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中央集権の暗黒面
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「え~、本日から、IDの下1桁が3,5,6の者は例の伝染病のワクチンの安全性を宣伝する投稿を行なえ。それ以外の者は、ワクチンは危険だと宣伝する投稿を行なえ。細かい点に関しては、メールで全員に送った指示書を参照しろ」
出勤して電算機ルームに入ると、いきなり朝礼でそう言われた。
俺を含めて、この電算機室に集められているのは、この国の中央省庁の役人の内……言わば「親や親類のコネ」で就職出来た連中の中でも更に「使えない」「無能」と見做された奴らで、今の仕事は……「一般人のフリをしてSNSに現政権をヨイショする書き込みを行ない、現政権を批判してるヤツが根を上げるまで粘着しろ」だった。
「あ……あの……それってどう云う事ですか?」
そう質問したヤツが出たのも当然だった。
何故なら、昨日まで俺達は「ワクチン接種が進まないのは、現政権の不手際ではなくて、国民の中にワクチン危険論を信じている者が一定数居るからだ」と宣伝していたからだ。
それが一夜にして方針が変った。それも、何故、そう云う方針になったのか、丸で見当が付かないような方針変更だった。
「お前らは、無能なのに馘にする事が出来ない厄介者どもだ。ちゃんと給料を払って欲しければ、何も考えずに、何も聞かずに、上からの命令に従うだけのロボットになれッ‼ お前だって、それ位は出来るだろッ‼ 判ったかっ⁉」
ひょっとしたら、この上司にも何が起きてるのか知らされていないのかも知れない……。
大統領が、例の伝染病のワクチン接種が遅々として進まぬ事への対策として大規模接種会場を増設してから2日後の事だった。
どうやら、新たに作られた大規模接種会場では混乱が起きているらしかった。
まぁ、俺達自身が、いつワクチンを打ってもらえるか判んない中、換気がアレで人口密度がデカい電算機ルームに閉じ込められているのに、俺達より国の役に立ってない一般庶民がワクチンを打ってもらえるなど理不尽極まりないので、いい気味だ、としか思わなかったが。
そして、翌週には、俺達の中で、ワクチンは安全だと宣伝する者と、ワクチンは危険だと宣伝する者の割合は、3:17にまで変化していた。
更に次の週には、混乱は収まり始め……今度は、ワクチンは安全だと宣伝する者と、ワクチンは危険だと宣伝する者の割合は、4:6になった。
「あの……フォロワー数が半分以下に減りました」
「私もです」
朝礼で次々と、そう報告する者が出始めた。
「どうなってんだ、一体?」
「そりゃ……その……週ごとにワクチン安全論になったり、ワクチン危険論になれば……誰からも信用されなくなりますよ。ワクチンは安全だと思ってる奴からも、ワクチンは危険だと思ってる奴からも……」
「判った。今までのアカウントを消して、新しいアカウントを作れ」
更に次の週には、事態は、もっと無茶苦茶になっていた。
「すいません。アカウントがロックされました」
「私もです」
「何でだ?」
「SNSの運営が、ワクチン危険論をデマと見做して、ワクチン危険論を書き込んでいるアカウントをロックし始めています」
「じゃあ、アカウントを消して……」
「あの……アカウントロックされると、アカウントを消す事さえ出来なくなります」
「判った。新しいメールアドレスを発行するから、それで新しいアカウントを作れ」
「もちろん」と言うべきか「何故か」と言うべきかはともかくとして、翌週には、事態は更に酷くなった。
このSNS工作部隊全員のアカウントがロックされたのだ。
それのみならず……我が国の政府機関の公式アカウントが次々とロックされた……。
どうやら、根本原因は、俺達SNS工作部隊がSNSアカウントを作るのに使っていたメールアドレスが、迂闊にも、この国の中央省庁のモノだったせいらしかった……。
そして、SNSのサーバで動いているデマ・差別・犯罪扇動などの規約違反となる書き込みを監視しているAIが「登録しているメールアドレスの末尾がgo.XXの場合に偶然では説明出来ないほどに、ワクチン危険論のデマを書き込んでいる者が多い」と判断し、該当するアカウントを一律ロックしたのだ。……その監視AIは、メールアドレスの末尾がgo.XXなら、そいつは、この国の政府機関関係者だ、など知る筈も無かった。……何故なら、そんなAIを設計する際に「ある国の政府機関の関係者から危険なデマを撒き散らす者が無視出来ない割合で出現する可能性が有る」なんて想定など、普通はやる筈は無いのだから……。
いや……この辺りの理屈は、後になって判明した事で、その時には、俺達には何が起きているのか見当も付かなかったが……。
そして、次の大統領選挙と国会選挙で、あっさりと政権が変り……前政権がやらかしたワクチン接種の大混乱に関する追及が始まり……ついでに俺は、失業した。
前政権は、政権交代が確実になった際に、自分達がやったポカや犯罪の証拠を色々と消していたらしく、何が起きたのかは……政権交代から半年経っても不明な部分が大きい。
もちろん、「上」が、俺達に、あんな不可解な指示を出した理由もだ。
だが、判っている事も有る。……前政権がやったワクチン接種会場の増設の際に、その実務を担った官僚達は、俺達が撒き散らした「ワクチン接種が進まないのは、政権の不手際ではなくて、国民の中にワクチン危険論を信じている者が一定数居るからだ」と云うデマを信じて、接種に来る人数を見積り……その推定値を元に、会場や人員や輸送手段やワクチン保存に必要な機器や注射器その他の消耗品を手配したらしかった。
出勤して電算機ルームに入ると、いきなり朝礼でそう言われた。
俺を含めて、この電算機室に集められているのは、この国の中央省庁の役人の内……言わば「親や親類のコネ」で就職出来た連中の中でも更に「使えない」「無能」と見做された奴らで、今の仕事は……「一般人のフリをしてSNSに現政権をヨイショする書き込みを行ない、現政権を批判してるヤツが根を上げるまで粘着しろ」だった。
「あ……あの……それってどう云う事ですか?」
そう質問したヤツが出たのも当然だった。
何故なら、昨日まで俺達は「ワクチン接種が進まないのは、現政権の不手際ではなくて、国民の中にワクチン危険論を信じている者が一定数居るからだ」と宣伝していたからだ。
それが一夜にして方針が変った。それも、何故、そう云う方針になったのか、丸で見当が付かないような方針変更だった。
「お前らは、無能なのに馘にする事が出来ない厄介者どもだ。ちゃんと給料を払って欲しければ、何も考えずに、何も聞かずに、上からの命令に従うだけのロボットになれッ‼ お前だって、それ位は出来るだろッ‼ 判ったかっ⁉」
ひょっとしたら、この上司にも何が起きてるのか知らされていないのかも知れない……。
大統領が、例の伝染病のワクチン接種が遅々として進まぬ事への対策として大規模接種会場を増設してから2日後の事だった。
どうやら、新たに作られた大規模接種会場では混乱が起きているらしかった。
まぁ、俺達自身が、いつワクチンを打ってもらえるか判んない中、換気がアレで人口密度がデカい電算機ルームに閉じ込められているのに、俺達より国の役に立ってない一般庶民がワクチンを打ってもらえるなど理不尽極まりないので、いい気味だ、としか思わなかったが。
そして、翌週には、俺達の中で、ワクチンは安全だと宣伝する者と、ワクチンは危険だと宣伝する者の割合は、3:17にまで変化していた。
更に次の週には、混乱は収まり始め……今度は、ワクチンは安全だと宣伝する者と、ワクチンは危険だと宣伝する者の割合は、4:6になった。
「あの……フォロワー数が半分以下に減りました」
「私もです」
朝礼で次々と、そう報告する者が出始めた。
「どうなってんだ、一体?」
「そりゃ……その……週ごとにワクチン安全論になったり、ワクチン危険論になれば……誰からも信用されなくなりますよ。ワクチンは安全だと思ってる奴からも、ワクチンは危険だと思ってる奴からも……」
「判った。今までのアカウントを消して、新しいアカウントを作れ」
更に次の週には、事態は、もっと無茶苦茶になっていた。
「すいません。アカウントがロックされました」
「私もです」
「何でだ?」
「SNSの運営が、ワクチン危険論をデマと見做して、ワクチン危険論を書き込んでいるアカウントをロックし始めています」
「じゃあ、アカウントを消して……」
「あの……アカウントロックされると、アカウントを消す事さえ出来なくなります」
「判った。新しいメールアドレスを発行するから、それで新しいアカウントを作れ」
「もちろん」と言うべきか「何故か」と言うべきかはともかくとして、翌週には、事態は更に酷くなった。
このSNS工作部隊全員のアカウントがロックされたのだ。
それのみならず……我が国の政府機関の公式アカウントが次々とロックされた……。
どうやら、根本原因は、俺達SNS工作部隊がSNSアカウントを作るのに使っていたメールアドレスが、迂闊にも、この国の中央省庁のモノだったせいらしかった……。
そして、SNSのサーバで動いているデマ・差別・犯罪扇動などの規約違反となる書き込みを監視しているAIが「登録しているメールアドレスの末尾がgo.XXの場合に偶然では説明出来ないほどに、ワクチン危険論のデマを書き込んでいる者が多い」と判断し、該当するアカウントを一律ロックしたのだ。……その監視AIは、メールアドレスの末尾がgo.XXなら、そいつは、この国の政府機関関係者だ、など知る筈も無かった。……何故なら、そんなAIを設計する際に「ある国の政府機関の関係者から危険なデマを撒き散らす者が無視出来ない割合で出現する可能性が有る」なんて想定など、普通はやる筈は無いのだから……。
いや……この辺りの理屈は、後になって判明した事で、その時には、俺達には何が起きているのか見当も付かなかったが……。
そして、次の大統領選挙と国会選挙で、あっさりと政権が変り……前政権がやらかしたワクチン接種の大混乱に関する追及が始まり……ついでに俺は、失業した。
前政権は、政権交代が確実になった際に、自分達がやったポカや犯罪の証拠を色々と消していたらしく、何が起きたのかは……政権交代から半年経っても不明な部分が大きい。
もちろん、「上」が、俺達に、あんな不可解な指示を出した理由もだ。
だが、判っている事も有る。……前政権がやったワクチン接種会場の増設の際に、その実務を担った官僚達は、俺達が撒き散らした「ワクチン接種が進まないのは、政権の不手際ではなくて、国民の中にワクチン危険論を信じている者が一定数居るからだ」と云うデマを信じて、接種に来る人数を見積り……その推定値を元に、会場や人員や輸送手段やワクチン保存に必要な機器や注射器その他の消耗品を手配したらしかった。
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