死んだ君が目の前に現れた

ぼの

文字の大きさ
上 下
2 / 14

2 回想①

しおりを挟む
さくらと初めて出会ったのは、小学1年生の時。

同じクラスで最初の席替えで席が隣になって、直ぐに仲良くなった。



「はじめまして!あたしさくら!」



小学生の頃の話だ。

まだ人を好きになることがどんな事なのかわからない僕にとって、さくらと二人で過ごす時間はとても心地よかった。

黒板にさくらとの相合傘の落書きをされたこともあった。

周りの友達にからかわれても、恥ずかしいとは何も思わなかった。

初めて二人で帰った日、さくらの家が僕の家の2つ隣だということを知って驚いた。

学校が早く終わった日はどちらかの家にお菓子を持って集まり、たくさんゲームしたりお話したりした。

「将来私は優希のお嫁さんになるんだー! 」

笑顔で言ってくれたことをさくらは覚えているかなあ。

中学の時は思春期とか反抗期とか色々あって、沢山喧嘩もした。

でも最後はどちらかが謝って、次の日になるとコロッと忘れてしまっていた。

中学三年生の時、さくらの祖父が亡くなったことを聞いた。

一度だけ会ったことがある。とても怖い人で、さくらも僕も細かいことでよく怒られたものだ。

部屋でずっと泣きっぱなしだったさくらを、僕は抱きしめてあげることしか出来なかった。

それから高校に入学するまで、僕らは仲の良い幼馴染という関係で進んできた。

高校に登校する途中に少し小高い丘があって、そこには大きな一本桜が咲いていて、そこから海が見える僕らのお気に入りの場所だった。

よく下校途中にその場に足を運び、二人で色んな話をした。

さくらは中学校の時からクラスの中心にいるような存在で、男女問わずみんなから慕われていた。

僕はその時サッカー部に所属していた。さくらにマネージャーをお願いしたけど、学級委員とかの仕事が忙しくて断られてしまったことを覚えている。

学年でも美人と評判のさくらだ。何回もさくらが他の男子に告白されるのを見てきたし、僕が咎められることもあった。

そんな時でもさくらは必ず最後にこういった。

「私はもう心に決めた人がいるんだもん!」

僕は毎回その言葉の意味がわからず、「それ誰なの?」としか返せなくてさくらに怒られた。

他にもさくらから愚痴だのなんだのを聞かされていた。

おそらく僕らはお互い両思いだった。

いつの間にか幼馴染という認識から好きな人へと僕の頭の中で変わった。

いつもと変わらず、帰り道を歩く2つの影。

「ねえ優希、明日までの国語の課題見せてよ~。」

「えー、授業サボってた癖に~」

「なんか1つ言うこと聞くからさ!お願い! 」

「じゃあ......明日一緒に屋上でお弁当食べようぜ」

「え、なに?そんな事でいいの?」

さくらは笑いながらそう言った。
僕が何を企んでいるかなんて知る由もなく。

翌日のお昼休み、僕はさくらに告白した。

断られたとしても、僕らの関係が壊れるわけじゃないし、またいつも通り接すればいいと思っていた。


「さくら。俺と......付き合ってくれないか? 」

「うん。いいよ! 」

僕はその時、言葉で表せないくらいの幸せを感じた。

「ずっと......待ってたんだからね!私は全然嬉しくないんだからね!! 」

そんなことを言いながらも、「顔真っ赤だよ」なんて言ったら怒るんだろうな。

僕はそのとき、目から溢れる涙をさくらに見られないように隠した。

その帰り道、ふたつの影が初めてひとつとなった。

確かに僕らは恋人になった。

たくさんお出かけもしたし、たくさんの物を買った。

初めて慣れずに二人で体を重ねたことも鮮明に覚えている。

そしていつしか、僕らは歯を食いしばりながら二人で受験勉強に明け暮れる日々を過ごすようになった。

何としても東京へ。
何としても同じ大学へ行くことが、二人の目標だった。




しおりを挟む

処理中です...