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その4 失恋
しおりを挟む陽介からのメールは “おやすみ” だけの言葉に画像が添付されていた。
孝介は目を見張った。
そこには陽介扮した美少女が、こっちに向かって微少していた。
花柄のワンピースで清楚な感じが孝介の心をとらえた。
普段の陽介は内気で目立たない少年に過ぎないが、この少女に変身した陽介は表情豊かで自信に溢れている。
まるで “私を見て!” と、自己主張しているようで、どこからどう見ても少女でそれも飛びっきりの美少女だ。
「お兄ちゃん、見てくれた?」
翌日、朝食時に顔を合わせると小声でそう陽介は聞いてきた。
「あ、ああ、、」
「どうだった?」
そこへ母がやってきたので話はストップしたのだが、孝介はその日の仕事中に何度も陽介の女装写真を開いてはため息をついていた。
(陽介はなんで兄である自分にこんな写真を送ってきたんだ? このままじゃ、夢中になってしまう...)
「小林さん、ランチ一緒に食べに行こうよ。美味しいパスタを食べさせてくれる店知ってるんだ!」
「お! いいね」
入社した会社の同期で島村久子という女性がいる。彼女は屈託がなく何事にも積極的で美人と評判だ。
なぜか孝介とは気が合い急速に仲が良くなっていった。そんな孝介を周囲の男どもは羨ましがっていた。
(もう、彼女と言ってもいいかもしれないな。告白して結婚も考えたい...)
そんな日々が続いていた。
陽介からは相変わらず週に一回位のペースで女装写真が送られてくる。孝介は無関心を装い感想を述べることもないが、その実は送られて来るのを心待ちにしていた。それを悟られないためには興味のないフリをするのが一番。それと、翌年陽介は大学受験を控えているので女装癖も収まってきたのか?年が変わると写真も送られてくることもなくちょっぴり残念...。
そして、陽介は無事大学を現役で合格することが出来た。本当は兄である私の母校に行きたかったらしいのだが、希望通りでなくとも大学生になれたことは良かったと思う。
私も社会人二年目になり軽ながら自分の車をを持つことができ、それでたまに島村久子とドライブに行く。
「小林さんって、結構せックス上手いのね? 強引だし...」
ドライブ後にラブホテルに寄るとそこで初めて島村久子と結ばれた。
男にとってセックスを褒められることほど嬉しいことはない。
(そろそろプロポーズを考えてもいい頃だな? きっと喜んでもらえる...)
そんな時だった。
大学受験でしばらくなかった陽介からのメールが届いた。
私は陽介の女装画像、その美しさに驚嘆した。更に磨きがかかったようだ。
以前は単なる正統な美少女姿であったのがそこにセクシーさが加わった。
(こいつは島村久子より美しいのではな
いか?セクシーさは陽介が上だな...)
私はそんな妙なことを考えた。
それからは毎週のように画像付きメールが届くようになり、顔を合わせると挑発的な目を私に送っているような気がするのだ。
こんなことは絶対に言えないが、私は陽介の女装写真を見ながら自慰行為をしてしまうことしばしば。
そして自己嫌悪に陥る。
孝介は所謂ゲイでもバイでもなく、その傾向すらない。女性が大好きな孝介がなぜ陽介の女装姿に惹かれてしまうのだろうか?
女性とは別種のニューハーフの魅力?
その倒錯的な妖しさに惹かれることはある。男なのに何故こんなにセクシーなのだろうか? その不思議さ、その深淵をのぞいてみたい。
孝介はカラオケボックスで見た陽介の脚線美、そのヒップラインの残像が頭からどうしても離れないのだ。
写真だけでこんなに欲情してしまうのだから、目の前に女装の陽介がいたら良くないことをしてしまいそうだ。
彼は何度も飽きずに私に画像付きメールを送り続けるのだから何かを期待してのことだろう?
誘惑?? まさか...。
このままではおかしくなってしまう。
孝介は家で陽介とふたりきりにになった時、思い切って聞いてみた。
「陽介、度々メールを送ってくるけど
ずいぶんきれいになったな?」
「あ! お兄ちゃんもそう思う? 送っても送っても何も言ってくれないから迷惑なのかな?って思ってた」
「いや、迷惑じゃないけど、女装は趣味の範囲ならいいと思うし、それを他人に評価してもらいたいという気持ちも分かるよ。でもな...」
「でも、何?」
「お前も知ってると思うけど、オレには島村久子という彼女がいるんだ」
「それ、どういう意味?」
「どういう意味って、そういうことだよ。彼女とは結婚を考えてる」
陽介は信じられないといった表情で、私の顔をマジマジと見詰めていた。
「お兄ちゃん、そんなこと考えていたんだ? もしかして、お兄ちゃんは僕に誘惑されてると思ってたの?」
「い、いや、、、」
「だって、僕は女装することはあっても男だよ。しかも、お兄ちゃんと僕は血の繋がった実の兄弟だよ。そんなことあり得ないよ。只、僕はお兄ちゃんに女装した姿を褒めてもらいたいだけなんだよ。他に見てくれる人はいないからね。迷惑だった?」
「あ、ごめん」
「そう勘違いさせちゃったんなら僕の方こそごめんなさい。本音を言えば、
僕の写真でお兄ちゃんがオナニーしてくれたら嬉しいな(笑)。でもそこまでだよ。お兄ちゃんが結婚したら僕も嬉しいよ。頑張ってね! もうメール送らないから安心して...」
「あ、ああ、、」
私は陽介の女装画像で自慰行為を何度もしている。実の弟にそんないかがわしいことを妄想する自分は異常だ。
(もうメールは送ってこない?本当は毎回心待ちにしていたのに...)
それから数ヶ月後だった。
夏も終わりになる頃、島村久子が突然会社を辞めた。理由は社長の御曹司、江口部長との婚約であった。
小林孝介は失恋した。
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