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7 ヒロインを生贄に
しおりを挟む「フォルトナ様、お待ちしておりました」
「え、ええ」
学園が終わると、エントランスに迎えが来ていた。
そして、私は、王妃教育を受けるために半強制的に、城へ連れて行かれた。
城に着くと、小さめのホールに、いつも私の王妃教育を仕切ってくれている女官と、フォルトナのダンスを担当する先生が待っていた。
「ごきげんよう……」
あいさつをすると、ダンスの先生が鼻息を荒くしながら言った。
「お待ちしておりました。さぁ、フォルトナ様。もうすぐ、文化交流祭ですね!! 今日からしばらくは、ダンスの特訓になります!! ルジェク王子殿下のパートナーとして、誰よりも優美なダンスを披露する必要があります!! 詳しい日程は、わかりませんが、ルジェク王子殿下も確認のためにこちらにいらっしゃるそうです!!」
なるほど!! ゲームの中のフォルトナは、『過度な練習で足を痛めた』と言っていたが、密かに、城で強化訓練が行われていたようだ。きっと、毎日、毎日、無茶な練習を繰り返したのだろう。
私は、ケガをしたゲームのフォルトナにますます同情してしまった。
(よかったぁ~~~ダンス回避して~~)
私は、ダンスの先生を見ながら言った。
「先生、お言葉ですが……私、ルジェク王子殿下のパートナーではありませんわよ?」
「え?」
「な!!」
私の言葉に、先生だけでなく私の王妃教育を担当する女官も、ポカンとした顔をした後、女官が、凄い剣幕で言った。
「フォルトナ様以外のどなたが、ルジェク王子殿下のパートナーになるというのです!! それにそのような話は聞いておりません!!」
「今朝、決まりましたのよ。ああ、我がクラスの代表は、ルジェク王子殿下と、ジルコル男爵夫妻のご息女のクレアさんです」
「……あのジルコル男爵夫妻のご息女……?!」
ダンスの先生が石像のように固まった。まぁ、この国でダンスに関わる者なら、彼らの名前を知らない者などいないだろう。
すると、王妃教育のカリキュラムを作っていると思われる女官と、ダンスの先生がひそひそと話始めた。
きっと、ダンスばかりの予定を組んでしまったのだろう。
私は、二人を見ながら、にっこりと笑いながら言った。
「お二人共、私は、もう帰ってもよろしいでしょうか?」
すると、女官が、しばらく考えた後に「今日はもう戻られても結構です」と答えた。私は、「失礼します」と言うと、素早く屋敷に戻ったのだった。
☆==☆==
「遅れて、すまなかった」
フォルトナが屋敷に戻ると言って、ホールを出た数分後に、ルジェク王子が慌ててホールに入ってきた。
本当はフォルトナと同じ時間にルジェク王子もホールに来るはずだったが、学園で、本当にルジェク王子のパートナーが、クレアで良いのかと、教師を含め皆で、確認していたのだ。
フォルトナのいう通り、クレアのダンスは見事としか言いようがなかった。
だが、ルジェク王子は、長年動きを合わせて息の合っているフォルトナと、文化交流祭に出たいと思った。
ダンスは二人でする物だ。
ルジェク王子は、フォルトナにケガや体調不良などの不都合がなければ、『自分のダンスの相手は、幼い頃から一緒に練習してきたフォルトナがいい』と思っていた。
今日は、そのことを伝えるために、フォルトナが練習しているホールにやってきた。
だが、ホールには、女官とダンスの講師はいたが、フォルトナの姿はなかった。
「フォルトナは、まだか?」
ルジェク王子の問いかけに、女官が頭を下げながら言った。
「これは、ルジェク王子殿下。私共は、文化交流祭での、ルジェク王子殿下のパートナーが、ジルコル男爵夫妻のご息女だとの連絡を受けておりませんでした。先ほど、フォルトナ様から、そのことをお聞きして、初めて知ったのでございます。文化交流祭にフォルトナ様がご出場されないのでしたら、予定が変わってしまいますので、フォルトナ様には、今日の所は、お帰り頂きました」
(フォルトナが帰った? 本当にダンスの練習もせずに? ……一体、フォルトナは、昨日からどうしたというのだ?)
フォルトナは、これまで、一日も学園も王妃教育も休んだことなどない。それなのに、昨日は、学園も王妃教育も休み、絶対に『自分が出る』と言い張るだろうと予測された文化交流祭でのダンスも、推薦されたにも関わらず辞退した。
(てっきり、フォルトナは、自分から『出場します』と言うと思っていたのだがな……)
ルジェク王子は、しばらく黙った後に、女官に向かって言った。
「そうか、わかった。だが、フォルトナの予定の変更は、明日まで待て」
「はい」
戸惑う女官の返事を聞いて、ルジェク王子は、足早にホールを出たのだった。
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