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第一章 今も昔も変わらない
理想と現実と私と。
しおりを挟む田舎で生まれ育った私は田舎が大嫌いだった。当時子どもだった自分にはとても退屈する環境で、歳を取るにつれて都会への憧れを日々募らせていた。家族に泣きながら
「こんな所嫌! 絶対東京に行くんだから!」と宣言した事もあった。
現在二十四歳、東京丸の内で勤務する会社員だ。都会の中で生きる事は実に大変だった。ランチタイムになれば同僚たちと、新作のパンケーキやら行列の出来るお店だとか、ありとあらゆるお店を巡り聞きたくない話もたくさん聞いた。仕事は毎日残業続きでブラック企業もいいところだった。あの頃の都会への憧れなど、一つも感じられなくなり毎日をロボットの様に働いて過ごした。
ある日、いつもの様に残業を終えて帰り支度をしていると母親から電話が掛かってきた。何かあったのか?と不安に感じつつ、スマホの画面をタップする。
「もしもし? 母さんなんかあったと?」
心配をかけまいとなるべく明るい声で電話に出る。
「もしもし? あんた元気にしとると? 今年は忙しいみたいやね、こっちにも帰ってこんでから」
母親のいつ地元に戻ってくるのかと催促の電話だった。母親の声を聞いた瞬間、泣きそうになるのを堪えながら
「元気やけど母さんと父さんは元気?」そう聞くと明るい声で
「母さんと父さんも元気よ! 今年はいつ帰ってくると?」
そう聞かれた時、頭の中では仕事を辞めたいという感情しか浮かんでこなかった。
娘の私がいれば何かあった時に面倒も見られる。
周囲と自分のズレを感じながら、必死に生きることに疲れてしまった。涙が一粒溢れてしまえば、止まることはなかった。泣きじゃくりながら子どもの様に
「母さん・・・」と声をもらすと母はびっくりした声で
「なんかあっと?」と聞いてきた。
「私さ、この生活疲れちゃった・・・仕事辞めてそっち戻ろうって思っとる」そう伝えると安心させる様な声色で、
「疲れたんなら戻ってきなさい、ゆっくり生きればいいやない」
私は仕事を辞めた。
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