終電のがしたんで、一晩泊めてよぉ。何もしないからさぁ。

蓮實長治

文字の大きさ
1 / 1

終電のがしたんで、一晩泊めてよぉ。何もしないからさぁ。

しおりを挟む
「あのさぁ、君、今、住んでんの、会社が寮として借りてるマンションだったよね?」
『そうですけど……課長、どうしたんですか、こんな夜中に?』
「取引先の人と飲んでる内に、終電のがしちゃってさぁ。ちょうど、君んの近くだったんで……」
『はぁ?』
「『はぁ』って、何が『はぁ』だよ?」
『まさか、私んに泊めろ、なんて言いませんよね?』
「いや、泊めて欲しいんだけど」
『冗談でしょ』
「冗談じゃないよ。泊めてよ」
『やめて下さい。もうシャワー浴びて、これから寝るとこなんです』
「そりゃ丁度良かった」
『今のは聞かなかった事にしますが、それ以上、変な事言ったら、総務にセクハラで訴えますよ』
「ちょ……ちょっと待ってよ。お願い、泊めて。行くとこないの」
『いい齢して何ですか……』
「お願い、泊めて。何もしない、約束する」
『そんな約束、当てに出来る訳ないでしょ』
「いや、本当に何もしないで、朝になったら出て行くからさぁ……」
 そして、三十分以上に渡る交渉の後、ウチの課で一番の美人は、俺を泊めてくれる事に同意した。
 「何もしない」?
 そんな訳有るか。
 一人暮らしの女が、男を部屋に入れて2人っきりになった以上、同意したも同じだ。

 訳が判らない事件だった。
 一流企業の管理職が都内で下半身剥き出しで、男性器を切り取られた……もしくは噛み千切られた死体になって発見された。
 直接の死因は出血多量だが……死体ほとけさん表情かおは……何と言えばいいか……。
 そして、被害者ガイシャは死亡推定時刻の四十分ほど前、に電話をかけており……その「存在しない電話番号」は被害者ガイシャの携帯電話に若い女性の部下の名前で登録されていた。
 今の所、警視庁記者クラブの記者には報道管制を敷いているが……もう既にSNSで噂になっているらしい。
 困ったもんだ。
 上司に出す報告書を書いてる内に……気付いたら夜中の一二時近く……。
「あのさぁ、お前、今、住んでんの、ウチの署の近くのアパートだったよな?」
『そうですけど……先輩、どうしたんですか、こんな夜中に?』
 俺は、メスの後輩の中でも一番の美人に電話をかけた。
「例の事件の報告書作ってる内に遅くなってさ。泊めてくれない?」
『何、言ってんですか。切りますよ』
「い……いや、ちょっと待てよ」
 交渉は三十分以上続いたが、前々から狙っていたメスは俺を泊めてくれる事に同意した。
『じゃ、最後に確認しますけど、本当に何もせずに、朝になったら帰ってくれるんですね?』
「ああ、本当だ。男に二言は無い。約束する」
 残念ながら、男に二言は無いが、一物は有る。
 我ながら巧いね、これ。これからの一戦の決め台詞にしよう。
 一人暮らしの女が、男を部屋に入れて2人っきりになった以上、同意したも同じだ。
 今日は徹夜か……でも、明日の朝には俺の一物で、あの女を「わからせ完了」してる筈……。
「何もせずに帰るだと? 誰がお前のような人間のクズを何もせずに無事に帰してやるものか」
 えっ?
 何だ、今の声は?
 気のせいかな?
 疲れてんのかな?……まぁ、いいや。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

【完結】私は死んだ。だからわたしは笑うことにした。

彩華(あやはな)
恋愛
最後に見たのは恋人の手をとる婚約者の姿。私はそれを見ながら階段から落ちた。 目を覚ましたわたしは変わった。見舞いにも来ない両親にー。婚約者にもー。わたしは私の為に彼らをやり込める。わたしは・・・私の為に、笑う。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...