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歴史「修正」主義者
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二〇一一年、三月十一日、日本の本州北東部太平洋沖。
奴らが秘密裏に海上に設置していた施設に突入。
約一時間後、俺達は、歴史を変えようとしている犯罪者達をようやく制圧した。
「本部、爆雷の起動を止めました。これで正しい歴史の通り、東日本大震災は無事に発生します」
『了解した。だが、敵はプランBに移ったようだ。原発事故を防ごうとしている連中が居る。絶対に阻止しろ』
どうやら、奴らは、日本人の子孫らしい。
奴らの気持ちも判らないではない。
自分達の存在が消える事も覚悟の上で、失なわれた祖国を救おうとしている。
しかし、正しい歴史を守る為には、未曾有の大地震が「あの日」に起き……そして、それが遠因となって、二十年後に、日本人は国を失なった流浪の民と化してもらわないと困る。
たかが一つの国を救う為に、歴史が変り、何億・何十億の人間の存在が消えかねない事態を容認する訳には行かない。
どんな悲惨な歴史であろうと、その歴史を「良い」方向に変える事で、とばっちりを受ける者は確実に存在するのだ。
『隊長。変です。こいつらのIDチップは、我々の個人識別機と互換性が有りません』
部下が、そう報告する。
我々の時代には、ほぼ全ての人間に、個人を識別するIDチップが埋め込まれている。
だが、IDチップは有るのに、我々の個人識別機でIDを読み取れないと云う事は……。
「そいつは、我々の時代より未来から来た者なのか?」
確かに、何かがおかしかった。奴らが地震を止める為に使おうとしていた「N2爆雷」なるモノは、いつ誰が発明して、どんな動作原理なのか、全く不明だったのだ。
『お前たちのリーダーと話をさせろ』
捕虜のリーダー格が、そう言った。
「聞くだけは聞こう」
『この施設のセンサの計測結果を良く見ろ』
「何が言いたい?」
『この歴史では、我々の歴史とも、お前たちの歴史とも違う日時に地震が起きてしまうようだ』
「何を言っている? まるで昔のSFのように複数の歴史が有るような言い方だな。しかし、そんな事は……」
『違う、我々の歴史における研究によれば、歴史には不確定性が有る。それも人間にはどうする事も出来ない自然現象に関して。過去に行った場合、行った先の「過去」が自分達の歴史では「その日は快晴だった」と記録されていても大雨になっている可能性が有るのだ』
「馬鹿馬鹿しい。なら、我々やお前たちがやっている事に何の意味が有る? 歴史が唯一無二でない上に、人間にはどうする事も出来ない自然現象の一部として歴史の改変や時間軸の分岐が起きてしまうのなら、歴史を変えたり、それを阻止する事に何の意味……うわぁっ⁉」
現地時間で一四時四六分。
深夜に起きる筈だった地震が、何故か、この時に起きた……。ただし、記録されているものよりは、小さい規模で……。
「ま……まずい……このままでは、歴史が変る……。日本人が助かってしまう‼」
『俺達にとっては、最善ではないにしろ、俺達の歴史よりはマシな事態に成りそうだがね。あと、言った筈だ。歴史には不確定性が有る……つまり歴史の流れは1つとは限らない』
「ふざけるなっ‼ そんな馬鹿な話が有ってたまるかっ‼」
『なら、何故、俺達は歴史が変ったのに存在してるんだ?』
少なくともタイムパトロール隊は……設立されて、たった1年、そして両手の指で数えられるほどの任務しかこなしていないのに、大きな方針転換を余儀なくされたようだ。
それとも……まさか……我々の上層部は「歴史は1つではない」事を知った上で、何らかの理由で、その事を隠蔽していたのか?
奴らが秘密裏に海上に設置していた施設に突入。
約一時間後、俺達は、歴史を変えようとしている犯罪者達をようやく制圧した。
「本部、爆雷の起動を止めました。これで正しい歴史の通り、東日本大震災は無事に発生します」
『了解した。だが、敵はプランBに移ったようだ。原発事故を防ごうとしている連中が居る。絶対に阻止しろ』
どうやら、奴らは、日本人の子孫らしい。
奴らの気持ちも判らないではない。
自分達の存在が消える事も覚悟の上で、失なわれた祖国を救おうとしている。
しかし、正しい歴史を守る為には、未曾有の大地震が「あの日」に起き……そして、それが遠因となって、二十年後に、日本人は国を失なった流浪の民と化してもらわないと困る。
たかが一つの国を救う為に、歴史が変り、何億・何十億の人間の存在が消えかねない事態を容認する訳には行かない。
どんな悲惨な歴史であろうと、その歴史を「良い」方向に変える事で、とばっちりを受ける者は確実に存在するのだ。
『隊長。変です。こいつらのIDチップは、我々の個人識別機と互換性が有りません』
部下が、そう報告する。
我々の時代には、ほぼ全ての人間に、個人を識別するIDチップが埋め込まれている。
だが、IDチップは有るのに、我々の個人識別機でIDを読み取れないと云う事は……。
「そいつは、我々の時代より未来から来た者なのか?」
確かに、何かがおかしかった。奴らが地震を止める為に使おうとしていた「N2爆雷」なるモノは、いつ誰が発明して、どんな動作原理なのか、全く不明だったのだ。
『お前たちのリーダーと話をさせろ』
捕虜のリーダー格が、そう言った。
「聞くだけは聞こう」
『この施設のセンサの計測結果を良く見ろ』
「何が言いたい?」
『この歴史では、我々の歴史とも、お前たちの歴史とも違う日時に地震が起きてしまうようだ』
「何を言っている? まるで昔のSFのように複数の歴史が有るような言い方だな。しかし、そんな事は……」
『違う、我々の歴史における研究によれば、歴史には不確定性が有る。それも人間にはどうする事も出来ない自然現象に関して。過去に行った場合、行った先の「過去」が自分達の歴史では「その日は快晴だった」と記録されていても大雨になっている可能性が有るのだ』
「馬鹿馬鹿しい。なら、我々やお前たちがやっている事に何の意味が有る? 歴史が唯一無二でない上に、人間にはどうする事も出来ない自然現象の一部として歴史の改変や時間軸の分岐が起きてしまうのなら、歴史を変えたり、それを阻止する事に何の意味……うわぁっ⁉」
現地時間で一四時四六分。
深夜に起きる筈だった地震が、何故か、この時に起きた……。ただし、記録されているものよりは、小さい規模で……。
「ま……まずい……このままでは、歴史が変る……。日本人が助かってしまう‼」
『俺達にとっては、最善ではないにしろ、俺達の歴史よりはマシな事態に成りそうだがね。あと、言った筈だ。歴史には不確定性が有る……つまり歴史の流れは1つとは限らない』
「ふざけるなっ‼ そんな馬鹿な話が有ってたまるかっ‼」
『なら、何故、俺達は歴史が変ったのに存在してるんだ?』
少なくともタイムパトロール隊は……設立されて、たった1年、そして両手の指で数えられるほどの任務しかこなしていないのに、大きな方針転換を余儀なくされたようだ。
それとも……まさか……我々の上層部は「歴史は1つではない」事を知った上で、何らかの理由で、その事を隠蔽していたのか?
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