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第3章 怖がらず動け、自分!
第40話 確実に違う未来への扉
アレク殿下の誕生パーティーが終わると、エリザベス様から封書を渡された。
「帰ったらそれをご両親に見せて、一緒に考えて……いい返事を期待しているわ」
恐らく特別留学の件だと思い「はい」と返事をした。
(隣国に留学か……)
俺は馬車の中で再びエリザベス様にもらった手紙を取り出したながら思った。
まさか俺に隣国への留学の話が出るとは夢にも思わなかった。
以前の俺なら領主になるということに迷いはなかった。
だが……
(アルフィーの方が領主として適正がある)
俺は一度領主として失敗している。
そのせいで俺や屋敷の人々だけではなく、領民にも多大な負担をかけた。
そろそろ俺も覚悟決める必要があるな……
俺は家に戻ると、自分の部屋に行き一通の手紙を取り出した。
そしてそれを胸ポケットに入れると父の書斎に向かった。
父の書斎の前で俺は大きく息を吐いた。
そして少し緊張しながらも扉をノックした。
「入れ……」
「はい」
俺が部屋に入ると父とオリヴァーが打合せをしながら顔を上げた。
「パーティーはどうだった?」
「問題なく……というわけではありませんが無事に終わり、こちらを預かって参りました」
父に尋ねられて、俺は二人にエリザベス様に貰った手紙を見せた。
まず初めに父が手紙を見た。すると彼はしばらく固まり、その手紙をそのまま隣に立っていたオリヴァーに渡した。
オリヴァーは書類を手にすると、目を大きく見開いた。
「レオナルド様にこのような?!」
そして今度は二人に、もう一通の手紙を差し出した。
父とオリヴァーは手紙を見て顔を歪めた。
「これは?」
そして父が静かに尋ねた。
「母からの手紙です。酒棚に入っていました」
父が明らかに動揺しながらゴクリと息を呑んだ。
そしてゆっくりと手紙を開いた後に、手紙をオリヴァーに渡した。オリヴァーは目に見えて動揺していた。
無理もない。
母からの手紙の内容は……
――レオナルドへ
この手紙を見つけたということは、もうお酒が飲める歳になったのですね。
直接言える自信がないので手紙にします。
あなたの本当に父親はゼルフィルではありません。
誰が本当の父親か知りたいと思ったら……私に直接聞いて下さい。
必要なければこの手紙は燃やして下さい。
こんな形であなたに伝える臆病な母をお許して下さい。
レベッカ――
俺は父を見ながら尋ねた。
「俺は本当の父親が誰なのか知りたい。ロイドに聞いたら、父上に聞けと言われました」
俺はじっと見つめた。
もしかしたら、母も父の浮気を知って浮気していたのかもしれない。
両親がそれぞれ浮気していただなんて、知らない方が幸せなことなのかもしれない。
それでも俺は前に進むためにも真実が知りたかった。
何も知らないまま、父だけが母を捨てて浮気をした加害者で母は裏切られた可哀想な被害者だと思って生きることはつらい。
父も母も同じだったのだとしたら、以前の継母とアルフィーを執拗に責め続けた俺は……本当に無知で、傲慢で……救いようがないほど……愚かだ。
それでも俺は本当のことが知りたいと思った。
俺の真剣さに父が静かに口を開いた。
「酒棚に手紙を……だが、レオナルドはなぜそんな場所を開けたのだ? まさか酒を飲んだわけではないのだろう?」
俺は頷くと真っすぐに父を見ながら答えた。
「母の好きだったグラスに……母の好きだった果実酒を注いであげたくて」
これは本心だった。
俺が以前の生で最後に毒などを入れて割ってしまったあの美しいグラスが本来の美しを放つ姿が見たかった。
オリヴァーが奥歯を噛みながら呟いた。
「献杯をされたのか……」
オリヴァーの言葉を聞いた父も呟くように言った。
「なるほど……」
父は小さく息を吐いた後にオリヴァーを見ると二人は顔を見合わせて頷いた。
そして父はゆっくりと口を開いた。
「お前の本当の父は――このオリヴァーだ」
「え?」
俺は慌ててオリヴァーを見た。彼はつらそうに頭を下げた。
「ずっと黙っていて申し訳ございませんでした」
「どうして……オリヴァーが……」
信じられなくてオリヴァーを見ると、父が口を開いた。
「元々レベッカとオリヴァーは愛し合っていた。だが、レベッカは一人娘でこのノルン伯爵家の跡取りだ。だが、オリヴァーは男爵家の三男。伯爵家を継げる身分ではなかったのだ」
オリヴァーが男爵家の出身だというのは聞いたことがある。
でも、母と愛し合っていたというのは……知らなかった。
さらに父が説明を続けた。
「学生時代から私はオリヴァーの親友だった。私は伯爵家の次男。そして私は当時からマリーと愛し合っていた。だからよく4人で共に過ごしたのだ」
事実は想像を遥かに超えていた。
(え? 父とオリヴァーが友人?? しかも継母も交えて母と4人で一緒に過ごしていた??)
俺が混乱しているとオリヴァーが切なそうに言った。
「私たちが4人で過ごしていたある日、レベッカにお見合いの話が持ち上がりました。相手は伯爵家の次男。レベッカがノルン伯爵家を継ぐ以上、同等の家柄の者と結婚しなければならないという決まりがあります」
俺はそこまで聞いてある考えが頭に浮かび顔を青くした。
「まさか!! 母は偽装結婚を持ちかけたのか!?」
父もオリヴァーも顔を見合わせた後に頷いた後に父が口を開いた。
「そうだ。戸籍上は私がレバッカの夫になり、事実上の夫婦関係は、お互いのパートナーとするということにした。私はノルン伯爵になることで安定した生活を得た。マリーも私と一緒に居られるのなら内縁の妻で構わないと言ってくれた」
父がそこまで言うと今度はオリヴァーが口を開いた。
「ゼルフィル様とマリー様がノルン伯爵領で領主としての仕事をして、レベッカと私が王都で社交を引き受ける。表向きには夫婦とは言えませんでしたが、私はレベッカの側に居られて幸せでした」
俺はそう言われて思い出す。
パーティーがあると言えば、母は必ずオリヴァーを連れて行った。秘書が夫の代わりにパーティーに同行することは何もおかしなことではないので気づかなったが、そう言われてみると母とオリヴァーはいつも一緒にいた。
そして父がつらそうな顔をした。
「これまで元々ノルン伯爵家の者としての顔が広かったレベッカの社交のおかげで交渉がかなりうまくいっていた。だが、これからはそうはいかない。レオナルドはまだ学生だ。お前だけに社交を任せるわけにはいかないので、手助けになればと思い……マリーとアルフィーを王都に呼んだのだ」
今回、蜜の花の件で思い知ったが女性の社交はかなり重要だ。キャリー様やエリザベス様の尽力や口添え、そして行動力は本当に頼もしかった。
それに以前の俺も、もしも身近に『カラバン侯爵令嬢が婿を探している』との情報をくれる女性がいたら事前にしっかりと準備が出来ただろう。
気が付けば俺は涙を流していた。
――そうか……父は母を蔑ろにして継母やアルフィーを呼んだわけではなく、俺のために彼女たちを王都に呼んだのか……
そしてそれに気づいた時、これまで不可解に思っていた出来事が一本の線で繋がった気がした。
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