悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番

文字の大きさ
47 / 50
アイク ルート(先生ルート)

Ⅵ 劇の練習が楽し過ぎる件



「では配役はこれでいきましょう!!」

 なんと私たちは『変調シンデレラ』をすることになった。
 脚本はなんと、ダイアン様だ。

 シンデレラ役はもちろんクレアさん。
 王子役はカイル様。
 騎士役がルジェク王子。
 魔法使いが兄。
 私と、ダイアン様がシンデレラの母と兄役だ。
 そしてアレク先生がシンデレラの父の役だ。

 配役はほとんど私が決めた!!

 なぜながら、クレアさんのドレス姿が見たかったし、ルジェク王子殿下の騎士服姿とか、兄の魔法使いの姿が見たかったからだ。
 みんなに必死でお願いすると、みんな赤い顔で「フォルトナが見たいというなら……仕方ないな」と受け入れてくれた。みんな心配になるくらいチョロ過ぎて心配になるレベルだ。



 ストーリーはこうだ。

 まず、私がアレク先生の家にダイアン様という息子を連れて嫁入りし、ダイアン様がシンデレラをいじめる。
 そして舞踏会に行けなくて泣いていたシンデレラの前に、魔法使いの兄が登場。
 魔法で綺麗になったシンデレラは舞踏会の会場で、騎士に「踊ってください」とダンスを申し込まれる。

 かなり高度なダンスを披露し、会場の話題を独占。
 それをカイル王子が聞きつけて、踊っている二人を見てシンデレラに一目ぼれ。
 その場で、求婚する。
 
 シンデレラは、12時が近くなり、王子に返事をしないままその場を去る。
 その後、シンデレラはお城から探しに来たルジェク王子扮する騎士に見つけられて王子様と結婚する。






 私はみんなに似合う衣装を探したり、メイク道具をかき集めた。

「ん~~~もう少し光を反射したい……パール本物混ぜようかな……」

 理想のために、公爵家の財力を使って理想を体現するようなメイク道具も作った。
 みんなはセリフも出番もたくさんあるが、私はほとんど出番がないので、みんなが劇の練習をしている間にどんなメイクをしようか、髪型はどうしようかと悩んでいた。

「とても楽しそうですね、フォルトナ様」

 アレク先生がテーブルの前に座って目を細めながら言った。
 そう言われて思い出した。

 そう、楽しいのだ。

 私は本来、メイクをして喜ぶ人の顔が見たくてBAになったのだ。
 とても体力も気力もいる大変な仕事だが、新しい商品を見た時は心底心が躍るし、お客様がキレイになると心の中では狂喜乱舞している。転生してから私はその感覚を久しぶりに味わっていた……
 
「そうですね、とても楽しいです」

 公爵令嬢という立場では自分にメイクをすることもできない。
 なぜならすでにそれを仕事にしている人たちがいるからだ。

 それに舞台のような場所でなら私の今風のメイクも受け入れられるが、この時代の社交界ではそうはいかない。
 自分の今まで生きてきた場所の感性とこの時代の感性が全く違うのでメイクも全く違う。
 だからパーティーなどの時は公爵家のメイク専門の侍女に任せている。

 厚塗りで個人の個性を完全に活かせてないメイク……

 この世界に合ったメイクは私にとって、地味にストレスだった。

 だが、この世界は私の世界の美的感覚をそのまま受け入れてくれるような世界ではない。
 ――素敵だわ……と簡単に新しい感覚が受け入れられるほど……社交界という伝統と格式に守られた場所は……甘くはないのだ。

 私は自分で手を加えた化粧品を見ながら言った。

「今後もこんなことが出来たら嬉しいですね……そのくらい楽しいです。でも……きっとこれで最後です」

 思わず、呟くとアイク先生が言った。

「そんな楽しそうなのに……あきらめるのですか?」

「え?」

 私は思わずアイク先生を見た。

「もうルジェク王子殿下の婚約者ではないのでしょう? 公爵家もコルネリウスさんが継いで下さる。あなたには才能があると思いますよ?」

 先生の瞳は分厚い眼鏡でよく見えない。
 でも、声は真剣そのものだった。
 確かに、今の私にはもう縛りはない。

 ――もしかして、こっちの世界でも美容にかかわって生きることができる??

 そんなことを思っていると、アイク先生が微笑みながら言った。

「オペラに出ていたエリオットという男性を招待してもよろしいでしょうか? 彼がとても興味があると言っていました」

「事前申請に通れば、いいのではないでしょうか?」

 劇はかなり評判になり、事前に申請して許可が下りれば生徒の関係者も見に来てもいいことになっている。

「ふふふ、ありがとうございます」

 アイク先生は笑うと普段とは違って見えた。
 私は頬が赤くなるのを感じて、先生から視線を逸らしながら言った。

「ところで先生、どうされたのですか?」

「ああ、そうでした。そろそろ私たちの出番ですよ、最初から通すそうです」

 私は慌てて立ち上がった。
 
「それは申し訳ございません、すぐに行きましょう」

 するとアイク先生が私に腕を差し出した。

「行きましょうか、奥様」

 私は頬が熱くなるのを誤魔化すように先生の腕にぎゅっとくっいた。

「はい」

 そして、そのままみんなの練習している場所に入った。
 アイク先生がセリフを言った。

「シンデレラ、この人が新しいお母さんだよ。どうだい? 綺麗な人だろう? 私はこの人のことがとても好きなんだ。愛しているんだ。ずっとずっと一緒にいたいと思っている。どうか仲良くしてくれ」

 アイク先生に演技でも好きだ、愛してる言われると恋愛リハビリ中の私は心臓が早くなる。
 だが私もセリフを言う。

「シンデレラ、私のことは今日からお母さんと呼んで頂戴」

「ああ、本当に美しい人と結婚出来て幸せだな」

「私もですわ」

 私とアイク先生がイチャラブ新婚夫婦を演じている横で、ダイアン様がセリフを言った。

「私もいますが……今日から私が兄になる。基本、私の言うことを聞くように」

 そしてクレアさんがセリフを言う。

「はい。お母様、お兄様。どうぞよろしくお願いいたします」

 ふと隣を見上げると、優しく微笑むアイク先生と目が合って心臓が跳ねたのだった。











――――――――――――――――


お気づきの方もいらっしゃるかもしれません。

そうです……――みんなで劇がしたかった。

それでアイク先生編をお届けしました。

劇のフルバージョンは、アイク先生編が終わったらお届けいたします!!
結構長い(笑)
どうぞ、お楽しみに!!

たぬきち25番

 
感想 29

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。

倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。 でも、ヒロイン(転生者)がひどい!   彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉ シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり! 私は私の望むままに生きます!! 本編+番外編3作で、40000文字くらいです。 ⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。

悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています

窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。 シナリオ通りなら、死ぬ運命。 だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい! 騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します! というわけで、私、悪役やりません! 来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。 あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……! 気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。 悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!

【完結】その令嬢は号泣しただけ~泣き虫令嬢に悪役は無理でした~

春風由実
恋愛
お城の庭園で大泣きしてしまった十二歳の私。 かつての記憶を取り戻し、自分が物語の序盤で早々に退場する悪しき公爵令嬢であることを思い出します。 私は目立たず密やかに穏やかに、そして出来るだけ長く生きたいのです。 それにこんなに泣き虫だから、王太子殿下の婚約者だなんて重たい役目は無理、無理、無理。 だから早々に逃げ出そうと決めていたのに。 どうして目の前にこの方が座っているのでしょうか? ※本編十七話、番外編四話の短いお話です。 ※こちらはさっと完結します。(2022.11.8完結) ※カクヨムにも掲載しています。

悪役令嬢の取り巻き令嬢(モブ)だけど実は影で暗躍してたなんて意外でしょ?

無味無臭(不定期更新)
恋愛
無能な悪役令嬢に変わってシナリオ通り進めていたがある日悪役令嬢にハブられたルル。 「いいんですか?その態度」

P.S. 推し活に夢中ですので、返信は不要ですわ

汐瀬うに
恋愛
アルカナ学院に通う伯爵令嬢クラリスは、幼い頃から婚約者である第一王子アルベルトと共に過ごしてきた。しかし彼は言葉を尽くさず、想いはすれ違っていく。噂、距離、役割に心を閉ざしながらも、クラリスは自分の居場所を見つけて前へ進む。迎えたプロムの夜、ようやく言葉を選び、追いかけてきたアルベルトが告げたのは――遅すぎる本心だった。 ※こちらの作品はカクヨム・アルファポリス・小説家になろうに並行掲載しています。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

突然決められた婚約者は人気者だそうです。押し付けられたに違いないので断ってもらおうと思います。

橘ハルシ
恋愛
 ごくごく普通の伯爵令嬢リーディアに、突然、降って湧いた婚約話。相手は、騎士団長の叔父の部下。侍女に聞くと、どうやら社交界で超人気の男性らしい。こんな釣り合わない相手、絶対に叔父が権力を使って、無理強いしたに違いない!  リーディアは相手に遠慮なく断ってくれるよう頼みに騎士団へ乗り込むが、両親も叔父も相手のことを教えてくれなかったため、全く知らない相手を一人で探す羽目になる。  怪しい変装をして、騎士団内をうろついていたリーディアは一人の青年と出会い、そのまま一緒に婚約者候補を探すことに。  しかしその青年といるうちに、リーディアは彼に好意を抱いてしまう。 全21話(本編20話+番外編1話)です。