世界を護る者達:毒戰寒流

蓮實長治

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第一章:傷城

アータヴァカ/関口 陽(ひなた) (4)

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 既に、道路の反対側の建物との間に煙幕が張られていた。
 しかし、相棒は窓から半身を乗り出したまま……。
「気を付けろ……来るぞ……」
「えっ?」
 そして、煙の中から何かが……。
 相棒は、飛んできた「それ」に向けて簡易焼夷弾ドラゴン・ブレスを発射。
「うわあああッ‼」
 あたしは、火達磨になってるのに、平気な表情ツラして、この部屋に飛び込んできた、そいつを殴り付け……。
 あっさり弾かれる……が……同時に相棒が、そいつに背後から組付き、両腕で裸絞、両足で胴締め。
「また、お前らか……」
 豪快な方法でやって来たのは銀色の巨体の狼男。
「また、こいつかよ……」
 九州3大暴力団の1つ安徳ホールディングスの暴力沙汰専門の「一次子会社」である安徳セキュリティの幹部の久米銀河……獣化能力者の中では、日本どころか東アジア最強候補の1人だ。
 心霊系の能力が有ったり、魔法の修行をしてる訳じゃないが……単純な気の量は、ベテラン級の「魔法使い」数人分。つまり、あたし程度の「魔法使い」の魔法攻撃は、事実上、通じない。ストロー級のボクサーが、百㎏のバーベルを片手で持ち上げられるような筋肉達磨の化物を殴り付けるよ~なモノだ。
 そして、こいつの毛皮は物理的な特性を自由に変えられるらしい。相手が銃を使ってる場合は、弾丸を防ぐのに適したものに、刃物を使ってる場合は斬撃や刺突を防ぐのに適したものに……。
 加えて、とんでもない再生能力持ち。内臓や骨に達してない傷なら、瞬時に治る。
 最後の止めが、これからのチート能力を一〇〇%活用出来る知性・勘・戦闘経験。つまり、この狼男には、一度使った手は二度と通じない。
 以前は炎による攻撃は多少は効いてたが……既に消え始めている。
「そいつを急いて下まで運べッ‼」
「判った」
 相棒がレンジャー隊に指示を出す。
 あたしは、右手でナイフを抜き、狼男を殴る殴る刺す殴る斬る斬る刺す殴る……でも防がれる弾かれる避けられる防がれる弾かれる。
 端的に言えば、身体能力だけじゃなくて、腕前も狼男の方が上だ。マトモに命中あたる訳が無い。
 相棒の裸絞&胴締めも、どうやら、毛皮を圧迫攻撃に最適化してるようで……あまり効いてない。
 相棒が片手の指を目に差し込もうとするが……裸絞を解いてしまった、その瞬間、狼男は全身を大きく動かし……。
 相棒を壁に叩き付け、自分の体で押し潰そうとする……。
 が……相棒の強化装甲服パーワドスーツの背面から、ド派手に余剰エネルギーが放出され……。
 壁にヒビが走り……。
『早く下に行ってッ‼ 警官隊が……』
 その時、後方支援チームから緊急連絡が入った。
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