勇者育成機関で育てられた僕よりも異世界から呼ぶ勇者のほうが楽で簡単で強いそうなので無用となりました

無謀突撃娘

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おこぼれにありつこうとする連中 5

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僕が預かっている灰色級初心者冒険者共は着実に成長を続けパーティを組めばゴブリンの巣穴ぐらいなら何とかなる段階まで来ていた。もうちょっとすればレクチャーは切り上げていいはずだ。

彼らに付いていた悪い虫も大分潰し終わってしまったのでそろそろ本業に戻ろうとするのだが。

『え?もう少ししたらレクチャーは終わり、ですかぁ。そんなぁ、ずっと付いていきたいです。愛人扱いでもいいですから』

こらこら、君たちの本業は冒険者、でしょ。僕の愛人なんてやろうとするものじゃないんだから。なんだか今にも捨てられそうな愛玩動物、のような目で訴えてくる。僕はそれに思うところがないわけじゃないが自力でやっていきたいならもうここで終了だ。甘やかすと自立出来ないのは自然の営みだ。家の中で一生を終えるのなら別だけど。

保護下にある動物の光景は微笑ましいが僕はあいにく彼ら彼女らを飼う気は一切ない。何度も言うが一切ない。自然に育つのが好きなのだ。

後は地道に草の根活動を続けて行けばいい、それでも死ぬときは死ぬが、そういう運命が世界の現実だ。

だが、彼らは諦めようとしていないことに気づいた。特に女の子たちは必死の形相である。僕の個室に無断侵入しようとさえしていた。

「やめてよね。もう自力でやっていけるぐらいにはなったんだからさぁ」

『嫌です。傍においてください。尽くしますから』

「冒険者の本業はどうするつもり?」

『貴方の愛人になれば万事解決です』

「だーかーらー、人生は真面目に考えてよね」

『本気で考えた結論がそれなのです』

これ以上は埒が明かないと判断して正規のメンバー以外全員をコテージから強制的に弾き飛ばすことにした。突然コテージの中から放り出された全員が強引にでも入ろうとするが魔法の門が立ちはだかる。

「皆、すまないけど彼らを安全な場所に連れて行ってあげて。お駄賃あげるから」

仲間に手間を取らせるが仕方がない。

「甘やかすときりがないのはどこも同じなんだね」「愛玩動物なら別にかまいませんがさすがにあれを飼うというのは」

ミーアとエメリアは同族達の要求に辟易していた。

「寛大な心も相手を見て選ばねば悪い方向に進むということですな」「あいつら、自分らがお情けで面倒を見てもらっていること絶対勘違いしてますね」

バーゼルとシェリルもこれだからコネや縁故採用が馬鹿げていてその付き添いまで迷惑をこうむると嘆いた。

「神の恵みを全てに与える必要などない、それだけです」「いやはや、奴らの頭の中どうなってるんだろうねー」

ラグリンネとエトナも不埒な行いをまかり通そうとする連中に嫌気を見せる。

そして仲間全員からの一言。

『貴方が甘やかすから奴らが調子に乗るんですよ。無自覚にもほどがあります』

いや、そんなに甘やかしたのか?別に普通のことをしただけだしキツめに振舞ったはずだ。なぜか仲間全員からの視線が痛い。そんな目で見ないで欲しいのだけど。

「ともかく、リーダーは迂闊に外に出ないように」

「いや、それはちょっと」

『い・い・で・す・ね』

「……はい」

全員から指差しされて宣言される。その後は追い出した連中の対応は仲間らに任せることにした。というか、あまり迂闊に相手をするなとの厳命だ。仲間からの圧力に屈した。ちと寂しく感じるがあの手合いを相手にするよりかは大分気持ちが楽なのかは確かなので反論できない。

仲間たちが帰ってきてようやく次の段階に進める…はずであったのだが。

『先生!助けてください。故郷の部族氏族が私達の責任を問うために武装してやってきたんです。このままじゃ皆殺しにされてしまいます!』

やぁーっぱりというか、一族を纏める長が送り出した人物を自滅とはいえ強制労働所送りにした問題が出現した。その問題はもう「人選が悪かった」で大体終わっているはずなのにいまだに騒ぐ連中がいたのだ。彼らは今冒険者ギルドの建物に押しかけて来て要求を押し通そうとしているらしい。

あーもう、クソい連中の後始末のことでここまで引っ張りまわされていては身が持たないぞ。急ぎ建物まで向かうと双方武器を抜き臨戦状態寸前の状況だった。

「落ち着きなさい。説明を求めます」「うるせぇ、大事な一族を強制労働送りにしやがって」

双方とももう一触即発状態だ。

「《労りの花薬》」

とりあえず、気分を落ち着かせるために花の香りを充満させて落ち着かせる。それで双方とも血の気が少し収まったのか何とか話し合いは出来そうだった。

「で、用件は何ですか。こっちも忙しいんですよ」

「決まっているだろ。強制労働送りにされた同胞の無条件解放とその賠償金の支払いだ。あと、無能な同族の正式な罪状の有無を問う」

やっぱりその話になるのか。相手側からすれば理不尽な内容だろうな、そのあたりの正確な情報がまるで伝わってないかあるいは勘違いしたのか。

「正式な書類は送りましたよね。それが事実です」

「ふざけるな。我ら部族氏族は古より優秀な血筋を引き継いでいる。それが無能呼ばわりとは聞き捨てならんぞ」

「あなた方の里ではどのようにして秩序が成り立っているのかは存じませんが世間一般では無能なんですよ」

「かつて戦場で勇敢に戦い数々の勝利を挙げてきた我らが無能?はっ、これだから役人風情は見る目がない」

明らかに相手を侮る態度。確かに役人と言えば役人だが受付嬢も職員も各地から選抜され様々な難関を潜り抜けてきたエリート達だ。下手な富豪よりも権限が強い。部族氏族からすれば「小難しい言葉を使う下っ端」そんな認識なのだろう。

世界から遅れているのはこちらではなくそちらなのだと明言してるも同じだ。力こそが正義と唱える彼らには言葉の重要性の認識とコミュニケーションのやり方が蛮族丸出しである。

それはそれでいいかもしれないが通る相手を選ばないと宣戦布告と捉えかねないことを理解していない。彼らは冒険者ギルドに喧嘩を売っているのだ。実にすがすがしい馬鹿である。

「ともかく、こちらが言うべきことは言いました。後はそちらで対応してください」

「なぜ強者である我らが弱者である貴様らに従わねばならんのだ。ここまで来てあれやこれやというのは無意味だな」

決闘だ!大勢が声高に叫ぶ。

決闘の本質は自力救済を旨とする古代社会のしきたりだが今の時代には合うものではない。やはり蛮族である。もうこれ以上は話し合うのは無意味と判断したのは冒険者ギルドも同じのようだ。後日場所と相手を決めて決闘を行いどちらが正しいのかを証明する。クソくだらないが。

「決闘、受けてもらえませんか?」

やはりというか、僕に白羽の矢が飛んで来た。

「…奴らの蛮族丸出し根性はある意味ではすごいと思うけど今の時代にあんな要求が通るとでも考えてるとは信じられない。ま、レクチャーの期間はまだ終わってないから受けようと思えば受けれるけど」

奴らがゴネた場合が問題だ。ここに来ている全員を皆殺しにするまで戦闘を続行とかにまで行くと部族氏族の内輪もめに油を注ぐ事態にもなりかねない。しかるべき審査役監督役を用意してほしいと頼む。

「大変に申し訳ありませんが相手を殺してはいけません」

「決闘は基本生死を問わずだよね。なんで?」

「ちょっと誤解があるようですね。殺してはなりませんが苦痛を与えてはいけないという決まりはありません。ですから、まぁ、ちょっとばかり地獄を彷徨わせてくださればありがたいと」

ふーん、あの手の部族氏族の蛮族丸出し根性で力こそが正義だという言い分に困っているようだ。それは間違いではないが相手を選ばず好き勝手に使うため戒めておく必要があると。強者に従うのが秩序だと言うのならばそれをこちらが使っても問題はないよな。そういう事らしい。

後日、その決闘が開始される。

「ハハハっ。なんだぁ、あの子供は。訳の分からん道化師のような男とも女とも分からないそれも戦士を侮辱するかのような服装は初めてだ。いいぜぇ、楽には死なせてやれんぞ」

頭には小さな帽子を被り、フリフリヒラヒラした幼い女子用の服に足元を小さく可愛い革製の靴を履いている僕を見て敵はやる気が削がれているようだ。

えーっと、典型的な戦斧と革製の鎧とチェインメイルの複合、足元もきっちりしている。頭部には耳飾りがついているがまぁそれだけだ。古式ゆかしい戦士の装備だ。イヴラフグラ《富と咎を成すもの》を抜くまでもない。ちょっと強化した鉄の剣で十分だ。

開始の時刻となり鐘が鳴る。

即座に相手は全力の攻撃を仕掛けてくる。右肩からの袈裟切りだ。あの質量でそれを食らえば即死は間違いないはず、であるが。

(クソつまらん。確かに全力攻撃なのは間違いないが初手で仕掛ける攻撃じゃないだろ)

もう少し牽制し合う展開を描いていた僕だが相手はさっさと決着を付けたいようだ。はぁー、しゃーないか。体の陰の部分、それを指先でちょっと突くと相手は後方に倒れてしまう。

「!!?」

相手は突然体が後方に倒されたことに驚いていた。それを僕は相手の顔を覗き見する。

「ねぇ、もうおしまいなの?」

さすがに相手がまるで玩具を弄るかのように自分を倒す有様を見て表情を変え立ち上がる。その目には闘志と憎悪が宿っていた。

「奇怪な術を使うようだな!」

別に術というほどのものでもないが。

その後はちょっと膠着状態となる。相手は何を持っているのか分からないためだ。だが、それもほんの僅か。再び全力の攻撃を繰り出してくる。先ほどと全く同じだ。僕は相手の懐に潜り込んで武器の勢いそのままに投げる。ドターンと巨体が投げ飛ばされた。

「!!?」

相手は再び驚きの表情となる。あんな子供に自分が投げ飛ばされたことが理解できないようだ。

「ねぇ、もうおしまいなの?」

同じ問いを繰り返す。

その後も何度か攻防が繰り広げられたが結果は変わらなかった。

「ねぇ、もうおしまいなの?」

「こ、このクソガキがぁ!」

こちらはまだ武器すら抜いてないのにこれではもうどうしようもないだろう。相手はここで体格の差を利用して組み合う作戦に出た。無理矢理抱き潰す気だ。こんな男に抱き着かれても何も感じないが。

「ぐぬぬぬぬぬぬ!」

相手は全身全霊を持って抱き潰そうとするがそれはまるで巨大な大樹を握りしめているかのようにビクともしない。うざったいので無理矢理引きちぎり掌底打で突き飛ばす。

「!!?」

相手はまだ意識を保っていた。

「ねぇ、もうおしまいなの?」

繰り返される問いに返事が出来ない相手、ああ、もういいだろう。ここまでされてなお敗北を認めないというなら玩具は玩具として利用させてもらうことにした。

「これでおしまい?じゃ、こんどはわたしがあそぶばんだね」
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