マスゴミの戦争責任

蓮實長治

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マスゴミの戦争責任

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「て……てめぇ……何で、家族を見捨てて自分だけ国外に逃げやがった? 親類の半分ぐらいが敵軍の爆撃で死んだんだぞ」
 敗戦から20年以上経って再会した兄貴は、まず、そう怒鳴り出した。
「いや、だって、あの戦争でウチの国が負けるのは判ってたのに、あの頃の兄貴や親父は、私がそんな事を言っても聞く耳なんて持たなかったでしょ」
「何を言ってる? あの頃は『もし隣国と戦争になれば、主要国はみんなウチの国に味方してくれるだろう』って言われてただろう? 全国民はそれを信じて開戦を支持したんだぞ」
「言われてた、って誰が言ってたの?」
「政府もマスコミも……」
「いや、マスコミは政府発表は嘘ばっかりだって言ってたよな?」
「はあ? マスコミってどこだよ?」
「××新聞とか」
「あそこ、そんな報道してなかっただろ?」
「いや、やってたよ」
「そんな馬鹿な。あの戦争の前には、SNSでは『昔は反政府的だった××新聞もすっかり愛国的になったな』とか言われてただろ」
「ああ、『経営者が変れば、報道内容もここまで変るのか』なんてね」
「何が言いたい?」
「いや、主要メディアは報道してた筈だよ」
「だから、どこも言ってなかっただろ。俺達は、政府だけじゃなくて、マスゴミにも騙され……」
「報道されてたよ。図書館にでも行って、当時の新聞を調べろ」
「おい、あの頃には既に、紙の新聞そのものがコンビニなんかにも置かれなくなってただろ」
「うん」
「なら、ネット記事に無ければ、報道した事には……」
「ネット記事にも載ってたよ」
「そんな記事、見た事ねえぞ」
「いや、載ってたよ……有料購読してない奴はタイトルすら見れない特別記事に……」
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