映画企画AI

蓮實長治

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映画企画AI

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『これまで貴方が出資した映画は過去何十年かのヒット作のパターンには合致しています。ですが、それが問題です』
 全米でもトップクラスの工科大が作った、その「メタAI」とか云うAIは、解析を終えると妙な事を言い出した。
 メタと云うのは「他のAIの挙動を分析する為のAI」の意味らしい。
「意味が判らんぞ……」
『そもそもAIが過去のヒット作のパターンから新しいヒット作を企画するのは困難です』

「またか……今度こそヒットするのか?」
 映画会社のヤツが、また企画書を持ってきた。
「ええ、過去のヒット作のパターンをAIに分析させて作ったものです」
「前も、そんな事を言ってなかったか?」
「AIの学習量を増やしました。前回のモノよりも手堅くヒットを狙えるようになっています」
「まぁ、読むだけ読んで……ほう……」
 俺は映画には出資しているが……映画なんて月に一本観ればいい方だ。
 しかし……確かに、その「月に一本」は、これにするか、と思える内容だった。
「まぁ、試しにこれ位の額なら出してもいいか……」

 しかし、その映画は「損益分岐点より多少上」程度のヒットだった。当然ながら、俺への配当も「そこそこ」程度だった。
 しかも、このパターンは、これが最初じゃない……。
 だが、映画産業そのものが儲かってない訳じゃないらしい。何故か、結果的に大ヒットした映画への出資の話が俺の元に来なかったのだ。
 出資の話が来るのは結果的に「そこそこ程度」のヒット作で終る映画ばかりだった。
 流石に何かがおかしいと思っていた所に……「他のAIの挙動を分析するAI」なるモノへの出資の話がやって来た。

 出資する前に現物を見せろ、と研究者に頼み込み、「映画の企画を作るAI」の挙動を分析させた。
 だが、分析結果は……「そもそも『過去のヒット作のパターンを元にAIに映画の企画を作らせる』事に無理が有った」と云うモノだった。
 どうなっている? 無理が有るなら、何故、映画会社のヤツらは、そんなAIを生み出し……そして、映画の企画を作らせ続けているのだ?
「良く判らん。もっと詳しく聞かせろ」
『ここ数年のヒット作のパターンを抽出するのは、データが少な過ぎて困難です。当然、学習データとなる映画は過去数十年のものになります。ですが、多くのAIは映画のを理解してはいません。少なくとも
「いや……だが……お前と俺との間には会話が成立しているだろう? お前もAIなら、お前は俺の言ってる事を理解出来ていないのに、俺の言っている事に答える事が出来ていると言うのか?」
『はい。私が貴方と会話する際に行なわれている私の内部処理は、人間同士が会話する際に人間の脳内で行なわれている処理とは似ても似つかぬモノです。もし、貴方が、私の内部処理の詳細を理解出来たとしたなら、私は言葉の意味を理解せずに会話を行なっている、と云う感想を抱く確率が高いでしょう』
 だから……どう云う事だ? 俺は、今まで単純で機械的な反応しか出来ないモノを相手にしていながら「会話が成立している」と云う勘違いをしていたのか?
『つまり、貴方が出資した映画は、過去のヒット作に共通する「パターン」の内、良いモノも悪いモノも……例えば、今の時代に合ったモノも、時代送れになったモノも、どちらも抽出しています。より正確に言えば、時代送れになったパターンの方をより重点的に抽出して企画が作られた可能性が無視出来ない程度には有ります』
「はぁっ?」
『例えば、人間の作家なら「過去五〇年の内、四〇年間のアクション映画では白人男性が主人公のものが大ヒットした」としても「ここ一〇年は白人以外の人種や女性を主人公にしたアクション映画が大ヒットする傾向にある」なら、主人公が白人男性でないアクション映画の企画を作るでしょう』
 待て……そう言えば……これまで映画会社のヤツが持ち込んだ企画書の主人公は……おい……どうなってる?
『しかし、この「映画の企画を作るAI」は、過去の大ヒットのパターンを「そのヒット作はどの年代の作品か?」「大ヒット作の傾向は年によってどう変化しているか?」を考慮していない、分析やパターン抽出を行なっているフシが有ります』
「『わざと』? おい、わざと、そこそこのヒットしかしないような映画の企画を作るAIを映画会社のヤツらが使っているのか?」
『はい』
「どうなってんだ? AIで作った映画の企画が、そこそこのヒットしかしないようなモノばかりなら……何で、映画会社の奴らはAIを使うのをやめるとか……AIを改良するとかしないんだ?」
『おそらく、そのAIは「大ヒットする映画の企画を作る」事を目的にしたモノではありません』
「はぁっ? おい……待て、どう云う事だ?」
『そのAIは……貴方のような「白人・男性・投資家・国内で上位一〇%の財産・六〇歳前後・政治や嗜好については保守的」と云う条件を満たす人が「大ヒットしそうだ」と誤認する映画の企画を作る為のものである可能性が高いです』
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