24 / 28
成功条件は、絶対に婚約阻止!!
2 側近カルの婚約事情
しおりを挟むベアトリス様が王家の機密情報捜査機関である通称『影』に私のことを調べさせたという発言に、私は顔には出さないように細心の注意を払ったが、頭の中は混乱していました。
(え? 影に調べさせた?! ちょっと、あの人たち何、無断で人のプライベートをこんな小さな子に教えちゃってるの?! でも、誕生日……そうか、今日か……忘れていたな)
私が動揺していると、殿下が少しだけ大きな声を出された。
「そういえば、今日はカルの誕生日か!! カル!! おめでとう!! いつもありがとう」
「……今年もお祝いの言葉を頂き、ありがとうございます」
私は殿下からの思いがけない言葉につい照れてしまった。殿下は思い出した時に、毎年私を祝って下さる。大抵はアリエッタ様のお誕生日のプレゼントを考える時に、「そう言えば、カルの誕生日は過ぎていたな……おめでとうカル」とお祝いを言って下さるが今年は初めて当日にお祝いの言葉を頂いたかもしれない。殿下にお祝いの言葉を直接、頂ける私は果報者であるのは間違いありません。
「ところでベアトリス、『影』を勝手に使ってはダメだろう?」
殿下は私にお祝いの言葉を下さった後、ベアトリス様の前に座ってお叱りになった。殿下に𠮟られてベアトリス様は俯いてしまった。
(ああ、ベアトリス様が悲しんでおられるが、殿下のお言葉をもっともだ。私にできることは見守ることだけだ。)
私はなぐさめたいと思ったが、殿下とのお話が終わるのをじっと待つことにしました。
すると泣いていたと思ったベアトリス様がお顔を上げたと思ったら、大きな声を出された。
「勝手にではございません。おじい様の許可は頂きましたわ!!」
「陛下の~~~??」
私は予想外の答えに思わず声を上げてしまいました。
国王陛下の『影』など国家の重大機密情報を握る影の中でもエリート中のエリート。
(私はもしかしてとんでもない人々にプライベートを調べられてしまったのだろうか?)
私が少しだけ震えていると、ベアトリス様は腰に手を当てて自信満々におっしゃった。
「はい。お願いしたら、すぐに『いいよ』と言って下さいましたわ」
「父上……なぜそのような許可を」
殿下が頭を抱えるとすぐにベアトリス様と目線を合わせ尋ねられた。
「それで、『影』に何を調べさせたんだい?」
するとベアトリス様が腰に手を当てたまま得意気におっしゃいました。
「もちろんのカルのお誕生日や、好きな食べ物、好きな飲み物、好きな色……」
(ふふふ。そんなのこと私に直接聞いてくれたらよかったのに……影の皆さんも微笑ましくて癒された仕事だったかもな)
普段、王族の『影』は情報の取得に命がけになることも珍しくはありません。
そんな殺伐とした中、まだ幼いベアトリス様からの依頼は癒しになったかもしれないと思い私は目を細めてしまいました。
殿下もそう思ったのか、隣で微笑ましそうに「うんうん」と聞いておられました。
そのうちにベアトリス様はドンドンと調べた内容を教えて下さいました。
「お休みの前の日は大抵、お手頃な果実酒を数本とチーズを買って帰って、休日は全く家から出ない引きこもりで、女の人とは全く会うこともない。
たまに場内に来る猫に触ろうとして逃げられて落ち込んでいるんでしょ?
身体も鍛えているし、顔もいいのに遊びにも行かないカルにみんな同情しているらしいわよ」
いつの間にか内容は全然微笑ましいものではなくなっていました……。
(う……さすが国王陛下の『影』!! でも、私は皆に同情されていたのか……それで皆が最近やけに優しいんだな……)
私が思わず遠い目をしていると、殿下の声が聞こえました。
「カル……そんな生活でいいのか?」
殿下に同情心溢れる眼差しで見つめられ、心を抉られるような痛みを感じましたが、私は笑うしかありません。そして、殿下は畳みかけるように私の肩を叩きながらおっしゃいました。
「私が絶対にいい婚約者を見つけてやるからな!!」
「それは……御親切に」
殿下の好意は嬉しかったが、『影』の皆さんに私のプライベートが筒抜けになったことに、がっかりと肩を落としながら力なく答えてしまいました。
(ちょっと!! 影の皆さん!! 人のプライベートほじくりまわして何してくれてるんですか?!)
私は『影』の皆さんを恨みがましく思ってしまったのでした。
140
あなたにおすすめの小説
あの、初夜の延期はできますか?
木嶋うめ香
恋愛
「申し訳ないが、延期をお願いできないだろうか。その、いつまでとは今はいえないのだが」
私シュテフイーナ・バウワーは今日ギュスターヴ・エリンケスと結婚し、シュテフイーナ・エリンケスになった。
結婚祝の宴を終え、侍女とメイド達に準備された私は、ベッドの端に座り緊張しつつ夫のギュスターヴが来るのを待っていた。
けれど、夜も更け体が冷え切っても夫は寝室には姿を見せず、明け方朝告げ鶏が鳴く頃に漸く現れたと思ったら、私の前に跪き、彼は泣きそうな顔でそう言ったのだ。
「私と夫婦になるつもりが無いから永久に延期するということですか? それとも何か理由があり延期するだけでしょうか?」
なぜこの人私に求婚したのだろう。
困惑と悲しみを隠し尋ねる。
婚約期間は三ヶ月と短かったが、それでも頻繁に会っていたし、会えない時は手紙や花束が送られてきた。
関係は良好だと感じていたのは、私だけだったのだろうか。
ボツネタ供養の短編です。
十話程度で終わります。
王太子妃候補、のち……
ざっく
恋愛
王太子妃候補として三年間学んできたが、決定されるその日に、王太子本人からそのつもりはないと拒否されてしまう。王太子妃になれなければ、嫁き遅れとなってしまうシーラは言ったーーー。
婚約破棄!?なんですって??その後ろでほくそ笑む女をナデてやりたい位には感謝してる!
まと
恋愛
私、イヴリンは第一王子に婚約破棄された。
笑ってはダメ、喜んでは駄目なのよイヴリン!
でも後ろでほくそ笑むあなたは私の救世主!
自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~
浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。
本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。
※2024.8.5 番外編を2話追加しました!
有能婚約者を捨てた王子は、幼馴染との真実の愛に目覚めたらしい
マルローネ
恋愛
サンマルト王国の王子殿下のフリックは公爵令嬢のエリザに婚約破棄を言い渡した。
理由は幼馴染との「真実の愛」に目覚めたからだ。
エリザの言い分は一切聞いてもらえず、彼に誠心誠意尽くしてきた彼女は悲しんでしまう。
フリックは幼馴染のシャーリーと婚約をすることになるが、彼は今まで、どれだけエリザにサポートしてもらっていたのかを思い知ることになってしまう。一人でなんでもこなせる自信を持っていたが、地の底に落ちてしまうのだった。
一方、エリザはフリックを完璧にサポートし、その態度に感銘を受けていた第一王子殿下に求婚されることになり……。
捨てられたなら 〜婚約破棄された私に出来ること〜
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
長年の婚約者だった王太子殿下から婚約破棄を言い渡されたクリスティン。
彼女は婚約破棄を受け入れ、周りも処理に動き出します。
さて、どうなりますでしょうか……
別作品のボツネタ救済です(ヒロインの名前と設定のみ)。
突然のポイント数増加に驚いています。HOTランキングですか?
自分には縁のないものだと思っていたのでびっくりしました。
私の拙い作品をたくさんの方に読んでいただけて嬉しいです。
それに伴い、たくさんの方から感想をいただくようになりました。
ありがとうございます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただけたらと思いますので、中にはいただいたコメントを非公開とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきますし、削除はいたしません。
7/16 最終部がわかりにくいとのご指摘をいただき、訂正しました。
※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。
派手にしない工房は、今日もちゃんと続いている
ふわふわ
恋愛
名門でも、流行でもない。
選ばなかったからこそ、残った場所がある。
街の片隅で、小さな工房を営む職人シオンと、帳簿と現実を見つめ続けるリリカ。
派手な宣伝も、無理な拡大もせず、ただ「ちゃんと作る」ことを選び続けてきた二人の工房は、いつの間にか人々の日常の一部になっていた。
しかし、再開発と条件変更という現実が、その場所を静かに揺さぶる。
移るか、変えるか、終わらせるか――
迫られる選択の中で、二人が選んだのは「何も変えない」という、最も難しい決断だった。
特別にならなくていい。
成功と呼ばれなくてもいい。
ただ、今日も続いていることに意味がある。
これは、成り上がらない。
ざまぁもしない。
けれど確かに「生き方」を選びきった人たちの物語。
終わらせなかったからこそ辿り着いた、
静かで、確かな完結。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる