かくして新たなる地質時代が爆誕せり

蓮實長治

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かくして新たなる地質時代が爆誕せり

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「なるほど、そのなんとかと云うレアメタルが無いと君の云う新素材は作れない訳か……」
「ですが、そのレアメタルの問題さえ解決出来れば、加工し易く丈夫な新素材を安価に作る事が出来るようになります。レアメタルは、あくまで触媒ですので、それほどの量が必要な訳では……」
 学者からの説明を聞いた、その時代の政治指導者は、研究予算を認可した。

 問題のレアメタルは地表には、ほとんど存在しなかった。
 だが、その時代には、既に宇宙開発が進んでおり、レアメタルを含んだ小惑星を地球まで持って来る事も不可能では無かった。
 あるいは、マントル層に含まれるもの無理矢理採取すると云う乱暴な方法を使う者達も居た。
 やがて、新素材が実用化されてから1~2世代後には、新素材が建物・乗り物・日用品にも使われるようになり、文明は新素材無しには成り立たなくなっていった。

「この惨状の原因が判ったそうだな……」
 地球は、わずか数世代で死の惑星と化しつつあった。
 木々は枯れ、農作物は育たなくなり、海面には海洋動物の死骸が浮かび、野生動物や食用家畜の大量死が相次いだ。
「数世代前に実用化されたあの素材が粉状になったモノは、大半の動物にとって有害である事が判明しました」
 その時代の政府の科学顧問は、最高指導者にそう説明した。
「馬鹿な。何故、実用化された時に判らなかったのだ?」
「はい、あの素材そのものは無害ですが……粉状になったものは様々な有害化学物質を吸着して、それらの有害物質の分解を阻害する効果が有る事が判明しました」
「では……どれだけの量の『粉』が自然界に流出したのだ?」
「現時点では見当も付きません……。丈夫な素材でも、使っている内に摩耗し……その一部が自然界を汚染していきます。おそらく、『粉』が分解して無害化するまで数万年はかかるでしょう……」
 そして、次の世代か、更に次の世代には、文明を維持するのが困難になるまで、彼等の個体数は激減していた。

「見て、お姉ちゃん……すごぉ~く、でっかい流れ星だよ……」
「でも、綺麗だけど、何か、嫌な予感がする……」
 の数少ない生き残りの内の2人である、その姉妹は、夜空を眺めながら、そう話していた。
 その流星の正体は、彼女達の種族を滅ぼした人工素材……いや竜工素材と云うべきか……を作る際の触媒となるレアメタルを含む小惑星の欠片だった。
 その小惑星は、彼女達の種族が、まだ、高い文明を誇っていた時代に、地球の近傍まで運ばれていたのだが……数百年に及ぶ摂動が積み重なった結果、軌道を離れ、ついにバラバラになった小惑星の最も大きい欠片が大気圏に突入しつつあった。

 竜の種族が文明を得てから滅ぶまで、たった数千年だった。
 そして、数千万年後、その惑星に誕生した次なる知的生命体種族の学者たちは、竜の種族が滅んだ時代の地層に大量のが含まれている事に頭を悩ます事になった。
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