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コルネリウス ルート(兄ルート)
Ⅱ 夜会のイケメンは3割り増しです
今日は王室からのご招待なので、最上級の装いをしている。
だから……。
「フォルトナ……今日は一段と美しいな」
私を褒める兄の方が何倍も、壮絶な色気を放っていた。右肩に付けられたセルーン公爵家の少しごっつい家紋入りのブローチでマントを押さえる姿がとても良く似合っていた。
「ありがとうございます。兄上も素敵ですよ」
「そうか……それは……その……感謝……する」
兄は首まで真っ赤になって照れている。さっきまでの色気のある姿が、一変して可愛くなった。カッコイイのに、可愛いとか……うちの兄、最強じゃないだろうか?
思わず兄を見てニヤけていると、兄が私の手を取りながら言った。
「フォルトナのこんな美しい姿を……誰にも見せたくないな……」
「え?」
兄の意外な言葉に私は顔が熱くなり、兄を見上げた。
(私を誰にも見せたくないって……よく、小説とかゲームとかで嫉妬した時とか、独占したいと思った時に言うセリフなんじゃ……もしかして、兄は……私を……?)
そう思うと、心臓が激しいくらいに脈打つ音が聞こえる。隣の兄に聞こえないか心配になっていると、兄が困ったように言った。
「ああ、これほど美しいと、今日も殿下や、他の子息がフォルトナにまとわりついて来るのだろうな……対処を考えただけで疲れる……今日も皆に『早く、フォルトナと逢わせろだの、早く婚約者候補を決めろだのと……言われるのだろうな……気が重い……」
スン……。
私は、ようやく冷静になれた。
そうだ。
兄が嫉妬をするわけがない。つまり今の兄は、まだ終わっていない仕事を皆に言及されるサラリーマンと同じ立場ということだ。それは、確かに考えただけで、憂鬱極まりない事態だ。心から同情する。
私は、立ち止まって兄を正面からじっと見つめた。そして、兄に身体が付きそうなほど近いた。
「フォ、フォルトナ……ど、ど、どうした……こんな人目のあるとこで……そういうことは、部屋で2人の時に……」
真っ赤になって動揺した兄の肩に、私は手を取られていない方の手を乗せた。
「兄上。お疲れ様です。私が何か言うとややこしくなりそうなので、対応はお任せいたします。私は邪魔にならないように、王宮の高級スイーツをのんびり堪能しながら待っております」
兄の苦労を労うと、先ほどまで真っ赤になった兄が、急に冷静な態度になって言った。
「……ああ。任せろ。行くぞ……完璧に対応してやる!!」
兄は少しだけ不機嫌そうに馬車に向かって歩き出した。
無理もない。これから、面倒事が待っているのだ。申し訳ないが、対応は全て兄に押し付け……任せて、私はのんびりとスイーツでも食べることにしよう。うん、そうしよう。
私は、少し不機嫌な兄と共に馬車に乗り込んだのだった。
☆==☆==☆==
王宮には着飾った男女が大勢招待されていた。
「さすが、王子殿下主催のパーティーですわね」
私は扇を広げて兄の耳に口を寄せながら小声で言った。
「……そうだな……フォルトナに釣書を送りつけて来た者たちが大勢いる……胃が痛いな……」
兄は、眉間にシワを寄せながら言った。
「え? そうなのですか?! うわぁ~~大変そうですね……」
「本当にそう思っているのか?」
兄がすでに疲れた顔をしながら言った。
「もちろんです! では、兄上、いつものように私は主催者の方のご挨拶が終わりましたら、テラスでスイーツをサーブして頂いておりますので!! 後はよろしくお願い致します!!」
「………………ああ」
夜会に来ると、私は主催者にあいさつだけして、後の社交は兄に全てお任せしていた。そして私は、人の全くいないテラス席で夜会が終わるまで、のんびりとしている。夜会というのは基本的に社交の場なので、テラスにいるような人はほとんどいないのだ。
私も初めの頃は、兄に一応『一緒にいましょうか?』と聞いたこともあるのだが、『結構だ。フォルトナはテラスでのんびりとしていろ。招待してくれた主催者にあいさつすれば十分だ。これ以上面倒事を増やさぬためにもテラスにいてくれ』と言われた。
兄と今後の打合せをしているとファンファーレが聞こえた。
「殿下たちがいらっしゃるぞ」
「ええ」
私たちは、背筋を伸ばして、2人の殿下の登場を待った。今日は、ガカール国との友好の夜会でもあるので、ルジェク王子とリオン王子殿下お2人の主催の夜会なのだ。
そして現れた2人の王子はそれぞれの国の正装を優美に着こなし、まるで『宝石か?!』と言うほどの眩い光を放っていたのだった。
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