夏の終わりに君が消えた

ぼの

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第4話 好きなら告白しろよ

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そう言って秀成はテーブルに置かれたコーヒーに口をつけた。

岡田 秀成(ひでなり)。
幼稚園からの幼なじみで、中学一年生の時、お父さんの仕事の都合で県外へと引っ越してしまった。
電車で一時間半程の距離に家があって、月に一度しか会ってない。

秀成の家は地元と比べると都会に近くて、自然が少ないように想える。家の近くに公園があって、夏はセミの声が特にうるさいらしい。

今日は秀成の家で遊んでいた。


「だってお祭り一緒に行ったんだろ?    
それってもうそういうことだろ」

と言って中央に広げてあるポテチを頬張る。
僕が買ってきたものだ。

「でも今幸せなんだ。 ふられたら全て終わるだろ」

その事しか考えられない。
むしろそう考えることがベストだと思っている。

今のままで僕は幸せだ。
リスクを背負って告白が失敗したら、もう今の関係に戻れる気がしない。

それならもうこのまま......
なんて一人で黄昏ていた。

「それに今度はカラオケだろ?
俺が羨ましいぜ。
  両片思いとかあると思うぞ」

そんなことはない。
口で言う前に頭の中でそのセリフが流れた。
人生そう上手くいくことなんてない。それは漫画の中だけ。

机のお菓子に手を伸ばすと、
その手は空を切った。

「それでもまだ無理だよ。
 まだ会って3ヶ月とかだぜ? ラブコメのような展開にはならないんだって」

「さあて、どうやって告白しようか......」

「話聞いてる?」

秀成はおもむろに席を立って、コーヒーとチョコのお菓子を持ってきてくれた。

告白と言っても、どんな風に伝えるかなんて考えたことがなかった。
口で言う以外に何がある。
LINEなんてとんでもない。


「わかった。じゃあこうしたらどうだ......」

「それ、怪しまれる可能性しか見えないんだけど」

秀成の提案は僕を余計に心配させた。
浮かんでいた氷は全て溶けしまっていた。
それでも、秀成は真剣な目でその提案の説明をしてくれた。

それを頭の中でまとめていた。
ふいに天井を見上げると、無意識にため息をしていた。

告白する勇気がないなら、向こうが絶対に僕のことを好きだという証拠を見つけること。
好きな男性のタイプから話を展開して言って、どうにかしてそのしっぽを掴むこと。

もはや告白することよりも難しいような気がするけど......























***

秀成の家を出たのは五時前だった。
まだ空は多少薄暗くて、電車は仕事を終えた人々で混みあっていた。

家に着くまでずっと、二人で話していた作戦についての脳内会議が開かれていた。

「いいね!行きたい!」

それでも、そう返答している過去の自分がそこにはいた。

しっぽを出しているのは僕の方じゃないか。


あと二日ある。

それでも考えている間、時間は待ってくれない。



特になんの結論も出さないまま、
枕元の目覚まし時計を止めた。
僕は眠い目を擦りながらベッドから飛び起きた。
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