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雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』その(2)対戦カード発表。
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沼田のオフィスからの帰り道。
堂島は色々頭を悩ませていた。それも当然だ、、確かにこれだけの高条件ならば、人間が相手なら誰とでもどんなルールでも戦う。そう沼田の前で豪語した。その相手が、まさか “女性” だなんて頭の隅にもなかったからだ。
堂島は古風な考え方の持ち主だ。
『男』というものに拘っていた。
“男は強くあらねばならない!そして女を守るのが男の役目だ”
そんな男と女が、リング上で相対して拳を交え闘うなんて...。
堂島には考えられないことで、自分の拳は女を守るものであって殴るものではない。男女平等、ジェンダーレスの時代とはいっても、それとこれとは別の問題だろう? その考えだけは譲れない。女のくせに、男と戦おうとする山吹望という少女が腹立たしくもある。
少女? そう、、彼女は女性、それもまだ17才の女子高生にすぎないのだ。
子どもじゃないか、、そんな女の子と俺はリング上で真剣勝負するというのだろうか? 本気か? バカバカしい。
でも、現実的に考えてオファーは断われないほど話は進んでいる。違約金を払ってもらいますよ...という沼田の言葉は脅しではないかもしれない。
それに、どうしても堂島には多額の借金がありお金が必要。家族を路頭に迷わすことなんて絶対にできない。
勝者にはファイトマネー以外に、特別賞金を出しますだって?
バカ言っちゃいけない。常識的に考えて勝つのは自分に決まってるじゃないか!俺が女子高生に負けることも想定してるっていうことか? そんなこと、万が一でもあり得ない。
問題は女の子を俺が殴れるのか? 蹴ることが出来るのか?だろう。
試合を断ることは出来ない。ならば、のらりくらりと適当にあしらうしかないだろう。そんな考えが浮かんだ。
家に帰ると龍太が駆け寄ってきた。
「父ちゃん! お帰り~、試合決まったんだよね? 誰が相手なの?」
「うん、決まったよ..:。でも、対戦相手は、例え家族であっても正式発表まで言っちゃいけないんだ」
「ええ~! 僕は誰にも言わないから、そっと教えてよ...」
「9月になったら、マスコミを通して正式に発表があるから、それまで待っていなさい。分かったね?」
龍太は不満そうにしていたが、それより父が不機嫌そうなのが気になった。
「あなた、冴えない顔してるけど、沼田さんとの交渉で何かあったの?」
女のカンは鋭い。
妻は堂島の顔色を窺っている。
「いや、そういうことじゃないんだ。試合は行われる。そして、約束通りのギャラも入るし、勝った方は更に高額の賞金が出るそうだ」
「それならいいけど...」
そんなやり取りを娘の麻美が、ポカーンとした表情で見ていた。
こんな愛する家族を路頭に迷わすわけにはいかない。それは男としての責任であり、多額の借金は自分が招いたものだ。この試合から逃げるわけにはいかない。それに、女の子相手に負けるはずもなく、ギャラの他に多額の賞金も手に入るだろう。
しかし、妻や子どもたちは、夫の、父の、、その対戦相手が女性であり、しかも17才の女子高生だと知ったらどう思うだろうか?
特に息子の龍太には “男はどんなことがあっても、女の子に手を上げちゃいけない。それは恥ずかしいこと” と、強く教えてきたのだ。
そんな父が、神聖なるリング上で女の子と本気で戦うのだ。しかも、大晦日の全国生中継でその試合は行われる。
堂島はまた頭を抱えた。
その夜。
妻の書棚にあのファッション雑誌が見えたので、手に取ってみた。
NOZOMI特集が、写真付きで組まれていた。これが山吹望なのか?
35にもなる堂島が見てもゾクゾクするような美女、否、美少女だ。
それが、水着や様々なファッションで躍動している。すごいオーラだ。
(自分はこんな女の子と戦うのか?)
身長180 体重57~58Kgと記載されているが、柔術等の大会では3~4Kg増量するのだと言う。
堂島との試合は62Kg以下ということであるがそれにしても細い。
堂島を驚かせたのは、180という身長よりその手足の長さだ。八頭身美人とはこういう女を言うのだろう。
172の堂島よりかなり背が高く、手足は更に長いのでリーチ差は歴然。その手足が縦横無尽に伸び、キックにパンチ、相手をつかまえると執拗に手足を巻き付け締め上げ関節を破壊する。
そう、沼田のオフィスで見た格闘技雑誌には紹介されていた。
「女子高生は殴れないなんて考えで試合に臨むと、アナタが失神KO負けしますよ!堂島さん...」
沼田はそんなことを言っていた。
バカ言っちゃいけない! 自分が女の子になんて負けるはずがない。
それより、あんな美しい脚に自分のローキックを当てたら? あの可愛い顔にパンチを炸裂させたら?
残酷ショーになってしまう...。
堂島が所属するキックボクシング団体『S』は、キック部門の他に総合部門もあり、そこで組技(クラップリング)系のトレーナーをしている岩崎という男がいる。堂島も過去に総合ルールで戦った経緯があり岩崎に指導を受けている。又、同世代ということもあって個人的にも仲が良い。
「堂島さん、ここのところ身が入ってませんね。大晦日なんてすぐやってきますよ。どうしたんですか?」
岩崎は堂島が大晦日に総合ルールで戦うことは知っており、そのルールに対応するための指導中。
しかし、堂島は練習に身が入らない。何か悩んでいるような様子なのだ。
「岩崎さん、ちょっと話がある...」
本当は正式発表まで口外してはならないのだが、堂島は岩崎なら信用できると思い、苦しい胸の内を明かした。
岩崎は黙って堂島の話を聞いていた。
「そうですか、、対戦相手は女性なんですか? それも女子高生だなんて、やりにくいでしょうね...」
「やりにくいも何も、自分は女の子は殴れませんよ。どうしていいのか...」
「う~ん、、でも、羨ましいほどの高額ギャラじゃないですか。アナタが大きな借金を抱えているのは知っていましたし、心配していたんです。これで借金は返済できますね?」
「はい! その点は願ってもない話で、妻も喜んでいるのですが...」
「でも、妙だなぁ、、NOZOMIといえば大人気モデルで、女子格闘技界でもとんでもない才能の持ち主だという噂は耳にしています。主催者側としても彼女をスーパーヒロインとして売り出したいはずですよね。そのためには絶対勝たなくては意味がない」
「・・・・」
「堂島さん。 プロレスでいうところの “負けブック” は依頼されませんでしたよね? 真剣勝負で戦えと?」
「はい! ベストコンディションに仕上げてガチで戦ってくれと。油断するとアナタがKO負けするよ!なんて、男をバカにするようなことまで言ってましたよ。ハハハ!」
「そこなんですよ、会社にしてみれば彼女に負けてもらっては絶対困る。それなのに、対戦相手に男子を選ぶ理由は何でしょうか? しかも真剣勝負でやれと? つまり...」
「つまり?」
岩崎はそれ以上は何も言わない。
「堂島さん、あてがありますので、私の方でもNOZOMIのことを色々調べてみます。格闘技での彼女の天才性はベールに包まれてますからね...」
岩崎は最後にそう言うと席を立った。
9月の中頃になった。
その日、ある会場にスポーツマスコミ各社が集められた。その中には、著名な芸能界関係者の顔も見える。
大晦日に行われる格闘技戦の対戦カードが、主催する『G』の方から正式に発表されるのだ。
試合は全12カード。
そして、10試合目、11試合目、12試合目の3カードをトリプル・メインと銘打ち派手に宣伝されてきた。
注目されるカードは?
日本総合格闘技界最強 渡瀬耕作が、柔道五輪金メダリスト 大田原慎二の挑戦を受ける大トリを飾る試合。
その前の第11試合目に行われるのは、大人気のキックボクサー、小天狗との異名を持つ ダン・嶋原が、本場ムエタイ現役王者 K・Sに挑戦するもの。
この2試合はカード発表前からマスコミの間からも噂されており想定内。
分からないのはトリプル・メイン第一試合、10戦目に行われる試合だ。
この試合はサプライズ・カードとも言われ、今日まで一部の関係者以外誰にも知らされず全くの謎。
分かっているのは、何でもありの総合ルールで行われ、勝者には高額の賞金が賭けられるというもの。大きなスポンサーがついたということだ。
実質、最も注目されるカードだろう。
そのカードが発表される。
マスコミ各社も期待を胸に緊張する。
「トリプル・メイン、第一試合目、サプライズ・カードを発表します! まずは、キックボクシング、元日本ライト級王者、ド根性、堂島源太郎!」
マスコミ各社から、落胆の声が漏れ聞こえてきた。
堂島源太郎は確かに “ド根性源太郎” のニックネームで、日本王者にもなりそこそこ人気もあるが、スーパースターではない。それに、もう最盛期を過ぎたキックボクサーなのだ。
そんな堂島の試合に、大きなスポンサーが付き、高額の賞金を出すほどの商品価値があるのだろうか?
「そして、堂島源太郎の相手は...。天才女子高生ファイター NOZOMI . ここに、世紀の異性異種格闘技戦が実現しまァーす!」
場内は静まり返った。
女子高生? NOZOMI? 何を言っているのか?それは誰なのか?という表情をしている者が多い。拍手をしているのは少数の芸能関係者のみ。
次の瞬間、場内がどよめいた。
女子格闘家としてのNOZOMIも知られてはいるが、彼女はモデルとしての方が有名なのだ。
「カリスマ女子高生モデルのNOZOMIのことじゃないか? まさか!」
男と女が賞金を賭けて真剣勝負? 無茶だ!という声が聞えてきた。
「質問です! 男女が同じリングで、何でもありという残酷なルールで戦わせるんですか? この試合はエキジビション的なショーで行われるんですか?」
そう、ムキになって、主催者側に質問する記者がいた。
「いえ! 賞金を賭けたシュートマッチです。ルールも、NOZOMI選手側の希望で、堂島選手も快く受けて下さいました。勿論、マウントからの打撃も、肘や膝もありです」
NOZOMI 程のネームバリューあれば、スポンサーも付くだろう。そんな美少女が、男子を相手にプロ格闘技界に殴り込みをかけようというのだ。
堂島源太郎 vsNOZOMI の試合は、翌日の各スポーツ紙にセンセーショナルに報じられることとなる。
堂島は色々頭を悩ませていた。それも当然だ、、確かにこれだけの高条件ならば、人間が相手なら誰とでもどんなルールでも戦う。そう沼田の前で豪語した。その相手が、まさか “女性” だなんて頭の隅にもなかったからだ。
堂島は古風な考え方の持ち主だ。
『男』というものに拘っていた。
“男は強くあらねばならない!そして女を守るのが男の役目だ”
そんな男と女が、リング上で相対して拳を交え闘うなんて...。
堂島には考えられないことで、自分の拳は女を守るものであって殴るものではない。男女平等、ジェンダーレスの時代とはいっても、それとこれとは別の問題だろう? その考えだけは譲れない。女のくせに、男と戦おうとする山吹望という少女が腹立たしくもある。
少女? そう、、彼女は女性、それもまだ17才の女子高生にすぎないのだ。
子どもじゃないか、、そんな女の子と俺はリング上で真剣勝負するというのだろうか? 本気か? バカバカしい。
でも、現実的に考えてオファーは断われないほど話は進んでいる。違約金を払ってもらいますよ...という沼田の言葉は脅しではないかもしれない。
それに、どうしても堂島には多額の借金がありお金が必要。家族を路頭に迷わすことなんて絶対にできない。
勝者にはファイトマネー以外に、特別賞金を出しますだって?
バカ言っちゃいけない。常識的に考えて勝つのは自分に決まってるじゃないか!俺が女子高生に負けることも想定してるっていうことか? そんなこと、万が一でもあり得ない。
問題は女の子を俺が殴れるのか? 蹴ることが出来るのか?だろう。
試合を断ることは出来ない。ならば、のらりくらりと適当にあしらうしかないだろう。そんな考えが浮かんだ。
家に帰ると龍太が駆け寄ってきた。
「父ちゃん! お帰り~、試合決まったんだよね? 誰が相手なの?」
「うん、決まったよ..:。でも、対戦相手は、例え家族であっても正式発表まで言っちゃいけないんだ」
「ええ~! 僕は誰にも言わないから、そっと教えてよ...」
「9月になったら、マスコミを通して正式に発表があるから、それまで待っていなさい。分かったね?」
龍太は不満そうにしていたが、それより父が不機嫌そうなのが気になった。
「あなた、冴えない顔してるけど、沼田さんとの交渉で何かあったの?」
女のカンは鋭い。
妻は堂島の顔色を窺っている。
「いや、そういうことじゃないんだ。試合は行われる。そして、約束通りのギャラも入るし、勝った方は更に高額の賞金が出るそうだ」
「それならいいけど...」
そんなやり取りを娘の麻美が、ポカーンとした表情で見ていた。
こんな愛する家族を路頭に迷わすわけにはいかない。それは男としての責任であり、多額の借金は自分が招いたものだ。この試合から逃げるわけにはいかない。それに、女の子相手に負けるはずもなく、ギャラの他に多額の賞金も手に入るだろう。
しかし、妻や子どもたちは、夫の、父の、、その対戦相手が女性であり、しかも17才の女子高生だと知ったらどう思うだろうか?
特に息子の龍太には “男はどんなことがあっても、女の子に手を上げちゃいけない。それは恥ずかしいこと” と、強く教えてきたのだ。
そんな父が、神聖なるリング上で女の子と本気で戦うのだ。しかも、大晦日の全国生中継でその試合は行われる。
堂島はまた頭を抱えた。
その夜。
妻の書棚にあのファッション雑誌が見えたので、手に取ってみた。
NOZOMI特集が、写真付きで組まれていた。これが山吹望なのか?
35にもなる堂島が見てもゾクゾクするような美女、否、美少女だ。
それが、水着や様々なファッションで躍動している。すごいオーラだ。
(自分はこんな女の子と戦うのか?)
身長180 体重57~58Kgと記載されているが、柔術等の大会では3~4Kg増量するのだと言う。
堂島との試合は62Kg以下ということであるがそれにしても細い。
堂島を驚かせたのは、180という身長よりその手足の長さだ。八頭身美人とはこういう女を言うのだろう。
172の堂島よりかなり背が高く、手足は更に長いのでリーチ差は歴然。その手足が縦横無尽に伸び、キックにパンチ、相手をつかまえると執拗に手足を巻き付け締め上げ関節を破壊する。
そう、沼田のオフィスで見た格闘技雑誌には紹介されていた。
「女子高生は殴れないなんて考えで試合に臨むと、アナタが失神KO負けしますよ!堂島さん...」
沼田はそんなことを言っていた。
バカ言っちゃいけない! 自分が女の子になんて負けるはずがない。
それより、あんな美しい脚に自分のローキックを当てたら? あの可愛い顔にパンチを炸裂させたら?
残酷ショーになってしまう...。
堂島が所属するキックボクシング団体『S』は、キック部門の他に総合部門もあり、そこで組技(クラップリング)系のトレーナーをしている岩崎という男がいる。堂島も過去に総合ルールで戦った経緯があり岩崎に指導を受けている。又、同世代ということもあって個人的にも仲が良い。
「堂島さん、ここのところ身が入ってませんね。大晦日なんてすぐやってきますよ。どうしたんですか?」
岩崎は堂島が大晦日に総合ルールで戦うことは知っており、そのルールに対応するための指導中。
しかし、堂島は練習に身が入らない。何か悩んでいるような様子なのだ。
「岩崎さん、ちょっと話がある...」
本当は正式発表まで口外してはならないのだが、堂島は岩崎なら信用できると思い、苦しい胸の内を明かした。
岩崎は黙って堂島の話を聞いていた。
「そうですか、、対戦相手は女性なんですか? それも女子高生だなんて、やりにくいでしょうね...」
「やりにくいも何も、自分は女の子は殴れませんよ。どうしていいのか...」
「う~ん、、でも、羨ましいほどの高額ギャラじゃないですか。アナタが大きな借金を抱えているのは知っていましたし、心配していたんです。これで借金は返済できますね?」
「はい! その点は願ってもない話で、妻も喜んでいるのですが...」
「でも、妙だなぁ、、NOZOMIといえば大人気モデルで、女子格闘技界でもとんでもない才能の持ち主だという噂は耳にしています。主催者側としても彼女をスーパーヒロインとして売り出したいはずですよね。そのためには絶対勝たなくては意味がない」
「・・・・」
「堂島さん。 プロレスでいうところの “負けブック” は依頼されませんでしたよね? 真剣勝負で戦えと?」
「はい! ベストコンディションに仕上げてガチで戦ってくれと。油断するとアナタがKO負けするよ!なんて、男をバカにするようなことまで言ってましたよ。ハハハ!」
「そこなんですよ、会社にしてみれば彼女に負けてもらっては絶対困る。それなのに、対戦相手に男子を選ぶ理由は何でしょうか? しかも真剣勝負でやれと? つまり...」
「つまり?」
岩崎はそれ以上は何も言わない。
「堂島さん、あてがありますので、私の方でもNOZOMIのことを色々調べてみます。格闘技での彼女の天才性はベールに包まれてますからね...」
岩崎は最後にそう言うと席を立った。
9月の中頃になった。
その日、ある会場にスポーツマスコミ各社が集められた。その中には、著名な芸能界関係者の顔も見える。
大晦日に行われる格闘技戦の対戦カードが、主催する『G』の方から正式に発表されるのだ。
試合は全12カード。
そして、10試合目、11試合目、12試合目の3カードをトリプル・メインと銘打ち派手に宣伝されてきた。
注目されるカードは?
日本総合格闘技界最強 渡瀬耕作が、柔道五輪金メダリスト 大田原慎二の挑戦を受ける大トリを飾る試合。
その前の第11試合目に行われるのは、大人気のキックボクサー、小天狗との異名を持つ ダン・嶋原が、本場ムエタイ現役王者 K・Sに挑戦するもの。
この2試合はカード発表前からマスコミの間からも噂されており想定内。
分からないのはトリプル・メイン第一試合、10戦目に行われる試合だ。
この試合はサプライズ・カードとも言われ、今日まで一部の関係者以外誰にも知らされず全くの謎。
分かっているのは、何でもありの総合ルールで行われ、勝者には高額の賞金が賭けられるというもの。大きなスポンサーがついたということだ。
実質、最も注目されるカードだろう。
そのカードが発表される。
マスコミ各社も期待を胸に緊張する。
「トリプル・メイン、第一試合目、サプライズ・カードを発表します! まずは、キックボクシング、元日本ライト級王者、ド根性、堂島源太郎!」
マスコミ各社から、落胆の声が漏れ聞こえてきた。
堂島源太郎は確かに “ド根性源太郎” のニックネームで、日本王者にもなりそこそこ人気もあるが、スーパースターではない。それに、もう最盛期を過ぎたキックボクサーなのだ。
そんな堂島の試合に、大きなスポンサーが付き、高額の賞金を出すほどの商品価値があるのだろうか?
「そして、堂島源太郎の相手は...。天才女子高生ファイター NOZOMI . ここに、世紀の異性異種格闘技戦が実現しまァーす!」
場内は静まり返った。
女子高生? NOZOMI? 何を言っているのか?それは誰なのか?という表情をしている者が多い。拍手をしているのは少数の芸能関係者のみ。
次の瞬間、場内がどよめいた。
女子格闘家としてのNOZOMIも知られてはいるが、彼女はモデルとしての方が有名なのだ。
「カリスマ女子高生モデルのNOZOMIのことじゃないか? まさか!」
男と女が賞金を賭けて真剣勝負? 無茶だ!という声が聞えてきた。
「質問です! 男女が同じリングで、何でもありという残酷なルールで戦わせるんですか? この試合はエキジビション的なショーで行われるんですか?」
そう、ムキになって、主催者側に質問する記者がいた。
「いえ! 賞金を賭けたシュートマッチです。ルールも、NOZOMI選手側の希望で、堂島選手も快く受けて下さいました。勿論、マウントからの打撃も、肘や膝もありです」
NOZOMI 程のネームバリューあれば、スポンサーも付くだろう。そんな美少女が、男子を相手にプロ格闘技界に殴り込みをかけようというのだ。
堂島源太郎 vsNOZOMI の試合は、翌日の各スポーツ紙にセンセーショナルに報じられることとなる。
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