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成功条件は、絶対に婚約阻止!!
2 側近カルの婚約事情
しおりを挟むベアトリス様が王家の機密情報捜査機関である通称『影』に私のことを調べさせたという発言に、私は顔には出さないように細心の注意を払ったが、頭の中は混乱していました。
(え? 影に調べさせた?! ちょっと、あの人たち何、無断で人のプライベートをこんな小さな子に教えちゃってるの?! でも、誕生日……そうか、今日か……忘れていたな)
私が動揺していると、殿下が少しだけ大きな声を出された。
「そういえば、今日はカルの誕生日か!! カル!! おめでとう!! いつもありがとう」
「……今年もお祝いの言葉を頂き、ありがとうございます」
私は殿下からの思いがけない言葉につい照れてしまった。殿下は思い出した時に、毎年私を祝って下さる。大抵はアリエッタ様のお誕生日のプレゼントを考える時に、「そう言えば、カルの誕生日は過ぎていたな……おめでとうカル」とお祝いを言って下さるが今年は初めて当日にお祝いの言葉を頂いたかもしれない。殿下にお祝いの言葉を直接、頂ける私は果報者であるのは間違いありません。
「ところでベアトリス、『影』を勝手に使ってはダメだろう?」
殿下は私にお祝いの言葉を下さった後、ベアトリス様の前に座ってお叱りになった。殿下に𠮟られてベアトリス様は俯いてしまった。
(ああ、ベアトリス様が悲しんでおられるが、殿下のお言葉をもっともだ。私にできることは見守ることだけだ。)
私はなぐさめたいと思ったが、殿下とのお話が終わるのをじっと待つことにしました。
すると泣いていたと思ったベアトリス様がお顔を上げたと思ったら、大きな声を出された。
「勝手にではございません。おじい様の許可は頂きましたわ!!」
「陛下の~~~??」
私は予想外の答えに思わず声を上げてしまいました。
国王陛下の『影』など国家の重大機密情報を握る影の中でもエリート中のエリート。
(私はもしかしてとんでもない人々にプライベートを調べられてしまったのだろうか?)
私が少しだけ震えていると、ベアトリス様は腰に手を当てて自信満々におっしゃった。
「はい。お願いしたら、すぐに『いいよ』と言って下さいましたわ」
「父上……なぜそのような許可を」
殿下が頭を抱えるとすぐにベアトリス様と目線を合わせ尋ねられた。
「それで、『影』に何を調べさせたんだい?」
するとベアトリス様が腰に手を当てたまま得意気におっしゃいました。
「もちろんのカルのお誕生日や、好きな食べ物、好きな飲み物、好きな色……」
(ふふふ。そんなのこと私に直接聞いてくれたらよかったのに……影の皆さんも微笑ましくて癒された仕事だったかもな)
普段、王族の『影』は情報の取得に命がけになることも珍しくはありません。
そんな殺伐とした中、まだ幼いベアトリス様からの依頼は癒しになったかもしれないと思い私は目を細めてしまいました。
殿下もそう思ったのか、隣で微笑ましそうに「うんうん」と聞いておられました。
そのうちにベアトリス様はドンドンと調べた内容を教えて下さいました。
「お休みの前の日は大抵、お手頃な果実酒を数本とチーズを買って帰って、休日は全く家から出ない引きこもりで、女の人とは全く会うこともない。
たまに場内に来る猫に触ろうとして逃げられて落ち込んでいるんでしょ?
身体も鍛えているし、顔もいいのに遊びにも行かないカルにみんな同情しているらしいわよ」
いつの間にか内容は全然微笑ましいものではなくなっていました……。
(う……さすが国王陛下の『影』!! でも、私は皆に同情されていたのか……それで皆が最近やけに優しいんだな……)
私が思わず遠い目をしていると、殿下の声が聞こえました。
「カル……そんな生活でいいのか?」
殿下に同情心溢れる眼差しで見つめられ、心を抉られるような痛みを感じましたが、私は笑うしかありません。そして、殿下は畳みかけるように私の肩を叩きながらおっしゃいました。
「私が絶対にいい婚約者を見つけてやるからな!!」
「それは……御親切に」
殿下の好意は嬉しかったが、『影』の皆さんに私のプライベートが筒抜けになったことに、がっかりと肩を落としながら力なく答えてしまいました。
(ちょっと!! 影の皆さん!! 人のプライベートほじくりまわして何してくれてるんですか?!)
私は『影』の皆さんを恨みがましく思ってしまったのでした。
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