勇者育成機関で育てられた僕よりも異世界から呼ぶ勇者のほうが楽で簡単で強いそうなので無用となりました

無謀突撃娘

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大物狩り ヘッドハンター

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7つの村を全部回った。正直に言えば無事な村があったほうがおかしいと感じるほどにオークらが多かった。その上山賊やらも混ざり領主と神官の混合軍ではどこかで壊滅させられていた計算が高い。モンスターの死体処理を行いつつ状況分析をする。

「ーーーで、ありますからまずは森林地帯から調査を行うべきですね」

三者が揃い調査する地帯の大まかな地図を見ながら意見を出し合う。身を隠すのに定番の森林地帯、その後方には洞窟が掘れそうな山岳地帯もある。ここで確定というわけじゃないけど当たりの可能性は高い。

「大まかな方針はそれで決定として」

「我らは最低限の連絡要員を残して帰還しつつ周囲を警戒します」「私たち教会側もそれに依存はありません、こちらも正直辛いので」

領主の軍も教会の神官も「これ以上離れると町の治安維持ができない」その結論しか出せないのだ。実際あれだけのオークを目撃すれば村々の治安を守る以上に本拠地となる場所の安全確保が最優先なのだろう。

そのほとんどをぶっ倒したのは僕らだが。

もう正直に本音を言えば「付いていけない」だけであり足手まといということだ。足手まといと分かっているので無意味に死地に向かいたくない。それは当然だしそのつもりで来てもらっていたからだ。別段恥じることではないし無責任というわけじゃない。

ちゃんと責任は果たしている。だから犠牲者が出る前に逃げてもらうのだ。救う必要のない命に引っ張られ沼に沈む前に。

帰還する全員に一人で背負えるぐらいの大袋で必要な物資を詰めて渡し帰らせる決定をだした。あとに残った数人は僕のコテージで待機させる。

「食材とか必要なものはそっちで勝手に使っていい」

「わかりました」

短時間で回れる範囲ぐらいで切り上げるつもりだが敵の数によってはどうなるのか分からないためいざという場合のことを教えておいてから4人で出発する。

「森の中は空気がいいですけどそれだけじゃないですよね」「そうですね、足元が伸びた草でよく見えませんし」「うわっ、蜘蛛の巣に引っかかったよ」

木の葉っぱ、足元の雑草、小さな羽虫、そこから注ぎ込むお日様の光とその陰、それらが自分たちの緊張感を鈍らせる。自然の中に潜む敵はどこか、足元に潜むのはなんであるのか、それらは害をなさないのか。

自然の中に踏み込めばそこはもう人の領域ではないこと。それを嫌というほど思い知らされる。

自分たちは目的もなく歩いているわけじゃない、この奥にあるという岩山に向かっていた。オークの特性上洞穴を開けるのは定番だからだ。森という地帯が自分らを隠してくれることを本能的に理解してもいる。しばらく進むとそれが間違いなかったことが現実として理解できた。

「定番だね。ほら」

そこには一つの洞穴とその周りを守るように丸太を蔓草で縛り砦を建築中の様子が見える、それも結構な規模の大きさだった。その中でオーク共がせっせと働いていた。

第一段階ではまだ巣穴近くにいるけど砦を建設出来るぐらいの数には増しているということだ。周囲への略奪行動を開始しているということは第2段階に移行したと見てよいだろうね。ここにくる間に出会わなかったということは運が良いか悪いか、どちらにしてもここまでの規模だとすぐに潰さないとならない。

領主軍を待ってられないしそもそもこれほどの規模になると相当な犠牲者が出てしまう、この地の領主にはその犠牲を出せる余裕がない、それは教会も同じだ。

「覚悟を決めて」

コクリ、と。3人は頷く。

僕もイヴラフグラを抜く。出し惜しみは無しだ。呪文を詠唱する。

「《火炎砲弾》」

剣を真上に掲げ火炎の球を何個も生み出しそれを敵の砦目がけて打ち込む。何発も。門目がけて。数発で砦はガラガラと崩れていく。

「ぶひぉおおおおお!」

オーク共は突然の攻撃に一瞬混乱する、すぐさま臨戦態勢を取る。

「《惑わす使い魔》動きを止めなさい」「《小さな魔術使い》各敵を狙え」「《勇ましき人形》ゴーレムども、ふみつぶせー」

各自召喚生物で頭数を増やす。自分+3体なので頭数ではまだオーク側が遥かに多いが召喚生物はオーク共と正面からでも殴り勝てるしそれが隊列を組んでいればまず負けない。

正面の砦は僕が破壊していき皆は敵に対処する。ガラガラと崩れる音と敵の断末魔、洞窟の奥から次々と現れるオーク、その攻防を繰り返していきオークが死体として積み上がっていく。その攻防を続けていくと洞窟から出てくるオークの数は徐々に減っていき最後に何も出てこなくなった。

「洞窟の中から出てこなくなった?」

3人は洞窟から出てこないオークらを「全滅した」そう思った。だって死体は間違いなく100体を越えていたからだ、大雑把だがそれぐらいの数がいたということ。これで終わりーーーなはずがない。

洞窟の奥を確認する必要があるね

「僕が前衛に出て後ろ3人は後方を任せる」

大量の死体の山を見ながら洞窟の奥に進む。中に入るとほぼ一本道で合間合間に居住区画があったがそこにオークは一体もいなかった。3人は安堵してるようだが僕の中では激しく警鐘が鳴らされる。この奥には間違いなく良くない存在がいることを

そうして、最深部まで行くと。

「オークらが何かに縋り付いている」「なんなのでしょうか」「新手の儀式、とか」

生き残りの数十体のオークが集まり何か儀式のようなことをしていた。オークの生態ではマジシャンやシャーマンなどは生まれないはず、でも中央にあるのは間違いなく祭壇だ。何かを呼び出そうとしている、のか。そして、奴らの祈りが届いたのかオークの体は瞬時にズタズタに引き裂かれて絶命した。

その後に現れたのは鈍色に光る大きな体と右手に剣左手に盾を持った無機質で心のない怪物だった。

「あれは…ヘッドハンター《首狩り機械兵》!」

古の時代、まだ強者がひしめきあっていた時代に敵のトップを殺すために魔王らが生み出した殺戮人形。地上世界の金属などよりもはるかに強靭な金属で作られた体と人類種を軽く上回るステータスを備え、あらゆる攻撃に強い耐性を有するただただ効率よく敵の頭を刈るために生み出された存在。

その中身は非常にシンプルだ。

『目の前に存在する生命を皆殺しにしろ』

その命令を遂行しようとしている。僕たちを標的にして。

「ギ…ギギッ」

その先頭人形は頭部から殺気を放ちながら周囲を確認する。

「あれはいったい何なのでしょうか」

ライザの疑問、それと同時に敵は跳躍した。

「え」

10mもの距離を一瞬で詰めライザの真上に剣を構えている。それは瞬時に振り下ろされようとするが「ガキィン」僕の剣で弾き返す。

「あ、ああっ」

突然の攻撃にへたり込むライザ。それでもまだ敵はライザの目前にいたため僕は剣を水平に構えながら突進し《感電》を撃ち込む。それでわずかばかりの時間が稼げた。

「隊列編成は1:1:2。気を抜くな。こいつは魔王や魔人クラスが生み出した感情なき殺戮機械だ。地上世界に出していい存在じゃない。今ここで倒すよ」

味方に活を入れる。僕の言葉と先ほどの能力を見てただならぬ存在だと全員が認識する。これは死闘になるだろう。

僕が最前列に出てエトナがその後ろでその後にライザとラグリンネが隊列を組む。

奴の体は地上世界よりも強靭な金属でできている下手な攻撃では通らない。

「《全能力向上》《戦意高揚》《聖属性付与》」

味方にステータス上昇のバフをかけ続けざまに。

「《邪霊の怨念》《混沌の酸毒》《罪科の報復》」

敵のステータスダウンのデバフをかける。防御力は大幅に下がったはずだ。これでいけるか。各自自由戦闘を開始する。

「光魔術がことごとく弾かれます」「動きが早くて回避がギリギリです」「ゴーレムらが一撃で両断とか、まじですかぁ」

それでもなおヘッドハンターは強敵であった。こちらはかなりの強化と敵の弱体化をしているはずなのにその動きが衰えることはない。こちらを強敵と認識し首を刈るまで延々に動き続ける戦闘人形。

こいつに明確にダメージを与えることができるのは僕だけのようだ。

「イヴラフグラ。ちょっとばかり暴れるよ」

剣に明確な意思を伝える。それで刀身からすさまじいほどの力と共に妖しい輝きが増していく。チマチマ切り合っては状況は悪化するだけ。僕は胴体を目がけて《加速》をかけ切っ先を向けて敵を貫通しようとした。その動きに気づいたヘッドハンターは盾で防御するが。

「ぬぁっ」

盾ごと武器を押し込んでいく。。

さすがヘッドハンターの盾は頑丈でなかなか胴体まで届かない。少しばかり時間がかかりようやく胴体まで届くとあらゆる攻撃魔術を剣の先端に集め内側から破壊していく。その間にもヘッドハンターは剣を振り回すが仲間の3人がそれを阻止する。数分間その攻防が繰り返された。

数分後、その攻防が終わりを告げる。敵の目から光が失われガクリと体を地面に横たえたのだ。

「はぁはぁ…本気で命の危機を感じました」

「本当によく倒せたのか今でも信じられません」

「古の時代にはこんな化け物がそこら中にいたとか、そりゃ凄惨にもなるですわ」

今の時代の人類種には太刀打ちできないであろうその戦闘能力を実感し僕以外血の気が失せていた。急ぎ知らせる必要があるだろう。

僕はヘッドハンターの遺体を《収納》し仲間とその場を後にすることにした。
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