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twitterで「いいね」したら名誉毀損になる世の中なんて……

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「あの……お茶とコーヒー、どちらがいいですか?」
「いえ、おかまいなく」
 twitter上に表示されたプロモtweet「悪魔と取引して願いを叶えよう!! 初回はお試しですので魂はいただきません!!」をタップした途端、玄関のベルが鳴り、そいつが居た。
 かなりお堅い職種の30代のエリート・サラリーマンと言った感じの男だった。
 ひたいの2本の角と、先端に逆棘が付いた尻尾と、コウモリのモノに似ているが、どこかビミョ~に違う気がする翼を除いては……。
「で、条件ですが……願いの内容によっては私の上司の承認が必要になる事も有ります。最初の願いに関しては、魂はいただきません。貴方の死後、貴方の魂がどうなるかは、貴方が人生でやってきた事で決ります。2回目の願いで魂をいただき、貴方は死後、地獄生きが決定します。『最初の願いを取り消せ』も2回目の願いと見做します。では、この条件の元で、慎重に願いを決めて下さい」
「は……はぁ……知り合いのアルファ・ツイッタラーが名誉毀損の民事裁判で負けまして」
「その裁判の結果を引っくり返せと?」
「いえ……名誉毀損になった理由が、ある人物を非難したtweetに『いいね』をした事だったので……やっぱり間違ってると思うんですよ」
「何がですか?」
「twitterで『いいね』しただけで、名誉毀損で賠償金を取られるなんて世界は……」
「なるほど、そんな間違った世界を正したいと」
「はい」
「その願いでいいんですね?」
「もちろん」
「最後の確認です。慎重に決めた願いですか? 本当によろしいですか?」
「1回目の願いでは魂は不要なんでしょう?」
「ですが、先程も言いました通り、『最初の願いを取り消せ』も2回目の願いと見做して魂をいただく事になりますよ。いいんですね?」
「大丈夫です。私にとっては正しい願いです」
「わかりました。では、貴方がYesと言ったら、最初の願いを叶えます。願いを叶えて良いかをYes/Noで明確に答えて下さい」
「Yesです」
「はい、叶えました。twitterを確認して下さい」
「えっ?」
 そう言われて、スマホのtwitterアプリを立ち上げると……。
「えっと……エラー?」
「はい、twitterの本社、全ての支社とデータセンターに隕石を落して壊滅させました」
「へっ?」
「これで、twitterで『いいね』をしても名誉毀損に問われる事は有りません。twitterそのものが消えたので」
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