51 / 87
おこぼれにありつこうとする連中 5
しおりを挟む
僕が預かっている灰色級初心者冒険者共は着実に成長を続けパーティを組めばゴブリンの巣穴ぐらいなら何とかなる段階まで来ていた。もうちょっとすればレクチャーは切り上げていいはずだ。
彼らに付いていた悪い虫も大分潰し終わってしまったのでそろそろ本業に戻ろうとするのだが。
『え?もう少ししたらレクチャーは終わり、ですかぁ。そんなぁ、ずっと付いていきたいです。愛人扱いでもいいですから』
こらこら、君たちの本業は冒険者、でしょ。僕の愛人なんてやろうとするものじゃないんだから。なんだか今にも捨てられそうな愛玩動物、のような目で訴えてくる。僕はそれに思うところがないわけじゃないが自力でやっていきたいならもうここで終了だ。甘やかすと自立出来ないのは自然の営みだ。家の中で一生を終えるのなら別だけど。
保護下にある動物の光景は微笑ましいが僕はあいにく彼ら彼女らを飼う気は一切ない。何度も言うが一切ない。自然に育つのが好きなのだ。
後は地道に草の根活動を続けて行けばいい、それでも死ぬときは死ぬが、そういう運命が世界の現実だ。
だが、彼らは諦めようとしていないことに気づいた。特に女の子たちは必死の形相である。僕の個室に無断侵入しようとさえしていた。
「やめてよね。もう自力でやっていけるぐらいにはなったんだからさぁ」
『嫌です。傍においてください。尽くしますから』
「冒険者の本業はどうするつもり?」
『貴方の愛人になれば万事解決です』
「だーかーらー、人生は真面目に考えてよね」
『本気で考えた結論がそれなのです』
これ以上は埒が明かないと判断して正規のメンバー以外全員をコテージから強制的に弾き飛ばすことにした。突然コテージの中から放り出された全員が強引にでも入ろうとするが魔法の門が立ちはだかる。
「皆、すまないけど彼らを安全な場所に連れて行ってあげて。お駄賃あげるから」
仲間に手間を取らせるが仕方がない。
「甘やかすときりがないのはどこも同じなんだね」「愛玩動物なら別にかまいませんがさすがにあれを飼うというのは」
ミーアとエメリアは同族達の要求に辟易していた。
「寛大な心も相手を見て選ばねば悪い方向に進むということですな」「あいつら、自分らがお情けで面倒を見てもらっていること絶対勘違いしてますね」
バーゼルとシェリルもこれだからコネや縁故採用が馬鹿げていてその付き添いまで迷惑をこうむると嘆いた。
「神の恵みを全てに与える必要などない、それだけです」「いやはや、奴らの頭の中どうなってるんだろうねー」
ラグリンネとエトナも不埒な行いをまかり通そうとする連中に嫌気を見せる。
そして仲間全員からの一言。
『貴方が甘やかすから奴らが調子に乗るんですよ。無自覚にもほどがあります』
いや、そんなに甘やかしたのか?別に普通のことをしただけだしキツめに振舞ったはずだ。なぜか仲間全員からの視線が痛い。そんな目で見ないで欲しいのだけど。
「ともかく、リーダーは迂闊に外に出ないように」
「いや、それはちょっと」
『い・い・で・す・ね』
「……はい」
全員から指差しされて宣言される。その後は追い出した連中の対応は仲間らに任せることにした。というか、あまり迂闊に相手をするなとの厳命だ。仲間からの圧力に屈した。ちと寂しく感じるがあの手合いを相手にするよりかは大分気持ちが楽なのかは確かなので反論できない。
仲間たちが帰ってきてようやく次の段階に進める…はずであったのだが。
『先生!助けてください。故郷の部族氏族が私達の責任を問うために武装してやってきたんです。このままじゃ皆殺しにされてしまいます!』
やぁーっぱりというか、一族を纏める長が送り出した人物を自滅とはいえ強制労働所送りにした問題が出現した。その問題はもう「人選が悪かった」で大体終わっているはずなのにいまだに騒ぐ連中がいたのだ。彼らは今冒険者ギルドの建物に押しかけて来て要求を押し通そうとしているらしい。
あーもう、クソい連中の後始末のことでここまで引っ張りまわされていては身が持たないぞ。急ぎ建物まで向かうと双方武器を抜き臨戦状態寸前の状況だった。
「落ち着きなさい。説明を求めます」「うるせぇ、大事な一族を強制労働送りにしやがって」
双方とももう一触即発状態だ。
「《労りの花薬》」
とりあえず、気分を落ち着かせるために花の香りを充満させて落ち着かせる。それで双方とも血の気が少し収まったのか何とか話し合いは出来そうだった。
「で、用件は何ですか。こっちも忙しいんですよ」
「決まっているだろ。強制労働送りにされた同胞の無条件解放とその賠償金の支払いだ。あと、無能な同族の正式な罪状の有無を問う」
やっぱりその話になるのか。相手側からすれば理不尽な内容だろうな、そのあたりの正確な情報がまるで伝わってないかあるいは勘違いしたのか。
「正式な書類は送りましたよね。それが事実です」
「ふざけるな。我ら部族氏族は古より優秀な血筋を引き継いでいる。それが無能呼ばわりとは聞き捨てならんぞ」
「あなた方の里ではどのようにして秩序が成り立っているのかは存じませんが世間一般では無能なんですよ」
「かつて戦場で勇敢に戦い数々の勝利を挙げてきた我らが無能?はっ、これだから役人風情は見る目がない」
明らかに相手を侮る態度。確かに役人と言えば役人だが受付嬢も職員も各地から選抜され様々な難関を潜り抜けてきたエリート達だ。下手な富豪よりも権限が強い。部族氏族からすれば「小難しい言葉を使う下っ端」そんな認識なのだろう。
世界から遅れているのはこちらではなくそちらなのだと明言してるも同じだ。力こそが正義と唱える彼らには言葉の重要性の認識とコミュニケーションのやり方が蛮族丸出しである。
それはそれでいいかもしれないが通る相手を選ばないと宣戦布告と捉えかねないことを理解していない。彼らは冒険者ギルドに喧嘩を売っているのだ。実にすがすがしい馬鹿である。
「ともかく、こちらが言うべきことは言いました。後はそちらで対応してください」
「なぜ強者である我らが弱者である貴様らに従わねばならんのだ。ここまで来てあれやこれやというのは無意味だな」
決闘だ!大勢が声高に叫ぶ。
決闘の本質は自力救済を旨とする古代社会のしきたりだが今の時代には合うものではない。やはり蛮族である。もうこれ以上は話し合うのは無意味と判断したのは冒険者ギルドも同じのようだ。後日場所と相手を決めて決闘を行いどちらが正しいのかを証明する。クソくだらないが。
「決闘、受けてもらえませんか?」
やはりというか、僕に白羽の矢が飛んで来た。
「…奴らの蛮族丸出し根性はある意味ではすごいと思うけど今の時代にあんな要求が通るとでも考えてるとは信じられない。ま、レクチャーの期間はまだ終わってないから受けようと思えば受けれるけど」
奴らがゴネた場合が問題だ。ここに来ている全員を皆殺しにするまで戦闘を続行とかにまで行くと部族氏族の内輪もめに油を注ぐ事態にもなりかねない。しかるべき審査役監督役を用意してほしいと頼む。
「大変に申し訳ありませんが相手を殺してはいけません」
「決闘は基本生死を問わずだよね。なんで?」
「ちょっと誤解があるようですね。殺してはなりませんが苦痛を与えてはいけないという決まりはありません。ですから、まぁ、ちょっとばかり地獄を彷徨わせてくださればありがたいと」
ふーん、あの手の部族氏族の蛮族丸出し根性で力こそが正義だという言い分に困っているようだ。それは間違いではないが相手を選ばず好き勝手に使うため戒めておく必要があると。強者に従うのが秩序だと言うのならばそれをこちらが使っても問題はないよな。そういう事らしい。
後日、その決闘が開始される。
「ハハハっ。なんだぁ、あの子供は。訳の分からん道化師のような男とも女とも分からないそれも戦士を侮辱するかのような服装は初めてだ。いいぜぇ、楽には死なせてやれんぞ」
頭には小さな帽子を被り、フリフリヒラヒラした幼い女子用の服に足元を小さく可愛い革製の靴を履いている僕を見て敵はやる気が削がれているようだ。
えーっと、典型的な戦斧と革製の鎧とチェインメイルの複合、足元もきっちりしている。頭部には耳飾りがついているがまぁそれだけだ。古式ゆかしい戦士の装備だ。イヴラフグラ《富と咎を成すもの》を抜くまでもない。ちょっと強化した鉄の剣で十分だ。
開始の時刻となり鐘が鳴る。
即座に相手は全力の攻撃を仕掛けてくる。右肩からの袈裟切りだ。あの質量でそれを食らえば即死は間違いないはず、であるが。
(クソつまらん。確かに全力攻撃なのは間違いないが初手で仕掛ける攻撃じゃないだろ)
もう少し牽制し合う展開を描いていた僕だが相手はさっさと決着を付けたいようだ。はぁー、しゃーないか。体の陰の部分、それを指先でちょっと突くと相手は後方に倒れてしまう。
「!!?」
相手は突然体が後方に倒されたことに驚いていた。それを僕は相手の顔を覗き見する。
「ねぇ、もうおしまいなの?」
さすがに相手がまるで玩具を弄るかのように自分を倒す有様を見て表情を変え立ち上がる。その目には闘志と憎悪が宿っていた。
「奇怪な術を使うようだな!」
別に術というほどのものでもないが。
その後はちょっと膠着状態となる。相手は何を持っているのか分からないためだ。だが、それもほんの僅か。再び全力の攻撃を繰り出してくる。先ほどと全く同じだ。僕は相手の懐に潜り込んで武器の勢いそのままに投げる。ドターンと巨体が投げ飛ばされた。
「!!?」
相手は再び驚きの表情となる。あんな子供に自分が投げ飛ばされたことが理解できないようだ。
「ねぇ、もうおしまいなの?」
同じ問いを繰り返す。
その後も何度か攻防が繰り広げられたが結果は変わらなかった。
「ねぇ、もうおしまいなの?」
「こ、このクソガキがぁ!」
こちらはまだ武器すら抜いてないのにこれではもうどうしようもないだろう。相手はここで体格の差を利用して組み合う作戦に出た。無理矢理抱き潰す気だ。こんな男に抱き着かれても何も感じないが。
「ぐぬぬぬぬぬぬ!」
相手は全身全霊を持って抱き潰そうとするがそれはまるで巨大な大樹を握りしめているかのようにビクともしない。うざったいので無理矢理引きちぎり掌底打で突き飛ばす。
「!!?」
相手はまだ意識を保っていた。
「ねぇ、もうおしまいなの?」
繰り返される問いに返事が出来ない相手、ああ、もういいだろう。ここまでされてなお敗北を認めないというなら玩具は玩具として利用させてもらうことにした。
「これでおしまい?じゃ、こんどはわたしがあそぶばんだね」
彼らに付いていた悪い虫も大分潰し終わってしまったのでそろそろ本業に戻ろうとするのだが。
『え?もう少ししたらレクチャーは終わり、ですかぁ。そんなぁ、ずっと付いていきたいです。愛人扱いでもいいですから』
こらこら、君たちの本業は冒険者、でしょ。僕の愛人なんてやろうとするものじゃないんだから。なんだか今にも捨てられそうな愛玩動物、のような目で訴えてくる。僕はそれに思うところがないわけじゃないが自力でやっていきたいならもうここで終了だ。甘やかすと自立出来ないのは自然の営みだ。家の中で一生を終えるのなら別だけど。
保護下にある動物の光景は微笑ましいが僕はあいにく彼ら彼女らを飼う気は一切ない。何度も言うが一切ない。自然に育つのが好きなのだ。
後は地道に草の根活動を続けて行けばいい、それでも死ぬときは死ぬが、そういう運命が世界の現実だ。
だが、彼らは諦めようとしていないことに気づいた。特に女の子たちは必死の形相である。僕の個室に無断侵入しようとさえしていた。
「やめてよね。もう自力でやっていけるぐらいにはなったんだからさぁ」
『嫌です。傍においてください。尽くしますから』
「冒険者の本業はどうするつもり?」
『貴方の愛人になれば万事解決です』
「だーかーらー、人生は真面目に考えてよね」
『本気で考えた結論がそれなのです』
これ以上は埒が明かないと判断して正規のメンバー以外全員をコテージから強制的に弾き飛ばすことにした。突然コテージの中から放り出された全員が強引にでも入ろうとするが魔法の門が立ちはだかる。
「皆、すまないけど彼らを安全な場所に連れて行ってあげて。お駄賃あげるから」
仲間に手間を取らせるが仕方がない。
「甘やかすときりがないのはどこも同じなんだね」「愛玩動物なら別にかまいませんがさすがにあれを飼うというのは」
ミーアとエメリアは同族達の要求に辟易していた。
「寛大な心も相手を見て選ばねば悪い方向に進むということですな」「あいつら、自分らがお情けで面倒を見てもらっていること絶対勘違いしてますね」
バーゼルとシェリルもこれだからコネや縁故採用が馬鹿げていてその付き添いまで迷惑をこうむると嘆いた。
「神の恵みを全てに与える必要などない、それだけです」「いやはや、奴らの頭の中どうなってるんだろうねー」
ラグリンネとエトナも不埒な行いをまかり通そうとする連中に嫌気を見せる。
そして仲間全員からの一言。
『貴方が甘やかすから奴らが調子に乗るんですよ。無自覚にもほどがあります』
いや、そんなに甘やかしたのか?別に普通のことをしただけだしキツめに振舞ったはずだ。なぜか仲間全員からの視線が痛い。そんな目で見ないで欲しいのだけど。
「ともかく、リーダーは迂闊に外に出ないように」
「いや、それはちょっと」
『い・い・で・す・ね』
「……はい」
全員から指差しされて宣言される。その後は追い出した連中の対応は仲間らに任せることにした。というか、あまり迂闊に相手をするなとの厳命だ。仲間からの圧力に屈した。ちと寂しく感じるがあの手合いを相手にするよりかは大分気持ちが楽なのかは確かなので反論できない。
仲間たちが帰ってきてようやく次の段階に進める…はずであったのだが。
『先生!助けてください。故郷の部族氏族が私達の責任を問うために武装してやってきたんです。このままじゃ皆殺しにされてしまいます!』
やぁーっぱりというか、一族を纏める長が送り出した人物を自滅とはいえ強制労働所送りにした問題が出現した。その問題はもう「人選が悪かった」で大体終わっているはずなのにいまだに騒ぐ連中がいたのだ。彼らは今冒険者ギルドの建物に押しかけて来て要求を押し通そうとしているらしい。
あーもう、クソい連中の後始末のことでここまで引っ張りまわされていては身が持たないぞ。急ぎ建物まで向かうと双方武器を抜き臨戦状態寸前の状況だった。
「落ち着きなさい。説明を求めます」「うるせぇ、大事な一族を強制労働送りにしやがって」
双方とももう一触即発状態だ。
「《労りの花薬》」
とりあえず、気分を落ち着かせるために花の香りを充満させて落ち着かせる。それで双方とも血の気が少し収まったのか何とか話し合いは出来そうだった。
「で、用件は何ですか。こっちも忙しいんですよ」
「決まっているだろ。強制労働送りにされた同胞の無条件解放とその賠償金の支払いだ。あと、無能な同族の正式な罪状の有無を問う」
やっぱりその話になるのか。相手側からすれば理不尽な内容だろうな、そのあたりの正確な情報がまるで伝わってないかあるいは勘違いしたのか。
「正式な書類は送りましたよね。それが事実です」
「ふざけるな。我ら部族氏族は古より優秀な血筋を引き継いでいる。それが無能呼ばわりとは聞き捨てならんぞ」
「あなた方の里ではどのようにして秩序が成り立っているのかは存じませんが世間一般では無能なんですよ」
「かつて戦場で勇敢に戦い数々の勝利を挙げてきた我らが無能?はっ、これだから役人風情は見る目がない」
明らかに相手を侮る態度。確かに役人と言えば役人だが受付嬢も職員も各地から選抜され様々な難関を潜り抜けてきたエリート達だ。下手な富豪よりも権限が強い。部族氏族からすれば「小難しい言葉を使う下っ端」そんな認識なのだろう。
世界から遅れているのはこちらではなくそちらなのだと明言してるも同じだ。力こそが正義と唱える彼らには言葉の重要性の認識とコミュニケーションのやり方が蛮族丸出しである。
それはそれでいいかもしれないが通る相手を選ばないと宣戦布告と捉えかねないことを理解していない。彼らは冒険者ギルドに喧嘩を売っているのだ。実にすがすがしい馬鹿である。
「ともかく、こちらが言うべきことは言いました。後はそちらで対応してください」
「なぜ強者である我らが弱者である貴様らに従わねばならんのだ。ここまで来てあれやこれやというのは無意味だな」
決闘だ!大勢が声高に叫ぶ。
決闘の本質は自力救済を旨とする古代社会のしきたりだが今の時代には合うものではない。やはり蛮族である。もうこれ以上は話し合うのは無意味と判断したのは冒険者ギルドも同じのようだ。後日場所と相手を決めて決闘を行いどちらが正しいのかを証明する。クソくだらないが。
「決闘、受けてもらえませんか?」
やはりというか、僕に白羽の矢が飛んで来た。
「…奴らの蛮族丸出し根性はある意味ではすごいと思うけど今の時代にあんな要求が通るとでも考えてるとは信じられない。ま、レクチャーの期間はまだ終わってないから受けようと思えば受けれるけど」
奴らがゴネた場合が問題だ。ここに来ている全員を皆殺しにするまで戦闘を続行とかにまで行くと部族氏族の内輪もめに油を注ぐ事態にもなりかねない。しかるべき審査役監督役を用意してほしいと頼む。
「大変に申し訳ありませんが相手を殺してはいけません」
「決闘は基本生死を問わずだよね。なんで?」
「ちょっと誤解があるようですね。殺してはなりませんが苦痛を与えてはいけないという決まりはありません。ですから、まぁ、ちょっとばかり地獄を彷徨わせてくださればありがたいと」
ふーん、あの手の部族氏族の蛮族丸出し根性で力こそが正義だという言い分に困っているようだ。それは間違いではないが相手を選ばず好き勝手に使うため戒めておく必要があると。強者に従うのが秩序だと言うのならばそれをこちらが使っても問題はないよな。そういう事らしい。
後日、その決闘が開始される。
「ハハハっ。なんだぁ、あの子供は。訳の分からん道化師のような男とも女とも分からないそれも戦士を侮辱するかのような服装は初めてだ。いいぜぇ、楽には死なせてやれんぞ」
頭には小さな帽子を被り、フリフリヒラヒラした幼い女子用の服に足元を小さく可愛い革製の靴を履いている僕を見て敵はやる気が削がれているようだ。
えーっと、典型的な戦斧と革製の鎧とチェインメイルの複合、足元もきっちりしている。頭部には耳飾りがついているがまぁそれだけだ。古式ゆかしい戦士の装備だ。イヴラフグラ《富と咎を成すもの》を抜くまでもない。ちょっと強化した鉄の剣で十分だ。
開始の時刻となり鐘が鳴る。
即座に相手は全力の攻撃を仕掛けてくる。右肩からの袈裟切りだ。あの質量でそれを食らえば即死は間違いないはず、であるが。
(クソつまらん。確かに全力攻撃なのは間違いないが初手で仕掛ける攻撃じゃないだろ)
もう少し牽制し合う展開を描いていた僕だが相手はさっさと決着を付けたいようだ。はぁー、しゃーないか。体の陰の部分、それを指先でちょっと突くと相手は後方に倒れてしまう。
「!!?」
相手は突然体が後方に倒されたことに驚いていた。それを僕は相手の顔を覗き見する。
「ねぇ、もうおしまいなの?」
さすがに相手がまるで玩具を弄るかのように自分を倒す有様を見て表情を変え立ち上がる。その目には闘志と憎悪が宿っていた。
「奇怪な術を使うようだな!」
別に術というほどのものでもないが。
その後はちょっと膠着状態となる。相手は何を持っているのか分からないためだ。だが、それもほんの僅か。再び全力の攻撃を繰り出してくる。先ほどと全く同じだ。僕は相手の懐に潜り込んで武器の勢いそのままに投げる。ドターンと巨体が投げ飛ばされた。
「!!?」
相手は再び驚きの表情となる。あんな子供に自分が投げ飛ばされたことが理解できないようだ。
「ねぇ、もうおしまいなの?」
同じ問いを繰り返す。
その後も何度か攻防が繰り広げられたが結果は変わらなかった。
「ねぇ、もうおしまいなの?」
「こ、このクソガキがぁ!」
こちらはまだ武器すら抜いてないのにこれではもうどうしようもないだろう。相手はここで体格の差を利用して組み合う作戦に出た。無理矢理抱き潰す気だ。こんな男に抱き着かれても何も感じないが。
「ぐぬぬぬぬぬぬ!」
相手は全身全霊を持って抱き潰そうとするがそれはまるで巨大な大樹を握りしめているかのようにビクともしない。うざったいので無理矢理引きちぎり掌底打で突き飛ばす。
「!!?」
相手はまだ意識を保っていた。
「ねぇ、もうおしまいなの?」
繰り返される問いに返事が出来ない相手、ああ、もういいだろう。ここまでされてなお敗北を認めないというなら玩具は玩具として利用させてもらうことにした。
「これでおしまい?じゃ、こんどはわたしがあそぶばんだね」
0
あなたにおすすめの小説
スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~
榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。
彼はその日から探索者――シーカーを目指した。
そして遂に訪れた覚醒の日。
「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」
スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。
「幸運の強化って……」
幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。
そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。
そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。
だが彼は知らない。
ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。
しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。
これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚
熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。
しかし職業は最強!?
自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!?
ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。
空手馬鹿の俺が転生したら規格外の治癒士になっていた 〜筋力Eのひ弱少年治癒士が高みを目指す!?〜
くまみ
ファンタジー
前世は空手部主将の「ゴリラ」男。転生先は……筋力Eのひ弱な少年治癒士!?
「資質がなんだ!俺の拳は魔法を超える!……と、思うけど……汗」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺は五里羅門(ごり・らもん) 35歳独身男だ。硬派すぎて女が寄り付かず。強すぎる空手愛と鍛え抜かれた肉体のせいで不本意ながら通称「ゴリラ」と呼ばれていた。
仕事帰りにダンプに跳ねられた俺が目覚めると、そこは異世界だった。だが転生した姿は前世とは真逆。
病弱で華奢。戦闘力最低と言われる職業の「治癒士」(ヒーラー)適正の10歳の少年・ノエル。
「俺は戦闘狂だぞ!このひ弱な体じゃ、戦えねぇ!
「華奢でひ弱な体では、空手技を繰り出すのは夢のまた夢……」
魔力と資質が全てのこの世界。努力では超えられない「資質の壁」が立ちふさがる。
だが、空手馬鹿の俺の魂は諦めることを知らなかった。
「魔法が使えなきゃ、技で制す!治癒士が最強になっちゃいけないなんて誰が決めた?」
これは魔法の常識を「空手の技」で叩き壊す、一人の少年の異世界武勇伝。
伝説の騎士、美少女魔術師、そして謎の切り株(?)を巻き込み、ノエルの規格外の挑戦が今始まる!
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
主人公に殺されるゲームの中ボスに転生した僕は主人公とは関わらず、自身の闇落ちフラグは叩き折って平穏に勝ち組貴族ライフを満喫したいと思います
リヒト
ファンタジー
不幸な事故の結果、死んでしまった少年、秋谷和人が転生したのは闇落ちし、ゲームの中ボスとして主人公の前に立ちふさがる貴族の子であるアレス・フォーエンス!?
「いや、本来あるべき未来のために死ぬとかごめんだから」
ゲームの中ボスであり、最終的には主人公によって殺されてしまうキャラに生まれ変わった彼であるが、ゲームのストーリーにおける闇落ちの運命を受け入れず、たとえ本来あるべき未来を捻じ曲げてても自身の未来を変えることを決意する。
何の対策もしなければ闇落ちし、主人公に殺されるという未来が待ち受けているようなキャラではあるが、それさえなければ生まれながらの勝ち組たる権力者にして金持ちたる貴族の子である。
生まれながらにして自分の人生が苦労なく楽しく暮らせることが確定している転生先である。なんとしてでも自身の闇落ちをフラグを折るしかないだろう。
果たしてアレスは自身の闇落ちフラグを折り、自身の未来を変えることが出来るのか!?
「欲張らず、謙虚に……だが、平穏で楽しい最高の暮らしを!」
そして、アレスは自身の望む平穏ライフを手にすることが出来るのか!?
自身の未来を変えようと奮起する少年の異世界転生譚が今始まる!
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる