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異世界推理:何故、冤罪事件は起きたのか?

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「え~、では原告からの訴えの内容を整理する」
 裁判官は、そう切り出した。
「被告人は、『黒いペガサス』の第8年の閏4月の新月の夜に、この町で起きた殺人事件の現場に居合せた。その後、容疑者として逮捕された原告の顔について『この男のような顔でした』と証言した結果、原告はあやうく殺人事件の犯人として有罪判決を受ける所だった。原告は被告のこの証言が悪意または重過失に基くものと判断し、被告に対して損害賠償を求める。間違い無いかね?」
「はい、その通りです」
「では、被告から言う事は有るかね?」
「似た顔に見えたんだから仕方ない。原告にはすまないと思っているが、悪意でも重過失でもない。せいぜい、軽過失だ」
「ふざけるな。お前らの種族には暗視能力が有る筈だ。夜でも犯人の顔が、ちゃんと見えてた筈だ」
「そう言われても、似たような顔に見えたんだから仕方ない。私としては、私に過失が有ったとしても、せいぜい、軽過失に過ぎないと主張させていただく」
「何を言ってる? お前のせいで、俺は、あやうく死刑になる所だったんだぞ」
「その責任は、私の証言を採用した官憲に有ると考える。私は『犯人は、こいつだった』ではなく『犯人は、こいつに似た顔だった』と証言したと記録されてる筈だ」
「いい加減にしろ、俺と犯人は、体格ぐらいしか似た所が無いぞ。髪の色だって違う。見間違える訳がない」
「困った事に、我々の種族が暗視能力を使っている時は、色の判別が困難になるのだ」
「それでも、俺と犯人の顔は似てないぞ」
「いや、普通に見間違えるぞ」
「苦しい言い逃れもいい加減にしろ」
「逆に考えろ。貴方達人間だって、我々ドワーフの個体の区別をちゃんと出来ない奴らの方が多数派だろう?」
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