悪夢‼ マンガ家出身の政治家による日本のオタク向けコンテンツの破壊!!

蓮實長治

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悪夢‼ マンガ家出身の政治家による日本のオタク向けコンテンツの破壊!!

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 私は激怒した。
 必ず、かの邪智暴虐な作者によるヒット作を除かねばならぬと決意した。
 私はアメコミ映画などロクに観ていない。
 韓国映画も観ていない。
 しかし、観る価値が無いのは知っている。
 日本のアニメやマンガに比べて劣っているのが明らかだからだ。
 しかし……あいつは……。

「本年度のコンテンツ産業支援金による支援対象作品は『護国軍鬼ニルリティ』に決定しました」
 数日前、文化庁から独立した「コンテンツ産業庁」の長官となった私は記者会見でそう発表した。
 売れてないコンテンツに国が投資しても意味は無い。
 売れているモノに更に投資してこそ、日本のコンテンツ産業の未来が有る。
 それが「コンテンツ産業支援金」の基本理念だ。
 ピラミッドを高くするには裾野が必要などと云うのは……売れるコンテンツを生み出せないタワケどもの寝言だ。
 売れるものさえ有ればよく、それ以外は容赦なく淘汰すべきだ。
 そして、海外で爆売れしている……ただし検閲が有る中国などは除く……この作品に国からの資金投入を決定したのだ。

「えっ? どう云う事ですか?」
 これまで姿を表に出す事を嫌っていた「護国軍鬼ニルリティ」の作者は、身元に関する情報を公開しない事……例えば公開する写真には顔を写さない……を条件に私との対談に応じてくれた。
 しかし、「貴方の作品のお蔭で、日本のアニメ・マンガ・ラノベが他国のコンテンツに比べて優れたモノだと証明出来ました」と言った時に返ってきた答は意外なモノだった。
「あ……あの……私の作品は……日本のオタク向けコンテンツの歴史の中では……何て言いますか……ああ、そうですね、アウトサイダー・アートみたいなモノだと思ってもらった方が……」
 年齢・性別・外見、全てが予想とかけ離れていたそいつは、とんでもない答を返した。
「いえ、ですが、日本に暮している日本人である以上、日本のコンテンツの影響を受けている筈ですが……」
「そ……それが……あの……私……『ON*PIE*CE』の『*わらの一味』の名前を全員言えないんですよ……。そもそも『ON*PIE*CE』を観ても読んでもいないので……」
「はあ?」
「『鬼*の刃』も『呪**戦』もロクに知りません。すいません」
「ですが、『小*家にな*う』でデビューされた以上は……」
「え……えっと……他の人が書いたラノベも読んでないんです」
「い……いや……ちょ……ちょっと待って下さい。じゃあ、貴方の作品は……何から影響を受けたんですか?」
「あ……あの……アメコミ映画と韓国映画が好きなんで、その影響が大きいと思います」
「い……いや……でも……」
「あ……あの……ですから……私の作品の悪役達って、韓国の犯罪ものの映画に良く居るタイプのキャラばっかりですよね?」
 そ……そうなのか? いや……待て……おい、韓国の映画のパクリが、今や、日本を代表するオタク向けコンテンツと化そうとしてるのか?
「え……えっと……その……」
「ですので……私の作品を日本のオタク向けコンテンツの代表みたいに扱うのは……日本のオタク向けコンテンツに逆に悪い影響を与えると思います。あ……あの……私……M*Uの『エ*ーナ*ズ』は大好きですが、ヒーロー映画が、全部、クロ*・*ャオが撮ったみたいな作品になったら、その……アメリカの映画の照明係に仕事がなくなると思うんですよ。ええ、私の作品を国が支援するのは、そう云う事だと思うんです、はい」
 よりにもよって、こいつが喩えに出したのは……「過剰なポリコレ描写が満載の駄作」とされているアメコミ映画だった。
 もちろん、観る価値も無い駄作である以上、私の貴重な時間を、そんな作品で浪費するつもりは無かったので、一体、こいつが、その喩えで何を言いたいか判らなかったが……。
「えっと……その……こちらからお呼びして何ですが……何が言いたいのですか……」
「は……はぁ……その……出版社さんやコミカライズやアニメ化をやられてる方に迷惑がかからない形で……その……コンテンツ産業支援金を辞退出来る方法は無いのかな?……って、その……そう云う事を伺いたいんですが……」
「はあ?」
「あ……あの……私の作品が万が一、日本のオタク文化のスタンダードになったら……他のオタク向けコンテンツに関わってる方に迷惑がかかりそうな気がして……その……」
 ふざけるなッ‼
 もう発表したのに取り消せるかッ‼

 自宅に帰る車の中でスマホでSNSを眺めていた。
 どうしたものか……。
 本人も辞退を望んでいる……私も無かった事にしたい。
 しかし……「コンテンツ産業支援金」が出来たばかりの時にそんな真似をしたら……。
 その時、SNSに妙な広告が表示された。
『悪魔との取引で願いを叶えましょう。1回目だけの「おためし」なら魂は渡さなくても大丈夫です』

 ♪ピンポ~ン。
 夜の一〇時過ぎなのに、玄関のベルが鳴った。
「誰だ、こんな遅くに?」
 用心の為に、傘立に入れていた護身用の金属バットを抜く。
「あの……さっき呼び出していただいた悪魔です」
 えっ?

「えっと……お茶とコーヒーのどっちがいいかね?」
「いえ、お構いなく」
 その悪魔は角と翼と尻尾こそ有ったが……それ以外は「別れて5分後には特徴を忘れてそう」なのが特徴と言うべき……若いサラリーマンに見えた。
「で……条件ですが……1回だけなら願いを叶えても魂は頂戴しません。死後にお客様の魂がどうなるかは……お客様の自己責任になります」
「ああ、そうかい。私は自己責任って言葉は大好きだよ」
「ただし、私が1回でもお客様の願いを叶えた時点で、お客様は私以外の悪魔同業者と契約する資格を失ないます。無いとは思いますが……万が一、私が願いを叶えた後に、お客様が私以外の悪魔と契約をすれば……人間界と我々の世界の両方を巻き込んだ大戦争が起きかねませんので、御注意下さい」
「は……はあ、そうかね……」
「2回目の願いを叶えた時点で、私はお客様の死後、お客様の魂を自分のモノにする権利を得ますが……『1回目の願いを取り消せ』も2回目の願いに含まれます」
「わかった……」
「あと、私どもは……人間界の常識がイマイチ理解出来ていませんので、お客様の願いを叶えた結果、お客様にとって不利益を得る状況を生み出すとしても……事前に警告はいたしかねます」
「ああ……それも了解した」
「そして、私どもは現実改変クラスの事象を引き起す事も可能ですが、可能な限りお客様には、その現実改変による悪影響を受けないように心掛けます。例えば、お客様以外の人間は現実改変が起きた事を認識出来ませんが、お客様は現実改変以前の世界の記憶を保有する事が可能です」
「そうかね……。悪魔にしては良心的だな」
「では……この条件で異存が無ければ……願いを言って下さい」

 そして、アメコミ映画と韓国映画に影響を受けた日本のマンガ・アニメ・ラノベは……この世界から一掃された。
 もちろん、コンテンツ産業支援金の第1回目の支援対象は……「護国軍鬼ニルリティ」では無かった。
 そんな作品は最初から、この世に存在しなくなったのだから……。

 平穏無事にその週は終り……月曜日になった。
 私は、執務室で、部下に買ってこさせた少*ジャ*プをめくり……あれ?
「おい、『僕のヒー*ーア*デ*ア』は、今週は休載なのか?」
 その時、部下は怪訝そうな顔をした。
「あ……あの……何ですか?『僕のヒー*ーア*デ*ア』って?」
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