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第4章 クラウスルートを強制攻略!?
2 別荘へ到着!
しおりを挟む「着いたようだな」
アルフレッド殿下が呟くと、ノックの音がして御者が「到着いたしました」と言った。そしてアルフレッド殿下の返事で御者が扉を開けた。
私が初めに馬車を降り、正面を見て目を大きく開けた。
「ジェイド!! 絶対会えると思っていた!!」
「クラウス!」
馬車乗り場にクラウスが立っていた。クラウスは私と目が合うと声を上げながら手を振った。
どうやら、クラウスは私が来ることを予感していたようだ。
「(なんだ、あいつ)」
そして私の後に馬車を降りたであろうアルフレッド殿下が本人に聞こえないくらいの小声呟き、ほとんど同時にランベール殿下も呟いた。
「ああ、あいつか……」
クラウスはランベール殿下とアルフレッド殿下が馬車から降りると丁寧に頭を下げた。
「ようこそ、アルフレッド殿下、ランベール殿下。お越し頂き光景です。皆様が滞在されている間、何かありましたら、このクラウス・シュテルンに遠慮なく申しつけ下さい」
アルフレッド殿下はにこやかに「出迎え感謝する」と言った。ランベール殿下は仏頂面で「よろしく頼む」と言った。そしてクラウスが屋敷内と部屋へ案内してくれた。
「離れとのお話でしたが、今回は3階の特別室をご用意させて頂きました」
クラウスは一通り屋敷内を案内すると、最後に3階に案内してくれた。3階には部屋が2つしかない。アルフレッド殿下の部屋を開けて中を見て私は目を大きく開けた。
(うわ~~凄っ!!)
部屋の中はかなり豪華な造りになっていた。
アルフレッド殿下は部屋を見て若干頬を引きつらせながら言った。
「このような部屋を……感謝する。だが、気を遣わないようにと伝えたと思うが……」
ランベール殿下も「(俺の部屋もこれか……?)」と小声で呟きげっそりとしていた。
二人はもっと落ち着いた部屋でのんびりと過ごしたかったのだろうが、クラウスの気持ちはわかる。王族が滞在するのに離れに泊めるのも心苦しいかったのだろう。
クラウスは、二人の殿下の様子には気付かないようで笑顔で答えた。
「はい。『気遣いは不要』とのお言葉を賜り、当主や時期当主ではなく、僭越ながら私がこちらの主として参りました。殿下たちが希望されていました離れは、殿下たちが滞在されるには粗末な造りですので……」
本来なら当主が王族を迎えるはずだが、きっと彼らは社交のために王都に留まるのだろう。
そして、クラウスがアルフレッド殿下を見た。
「それでは、おくつろぎ下さい。何かありましたらベルでお呼び下さい」
「あ、ああ……」
アルフレッド殿下は部屋に残り、その後、同じ3階のランベール殿下を部屋に送った。
ランベール殿下は私に意味深な視線を向けながら部屋に入って行った。
そして、クラウスと二人になるとクラウスが「ジェイドはこっち」と言って案内してくれた。そして階段まで来ると楽しそうな声を上げた。
「ジェイド、よく来たな!! 実は、お二人ともう一人ここに来ると聞いて、絶対にジェイドだと確信したから、俺がここに来た」
階段を降りながら無邪気に笑うクラウスに窓からの昼間の日差しが反射してさらに眩しく思えた。
私は思わず目を細めて返事をした。
「そうなの?」
「ああ。正直、俺は将来騎士になる。兄上たちほど社交は重要じゃない。だから社交シーズンは憂鬱だった。でも、ジェイドが両殿下の護衛として来るなら俺も手伝おうって思ったんだよ」
私はモーリスにもそうだったが、どうやらクラウスにも側近とか、護衛認定されているらしい。
「私は、護衛というわけじゃ……」
「ああ、わかってるって。任命書もなくて王族の護衛なんて名乗れないよな。でも、騎士試験は受けるんだろ? 『デニス団長が卒業したジェイドと手合わせをする約束をしている』って、ハンス隊長から聞いたからな」
ハンス隊長はデニスが副団長に就任した後から私たちの剣術の指導に来てくれていた先生だ。
そして、ハンス隊長は学園に時々剣術の指導に来てくれる。
私は授業でしかお会いしないが、将来騎士を目指す生徒は専用の授業があるのでそこでハンス隊長から聞いたのかもしれない。
だが私は思わず首を傾けた。
(あれ? 私、デニス団長とそんな約束した??)
もしかして『お言葉感謝します』という言葉を約束と受け取ったのかもしれない。
「私……とんでもないことを!」
二階に到着して、思わず頭を抱えると、クラウスに肩を組まれた。
「何、謙遜してるんだよ。同世代で騎士団から感謝状もらってる人間がいるなんて鼻が高いぜ。ところでジェイドはいつ剣の稽古しているんだ?」
クラウスは私の顔を覗き込みながら尋ねた。いつも思うが、クラウスはゲームではよそよそしい雰囲気なのに、同性同士だと距離感が近い!!
「私はいつも朝にしているけど……」
剣はサボるとすぐに身体が鈍るので、毎日剣を振るようにしている。ピアニストが、『1日ピアノを弾かないと指が鈍る』と言っているのを聞いて『凄い世界だな~』と思っていたが、剣も同じで、一日持たないと、次の日に脳内イメージ通りに身体が動かなくて、ケガが多くなったりするのだ。剣はいわば凶器なので、少しの感覚のズレが大事故に繋がる。
だからこそ、あまり真面目とは言えない私も剣の訓練は休めないのだ。
「朝か、付き合うよ。一緒にしよう」
クラウスが私を見ながら楽しそうに言った。
「いいの?」
こんな豪華な別荘の整備された庭で稽古をしてもいいものか、と戸惑っていたのでクラウスの提案はとても嬉しかった。
「ああ。俺もジェイドと訓練出来るのは嬉しい。剣のクラス違うから話には聞くけど、一度も手合わせしたことないからな」
「あの……あんまり期待しない方が……」
話がなんだか、意図しな方に進み焦っているとクラウスが扉の前で止まった。
「ここが、ジェイドの部屋。そして隣が俺」
「あ、クラウスが隣なんだ」
「何かあった時、すぐに言える方がいいだろう? 気楽に部屋に来てくれよ。あ、すでにジェイドの荷物は部屋に運んである」
「ありがとう、クラウス……」
私がクラウスにお礼をいうと、小走りで侍女がやってきた。
「ジェイド様。アルフレッド殿下と、ランベール殿下がお呼びです。両殿下はすでにアルフレッド殿下のお部屋にいらっしゃいますので、すぐにお越し下さいませ」
クラウスは私の肩から手をどけた。
「休むヒマもなく護衛か……ジェイドも大変だな。俺も行くか?」
私は首を振った。
「いや、いいよ。とにかく、私は呼ばれてるから行く」
「おう、じゃあ、また後で」
「うん!!」
私は急いで侍女に案内されて、アルフレッド殿下の部屋に向かったのだった。
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