1 / 1
俺さえも「奴ら」だったのか?
しおりを挟む
「最早、これまでです。無念ではありますが……私は……新しい大統領に政権を譲り渡す決意をいたしました。ですが……次の大統領選挙では……」
足下が崩れるような錯覚を覚えた。
信じてきた大統領は……ついに「奴ら」に屈服したのだ。
「支持者の皆さんは、今後、非暴力的な方法で……」
待て……何を言ってるんだ……?
「くれぐれも、暴力的手段に訴えかける事は慎んで下さい。私は、何人であれ、如何なる主張であれ、暴力的な方法で自分の主張を通そうとする者を非難いたします」
おい……大統領……あんたを信じて戦い続けてきた奴らを切り捨てる気か?
フザけるな。
俺は演説を続ける大統領に向ってライフルをブッ放ち……え……待て……。
大統領の胸に腹に空いた穴からは、血は流れず、代りに……火花のようなモノが……。
そうだ……安い映画やグラフィック・ノベルや日本のMangaで良く有る……。
「うわああああ……っ‼」
クソ、気付いているべきだった。
既に、俺達の中に「奴ら」が入り込んでいたのだ。大統領さえも「奴ら」に……何って、こった。本物の大統領は既に殺されて……。
俺は更に銃を撃とうとした。
そんな事をしても、何になるのか?
判ってはいるが、まずはこの場を逃げなければ……。
誰かが俺の左腕を掴んだ。
人間では有り得ない力で……俺の左腕は引き千切られ……。
何故だ……? 何故……痛くない……?
引き千切らた腕の付け根からは、金属製の骨と……どうやら筋肉の代りをするらしい無数のケーブルが見えた。
奇妙な虹のような光沢を持つ金属の腕と……何本ものピンクに近い赤と……暗い青の二種類のケーブルが……。
そ……そんな……俺も……「奴ら」だったのか?
だとしたら……俺は……まさか……最初から……自分でも気付かぬ間に……俺は……大統領の支持者達を自滅に向わせるように仕向けていたのか?
俺達の仲間は……俺の言った事を信じてしまったせいで……。
「それで、前大統領を暗殺した男が『9β』だったのは確実なのですか?」
通称「9β」……。前大統領支持派が過激化する原因となった陰謀論……その陰謀論を最初に広めた人物がインターネット上で名乗っていた名前だった。
「はい……彼が所持していたスマートフォンと自宅のPCの通信記録からすると、ほぼ確実です」
前大統領が、支持者向けの退任宣言を行なっている最中に、かつての選挙スタッフの1人に銃殺されてから1週間。
事件を担当する警察機構の長官は、新しい大統領に、そう説明していた。
「彼は……自分がロボットのようなモノだと云う妄想を抱いていて……マトモな取調べは不可能です。もっとも当然ですが、CTとMRIで検査した結果、彼は人間でした……。彼の体内に有る人工物は……虫歯治療用の詰め物ぐらいです」
「なるほど……」
「一応、脳波に異常が見られ……左腕に何の異常も無いにも関わらず左腕を失なったと思い込んでおり……更に、自分が陰謀論を撒き散らしたのは、自分を『作った』何者かが『真の愛国者』を自滅に導く為で……『本物の自分』は既に何者かにより殺されている、と信じていますが……まぁ、当然ながら、一つ残らず既知の精神疾患で説明可能な症状ばかりです」
「取調べもロクに出来ない訳ですか……。時に……彼の左手に何かが握られていたとの事ですが……」
「はい……。未知の電子機器と未知の合金です」
「電子機器? ケーブルのようなモノだと云う報告も有りましたが……」
「ええ……ピンクに近い赤と……暗い青の2種類のケーブル状の電子機器を握っていました。詳細は……まだ……調査中ですが……共に通電により伸び縮みする性質が有り……青い方は電気が通ると延び、赤い方は電気が通ると縮む性質を持っているようです。あと……未知の合金ですが……人間の手の小指の骨にそっくりな形状だった、との事です」
足下が崩れるような錯覚を覚えた。
信じてきた大統領は……ついに「奴ら」に屈服したのだ。
「支持者の皆さんは、今後、非暴力的な方法で……」
待て……何を言ってるんだ……?
「くれぐれも、暴力的手段に訴えかける事は慎んで下さい。私は、何人であれ、如何なる主張であれ、暴力的な方法で自分の主張を通そうとする者を非難いたします」
おい……大統領……あんたを信じて戦い続けてきた奴らを切り捨てる気か?
フザけるな。
俺は演説を続ける大統領に向ってライフルをブッ放ち……え……待て……。
大統領の胸に腹に空いた穴からは、血は流れず、代りに……火花のようなモノが……。
そうだ……安い映画やグラフィック・ノベルや日本のMangaで良く有る……。
「うわああああ……っ‼」
クソ、気付いているべきだった。
既に、俺達の中に「奴ら」が入り込んでいたのだ。大統領さえも「奴ら」に……何って、こった。本物の大統領は既に殺されて……。
俺は更に銃を撃とうとした。
そんな事をしても、何になるのか?
判ってはいるが、まずはこの場を逃げなければ……。
誰かが俺の左腕を掴んだ。
人間では有り得ない力で……俺の左腕は引き千切られ……。
何故だ……? 何故……痛くない……?
引き千切らた腕の付け根からは、金属製の骨と……どうやら筋肉の代りをするらしい無数のケーブルが見えた。
奇妙な虹のような光沢を持つ金属の腕と……何本ものピンクに近い赤と……暗い青の二種類のケーブルが……。
そ……そんな……俺も……「奴ら」だったのか?
だとしたら……俺は……まさか……最初から……自分でも気付かぬ間に……俺は……大統領の支持者達を自滅に向わせるように仕向けていたのか?
俺達の仲間は……俺の言った事を信じてしまったせいで……。
「それで、前大統領を暗殺した男が『9β』だったのは確実なのですか?」
通称「9β」……。前大統領支持派が過激化する原因となった陰謀論……その陰謀論を最初に広めた人物がインターネット上で名乗っていた名前だった。
「はい……彼が所持していたスマートフォンと自宅のPCの通信記録からすると、ほぼ確実です」
前大統領が、支持者向けの退任宣言を行なっている最中に、かつての選挙スタッフの1人に銃殺されてから1週間。
事件を担当する警察機構の長官は、新しい大統領に、そう説明していた。
「彼は……自分がロボットのようなモノだと云う妄想を抱いていて……マトモな取調べは不可能です。もっとも当然ですが、CTとMRIで検査した結果、彼は人間でした……。彼の体内に有る人工物は……虫歯治療用の詰め物ぐらいです」
「なるほど……」
「一応、脳波に異常が見られ……左腕に何の異常も無いにも関わらず左腕を失なったと思い込んでおり……更に、自分が陰謀論を撒き散らしたのは、自分を『作った』何者かが『真の愛国者』を自滅に導く為で……『本物の自分』は既に何者かにより殺されている、と信じていますが……まぁ、当然ながら、一つ残らず既知の精神疾患で説明可能な症状ばかりです」
「取調べもロクに出来ない訳ですか……。時に……彼の左手に何かが握られていたとの事ですが……」
「はい……。未知の電子機器と未知の合金です」
「電子機器? ケーブルのようなモノだと云う報告も有りましたが……」
「ええ……ピンクに近い赤と……暗い青の2種類のケーブル状の電子機器を握っていました。詳細は……まだ……調査中ですが……共に通電により伸び縮みする性質が有り……青い方は電気が通ると延び、赤い方は電気が通ると縮む性質を持っているようです。あと……未知の合金ですが……人間の手の小指の骨にそっくりな形状だった、との事です」
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!
ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」
それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。
挙げ句の果てに、
「用が済んだなら早く帰れっ!」
と追い返されてしまいました。
そして夜、屋敷に戻って来た夫は───
✻ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる