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第四章:非法制裁 ― Death Sentence ―

(ⅱ)

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「あんたッ‼ 何してんだッ⁉」
 トラックから出た途端に聞き覚えの有る声。
 こっちに走って来ているのは……。
 いや、バイク用のヘルメットをしてるから、誰か判んない……。
 と思った次の瞬間、そいつは、ヘルメットを脱ぎ捨て。
 今村?
 と思った更に次の瞬間、今村が着ていた服が、大昔のマンガ「北斗の拳」みたいに弾け散り……。
「何だ、ありゃあ?」
「えっと……あの変身は……魔法的なモノじゃないです」
 メガネっ娘が、ビミョ~に的外れな助言。
 ああ、「早太郎」ってコードネーム。そして、望月の「そのコードネームだと能力がバレるだろ」と云う指摘。
 今村の体は「人間態」の時より一回り大きくなり、そして、白い狼男に変貌していた。
 そうか……「早太郎」って……何かの昔話の……人喰い狒狒を倒した白い犬……。
「うわああああッ」
 俺は、手にしていた武器の「斧」の方を今村の体に叩き込み……。
「えっ?」
 俺の足が地面から浮き上がる。
「おい、これ、魔法の武器だろッ⁉ 何で効かないッ⁉」
「す……すまん……そいつの……物理的な……防御力が……もし仮に……超チート級だったら……普通にこうなる」
「あの……ここまで来ると……超チート級なんて……生易しいモノじゃ……」
 斧は……今村の「毛皮」にあっさり弾き返された。
 あ……そう言や、こいつ「ライフル弾は無理だが、拳銃弾やナイフなら防げる」とか言ってたな……。
 って、斬り裂け無かったとは言え、こんな重いモノを叩き付けられて、ほぼノーダメージなら、ライフル弾が命中しても、こいつを何とか出来るのかッ⁉ こいつ、絶対、自分の能力を過小評価してるだろッ‼
 今村は、俺の「斧」の柄を持って、俺を持ち上げ……。
「こんちくしょうが……」
 その一言は……あの時のライダースーツの男と同じだ……。俺にではなく、自分自身に言い聞かせているようだった。
 まさか、あのチビのメスガキが言ってた「火事場の馬鹿力を引き出す自己暗示」なのか? おい、待て、ただでさえ無茶苦茶なヤツが、更に……。
 そして……今村の目の色が変った……。黒っぽい茶色から、金色に……。
「待ちなよッ‼ 冷静になってッ‼」
 だが、次の瞬間、レナの声が響く。
「う……うわぁッ‼」
 混乱したメガネっ娘の声。その時……。あれが現われた……。
 俺の親父を殺した「使い魔」。
 黄緑色の光に包まれた……雄ライオンの頭、人間の女の胴体、足が有るべき場所には蛇の尻尾……そして天使の翼。全長およそ6m。
 異形の「天使」は、手にした弓矢でレナを狙い……。
「妙・法・蓮・華・経・序・品・第・一」
 若い男の声が響く。
「えっ?」
 空中に突如出現した輝く格子模様は、異形の「天使」が放った矢を防いだ。
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