異世界転生の際にチート能力「論破」をもらいましたが、そのせいで……

蓮實長治

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異世界転生の際にチート能力「論破」をもらいましたが、そのせいで……

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「あなたは賢い思想家だよ。周到な理論家だよ。馬鹿め!」
「たった一つのことがあなたを護り、僕らの間に平和を保っていた。僕らの意見が違うということが」
G・K・チェスタトン「博士の意見が一致する時」より

「なるほど、判った。転生者よ、君の言う通りだ。うざい事を言う少数派や貧乏人の存在を許容すれば、私が権力を失なう事につながり、そいつらは世の中を不安定にする危険分子と化してしまう云う訳か」
 この町の領主は、腰に差した剣の柄に手をかけながら、そう言った。
「そうです。ですので、あの『不作なんで年貢をまけろ』と言ってるデモ隊は……」
「その前に訊きたい事が有る。単なる事実確認だ。正直に答えて欲しい……」

 始まりは、学校の階段から落ちて首の骨を折って死んだ事だった。
「死んだ状況からして、異世界転生だな」
 あの世らしい場所に行った僕の前に居たのは、エロ触手の塊にしか見えない自称「神様」。
「じゃあ、異世界転生なら……チート能力なんか……」
「阿呆か。いや、ちょっと待て……」
 そう言って、自称「神様」は……。
「うぎゃあああ……」
 僕の頭にエロ触手をブッ刺した。
「なるほど……お前は、お前の世界の『論破の帝王』とやらに憧れていたのか。なら、お前にチート能力『完全論破』を授けてやろう。それなら、お前の罪を償うに相応しい惨めで理不尽な罰が与えられるだろう」
「へっ? 僕、何かやりました?」
「他の人間をいじめて、階段から突き落そうとして、間違って自分が落ちて死んだだろう」
「あ……いや、違います。いじめに加わらないと、僕もいじめられるんで……」
「本当に阿呆だな、お前は。いじめも大概な罪だが、お前は、もっと大きな罪を犯している。お前がやったいじめさえも、最も大きい罪から派生した罪に過ぎない」
「へっ?」
「お前の罪は、。それは……」

 そして、異世界転生した僕が出現したのは……ナーロッパ的な町の貴族の邸宅らしい建物の前に有る広場だった。
「領主様、不作で子供に食わせる飯も無いんです。今年は年貢を減らして下さいまし」
「う……う……うむ……し……仕方あるまい……」
 そこでは……汚ない格好をした痩せ細ったデモ隊と、護衛を引き連れたナーロッパ的な世界の貴族そのまんまの格好の中年男が何かの交渉をやっていた。
 その時、僕は怒った。
 この邪智暴虐な連中をギャフンと言わせなければならない……そう思った。
 この小汚いデモ隊は……1つ前の世界で僕が憧れていた「論破の帝王」に完全論破されながらも意見を変えない阿呆どもと同じ種類の連中だ。
 ムカツく。ムカツく。ムカツく。ムカツく。ムカツく。ムカツく。
 こここここ……こんな弱者利権を平然と貪る連中が居るから……世の中が悪くなるんだ……。
 ここここここここここ……このクズどもの要求を1つでも呑めば……次には、こいつらははははは生活保護の不正受給をやらかすに違いない。
 そそそそそそそそんなに子供に飯を食わせたきゃ、働きゃいいだろ。つ~か、貧乏人のクセに、何、子供作ってんだよ、この女とヤる事しか頭に無いウェ~イどもがッ‼
「待って下さい‼」
 僕は「領主様」と呼ばれていた貴族に向かって、そう叫んだ。

 そして、数分後、僕は領主を完全論破し、その意見を変えさせる事に成功した。
「単なる事実確認だ。正直に答えて欲しい」
「何でしょうか?」
「君は、今、いくら金を持っている?」
「ちょ……ちょっと待って下さい。この世界に異世界転生したばかりなので……お金なんて……」
「そして、君は『転生者』である以上、この世界では最少数派だな」
 そう言って、領主は剣を抜き……。
「『うざい事を言う少数派や貧乏人は危険分子』……それが、君の意見だたっな……。しかし、不思議な事も有るモノだ。私は君の言ってる事がうざくて仕方なかったのに、何故、君の意見に同意してしまったのだろうな?」

 領主の剣で喉笛を貫かれた時に、思い出したのは……あのエロ触手の神様が言ったセリフだった。
「お前の罪は、古代より様々な悲劇の原因になりながら、何故か人間が罪と見做してこなかった究極の大罪だ。それは……だ」
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