悪夢!! 論破成功なら業界ごと消滅、論破失敗ならウチの会社は永遠に奴隷

蓮實長治

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悪夢!! 論破成功なら業界ごと消滅、論破失敗ならウチの会社は永遠に奴隷

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「な……なんですか、この放送法違反により免許取り上げって……」
「前政権の指示に従ったのが放送法違反だとよ」
 永遠に続くかと思われていた前政権は、案外、あっさり潰れ、かつての野党第一党が政権与党になった直後、その話がウチのTV局にやってきた。
 新与党の執行部は、こう言っていた。
『我が党の先代執行部のような御花畑な理想主義は捨てて、これからは現実主義政党となります。何せ、国民の皆様は理想主義ではなく現実主義的な政党が与党になる事を求めていますので』
 つまりは、「前与党のようなズンドコ政党が与党になる可能性が残っているなら、政権を取れても失敗と見做す」と考えてる政党ではなく「前与党と同じような好き勝手が出来ないなら、政権を取れても失敗と見做す」と云う政党が新しい与党第一党になった、と言う事だ。
 前与党のアンチにとっては、前与党時代と何も変らない社会のままで、前与党の支持者にとっては、パラメーターが少し変っただけで社会システムは同じままだから逆に洒落じゃ済まない事態になったと言える。
 政権交代前と大して変らない社会だ。酷い目に遭う連中も、若干の違いしか無い。「でもしか」でしか前与党を支持して無かった連中にとっては、これまでと同じ酷い世界が続く。
 ただし、前与党の熱烈な支持者に関しては、客観的には「ちょっと酷くなった」だが、連中の主観ではいささか話が違うだろう。
 この連中にとっては、自分達が前与党のアンチにやってきた真似が自分達に返ってきた挙句、「今の社会が嫌なら、自分を変えるか目をつぶって何も見るな」と言われる事になるが……まぁ、これから見せしめの為にロクデモない目に遭うのは、国民の1割未満だ。
 今まで酷い目に遭ってきた大多数の人達は酷い目に遭い続け、いい目を見てきた極少数の連中は見せしめに酷い目に遭い、肉屋を支持してきた豚どもは新しい肉屋によって屠殺される。まぁ、肉屋を支持してきた豚どもは、肉屋が変らなくても、いずれ屠殺されてただろうから、食肉として出荷される日が少々早まっただけだ。
 誠に平穏な旧時代と大して変らない「社会を変えようとする奴こそ悪だ」と思ってる皆様にとっては願ったり叶ったりの新時代だ。
 ただし、ロクデモない目に遭う連中の中に、我々、TV局関係者が含まれてるのは、洒落にならないが……。

 放送法第3条。
 そこには、こう書かれている。
『放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない』
 新政権は、よりによってTV局が、この条文に違反したので、放送免許を取り上げる、と言ってきたのだ。
「い……いや、でも、確かに、どこの局も前政権の『第4条2項に違反したTV局は放送免許を取り上げるぞ』って脅しに屈服しましたけど……」
 放送法第4条は、こうなっている。
『放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない』
『二 政治的に公平であること』
「その前政権の命令が違法だって、新政権は言ってんだよ」
「当時の政府の言った事に従っただけですよ」
「新政権の言い分は……第3条の規定が有る以上、政治的に公平でない番組を放送した事によって、放送免許を取り上げる事が可能なら……『政治的に公平でない放送とは、どんな条件を満すものか?』『どう云う手続で、誰の責任で、政治的に公平でない放送をしたTV局の免許を取り上げるのか?』を規定した個別法が有る筈だろう、と言ってるんだ」
 あ……。
 無い……。
 たしかに、前政権は、そんな個別法を制定せずに、放送免許を取り上げる、と脅してきたのだ。
「えっ……と……じゃあ、TV局側が……前政権の『政治的に公平でない番組を放送したTV局は放送免許を取り上げるぞ』と云う主張は違法な命令だった、と証明出来たなら……?」
「違法な命令に従って放送の自由を売り渡した容疑でTV局は潰される」
「じゃあ、逆に、前政権の命令は合法だと証明出来たなら……?」
「新政権の気に入らない番組を流したが最後、放送免許を取り上げるぞ、と云う脅しは続く」
「どっちに転んでも駄目じゃないですか?」
「だから……とっくに詰んでたんだよ……。前政権の命令に従った時点でな」
 誠に平穏な旧時代と大して変らない「社会を変えようとする奴こそ悪だ」と思ってる皆様にとっては願ったり叶ったりの新時代だ。
 それが良い事かは別として。
 それがロクデモない事だった場合に、報道する事が可能なのかも別として。
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