12 / 50
共通 ルート
12 文化交流祭、始まっるよ~~!
しおりを挟む「フォルトナ!! 戻ったぞ!!」
文化交流祭を明日に控えた夜。
セルーン公爵と夫人。すなわち、フォルトナの両親が王都に戻って来た。
まず、声を上げたのはフォルトナパパだった。信じられないくらいのイケオジである。
フォルトナは、どうやら、パパ似のようだ。銀色の髪と、紫の瞳が本気で美しい!!
残念ながら、彼はゲームに登場しなかったので、彼の説明は、私の拙い説明で、どうか許してほしい。
フォルトナパパは、背が高く、逆三角形の身体。きっと、普段から身体を鍛えていると、思われる。笑うと目尻にシワが出来て、凛々しい顔が優しく見える。
とにかく、カッコイイ!!
「フォルトナ、ただいま」
そして、金色の髪に、濃紺の瞳を持つ美しい女性が現れた。
この女性がフォルトナのママだ。唇も頬も天然ローズピンクで、眉も唇の形も最高。スラリと高い鼻筋に、大きな瞳に、長いまつ毛。元BAとしては、これほどの美しさを持つ女性の姿には、感嘆するしかない。
本当に美男美女の夫婦だ。
ずっと眺めていたいが、そういう訳にもいかない。
両親が美形過ぎるというのは、一度置いておいて、私はフォルトナらしく、両親をお迎えする必要がある。
「おかえりなさいませ、父上、母上」
淑女の礼をして、フォルトナの両親を迎えると、彼らはとても喜んでくれた。
どうやら、フォルトナは両親には愛されているようで安心した。
「おかえりなさいませ。公爵、公爵夫人。公爵……例の件、いかがでした?」
兄が隣で冷静にあいさつをした。すると、フォルトナパパは途端に目尻に出来た笑いシワを消して、真剣な顔をした。
ああ、笑シワ……素敵だったのに……。
「やはり、隣国が怪しい動きをしているようだ。だが、ガカール国も一枚岩ではないようでな。リオン王子の周辺が水面下で動いているようだ」
「リオン王子が……」
兄も真剣に話をしているが、私にはなんのことだか、さっぱりわからない。
きっと、あまり関係のない話なのだろう。
そんなことより、パパ……また、笑いかけてくれないかな~~。
私がじっと、フォルトナパパを見ていると、フォルトナパパが、私の視線に気づいてくれた。
「どうした? フォルトナ?」
「いえ……また笑ってくれないかな~と」
すると、私は、フォルトナパパに抱きしめられた。
「これは、どんな褒美だ!! フォルトナが、そんなに可愛いことを言ってくれるなんて!!
もしや……またこれは、あれか! 噂の反抗期とやらが終わったのか?! 終わったんだな?! なんて、素晴らしい日だ!! 祝杯をあげよう!!」
「まぁ、フォルトナの反抗期が終わった?! 嬉しいわ~~~」
フォルトナママにまで抱きしめられた。
本当に、フォルトナは、どれだけ塩対応だったのだろうか?
その後、私は、本当に飽きるほど、フォルトナの両親に抱きしめられたのだった。
☆==☆==
次の日は、文化交流祭だった。
フォルトナの両親は、各国の来賓の方々をおもてなしするために、すでに、文化交流祭の会場に出掛けた。
私は、一応、ルジェク王子殿下の婚約者なので、招待客として、兄と共にダンスの会場に向うことになっている。
その日、私は、胸元や肩が薄いレースになっている上品なデザインのドレス着ていた。
私としては、フォルトナは、抜群のスタイルを持っているのだから、もっと胸元が開いたセクシー系ドレスや、腰のくびれを強調した大人な魅力溢れるマーメードラインのドレスが着たかったのだが、兄に『危険だ! フォルトナ!! 頼むから、もっと、別のドレスにしてくれ。そんな妖艶な姿は危険極まりない!!』と古い時代の頑固親父のようなことを言われて、結局兄セレクトのこのドレスにした。
なるほど、どうやら、兄は清楚系のお嬢様ドレスが好きなようだ。
まぁ、自分の好みのドレスは、恋人に着せるために取っておけばいいのにとは思う。妹に着せるのはどうかと思うが……。
「ああ、なんてことだ!! フォルトナは、何を着ても美しい!! そんなに美しく着飾って大丈夫だろうか? 良からぬ輩が出て来るのではないか? もっと布地の多いドレスにするべきか……」
兄は、本気で言っているのだろうか?
褒めてくれるのは嬉しいが、これより布地の多いドレスとなると、魔法使いが着るローブのようになるのではないだろうか?
もう、このままでは文化交流祭に遅れてしまう。私は、兄の手を引きながら言った。
「兄上の選んでくれたドレス、素敵です。さぁ、会場に向かいましょう」
「そ、そうだな。会場に向かおう」
「はい」
こうして、ようやく、会場に向かうことになったのだった。
☆==☆==
文化交流祭の会場はこの国でも、王宮の次に大きくて、豪華絢爛な建物だ。
毎年多くの、周辺の国の方々を招く、この文化交流祭のために、建てられた。
フォルトナの記憶では知っていたが、やはり本物は迫力が違う。
「凄いですわね……」
私が呟くと、兄が、淡々とした様子で言った。
「まぁ、この国の威信のために建てられた物だからな」
「威信……」
そう、この文化交流祭は、周辺諸国の王侯貴族が一同に会する重要な場だ。
このくらいの荘厳さは必要不可欠なのかもしれない。
「ああ、もうすぐ着くな」
「ええ」
兄は、私の手を取ると、穏やかな顔で言った。
「では、行こうか」
「はい」
私は、兄に手を引かれて、ゆっくりと馬車を降りたのだった。
682
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。
倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。
でも、ヒロイン(転生者)がひどい!
彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉
シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり!
私は私の望むままに生きます!!
本編+番外編3作で、40000文字くらいです。
⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
白い結婚の行方
宵森みなと
恋愛
「この結婚は、形式だけ。三年経ったら、離縁して養子縁組みをして欲しい。」
そう告げられたのは、まだ十二歳だった。
名門マイラス侯爵家の跡取りと、書面上だけの「夫婦」になるという取り決め。
愛もなく、未来も誓わず、ただ家と家の都合で交わされた契約だが、彼女にも目的はあった。
この白い結婚の意味を誰より彼女は、知っていた。自らの運命をどう選択するのか、彼女自身に委ねられていた。
冷静で、理知的で、どこか人を寄せつけない彼女。
誰もが「大人びている」と評した少女の胸の奥には、小さな祈りが宿っていた。
結婚に興味などなかったはずの青年も、少女との出会いと別れ、後悔を経て、再び運命を掴もうと足掻く。
これは、名ばかりの「夫婦」から始まった二人の物語。
偽りの契りが、やがて確かな絆へと変わるまで。
交差する記憶、巻き戻る時間、二度目の選択――。
真実の愛とは何かを、問いかける静かなる運命の物語。
──三年後、彼女の選択は、彼らは本当に“夫婦”になれるのだろうか?
殿下に寵愛されてませんが別にかまいません!!!!!
さくら
恋愛
王太子アルベルト殿下の婚約者であった令嬢リリアナ。けれど、ある日突然「裏切り者」の汚名を着せられ、殿下の寵愛を失い、婚約を破棄されてしまう。
――でも、リリアナは泣き崩れなかった。
「殿下に愛されなくても、私には花と薬草がある。健気? 別に演じてないですけど?」
庶民の村で暮らし始めた彼女は、花畑を育て、子どもたちに薬草茶を振る舞い、村人から慕われていく。だが、そんな彼女を放っておけないのが、執着心に囚われた殿下。噂を流し、畑を焼き払い、ついには刺客を放ち……。
「どこまで私を追い詰めたいのですか、殿下」
絶望の淵に立たされたリリアナを守ろうとするのは、騎士団長セドリック。冷徹で寡黙な男は、彼女の誠実さに心を動かされ、やがて命を懸けて庇う。
「俺は、君を守るために剣を振るう」
寵愛などなくても構わない。けれど、守ってくれる人がいる――。
灰の大地に芽吹く新しい絆が、彼女を強く、美しく咲かせていく。
公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さくら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる