夏の終わりに君が消えた

ぼの

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第5話 乙女な結衣ちゃん

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小澤恵。 16歳。

私には登校日初日に友達になった人がいる。

小森結衣ちゃん。
彼女の第一声は......

「私も好きなんだ そのアニメ!」

私のカバンに着けていたキャラクターのキーホルダーを見ながら彼女は言った。

その一言は不安だった私にとって救いのようなものだった。
同じ趣味の友達を作ることが本当に嬉しくて、私たちはすぐに意気投合した。

初日の帰り道も一緒に帰って、
大半はゲームの話だけど、プライベートに関しても足を踏み入れた。

結衣ちゃんは今気になる男子がいるらしくて、だめもとで告白するという話を聞いたのは六月の半ばだった。

結衣ちゃんは私が会ってきた女の子の中で一番男子と話すのが苦手な子のように思える。

いっつもおどおどした感じで、羅列が回らないことがほとんどらしい。

告白が成功する確率はとても低いことを彼女には言わなかった。


それでも、教室に戻ってきた彼女は笑顔だった。なんてポジティブな思考なんだとその時は思った。

帰りに二人で大きなパフェを食べた時もずっとゲームの話をしていて、一言も不満を言わなかった。


気づいてないんだなあ。
強いて言うならもっと身近にいる人の意見に気づいて欲しいと思う。

それは大塚くんのことを話しているのかって?

その一言が彼女の口から飛び出せば、私は笑顔でうんと答える。

彼はとても真面目な性格で、とても優しいんだけど、彼を見てるとなんだかもやもやしてもどかしい気持ちになるのは私だけだろうか。

私は夏が嫌いで、大抵はクーラーの効いた部屋でゲームしたり漫画読んだり、ごろごろしたりすることが日常だ。

今年は久しぶりに夏祭りに参加した。男の子とお祭りに行くのは私にとって二回目で、周りからの視線だけがとても痛い。

これは私の憶測だけど、大塚くんは結衣ちゃんが好きなんだろう。
なんてわかりやすい表情をするんだ。

お祭りでの様子を見て欲しいくらいだ。


「この写真 めっちゃ良くない?」

かき氷店にいた結衣ちゃんの写真を嬉しそうに眺めていた。


この前のカラオケだって......

いや、私からは何も言わないでおこう。




「ねえめぐ?
  なにぼーっとしてるの?」

「ちがうよ 少し考え事してただけよ」

結衣ちゃんは私をめぐと呼ぶ。
もうすぐ夏休みだってのに、結衣ちゃんはお気楽だなあ。

私はふと思いだして聞いてみた。

「そういえば結衣ちゃん、もうすぐ誕生日だよね?
何か欲しいものあるの?」

「んー...... お菓子!ぬいぐるみもいいな~」

「乙女か」

おもわずため息が漏れてしまった。嘘を言っているようには思えないけど......
まあ高いものとか不可能なものを要求されるよりはいいのだけれど。

その後、何故か私の頭には彼の事が浮かんだ。

誕生日を彼に暴露しようかと思ったけど、私はLINEのアイコンを眺めながら、スマホの電源を落とした。
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