーロー達が、実はマズい連中だった場合……その……既に先輩の身元に関する情報を把握つかんでる可能性は……えっと……」
 や……やめて……助けて……。
 俺、実は、かなり危ない橋を渡ってた訳か?
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