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雪合戦までの25日間【最終話】
しおりを挟む次は風林火山と、毘沙門天のコートの戦いなので、俺たちは一度休憩だ。
休憩中に5組の試合を見ることになったが、今はまだ準備中で試合は始まっていないので、俺たちはクラスみんなで集まって、西田たちからさっきの試合についての感想を聞いていた。
「3組は、上手な人が投げる個数が少なかったのが敗因ね。やっぱり、投げるのが得意な人が投げるのに集中した方が効率がいいみたい」
西田がみんなを見ながら言った。そして佐々木がタブレットを開いて教えてくれた。
「うん、攻めの人が1つの雪玉を作るのに大体12秒前後かかってる。1つを投げ終わって、さらに次を投げるまでには約15秒もかかってる。その点、うちらは2秒以内には次が投げれている。攻めの人数は少ないけど雪玉を投げた数は圧勝」
さらに川中が口を開いた。
「それに平塚が警戒してた人たち投げるのに焦って、脆い雪玉になって飛距離が伸びなかったみたい。それに、3組の女子はあまりやる気ないみたいで、雪玉がほとんど的に届いてなかった」
川中の言葉に平塚が答えた。
「なるほどな。やっぱり【作る】は重要だな。それに、【指令】も助かった。実際に中にいると、本当に状況がわからないな」
そして相沢が楽しそうに笑った。
「それな!! みんな『ハンバーグ弁当ってなんだ?』ってざわついてたし」
そして少し興奮したように佐藤が口を開いた。
「あと、弥生対野球部のピッチャー対決は完全に弥生の勝利だった。弥生、1球も通過させてない」
弥生とは鈴木のことだ。さすがハンドボールのキーパーだ。
そして山岡が口を開いた。
「さっき、川中が言っただろ? やはり焦っていたのだろうな。みんな雪玉に速度も威力もなかった」
想像以上に【作る】という担当は大事だったようだ。
「会川の脅威的なスコップ使いのおかけで雪も常に保たれてたし、作りやすかった」
女子が笑うとみんなも同意した。
そう言えば、ひたすら雪玉を作れるほど、常に雪が供給されていたことを思い出した。
(会川、頑張ってくれたんだな……次はもう少し周りを見よう)
さっきはひたすら雪玉を作ることに集中していたので、みんなの動きを見れなかった。
次は少し周りを見たいと思った。
「それに向こうは、スコップで雪玉防いでてズルいと思ったけど……うちらの盾の方が性能よかった。スコップフラフラしてたし、危なかった」
盾作りに並々ならぬこだわりを見せていた木村が得意気に言った。
「え? そんなことしたんだ」
俺はそんなことも気づかなかったが、西田が教えてくれた。
「うん。確かに、向こうは雪集め用に許可されたスコップを盾にしてた」
「へぇ~~」
だが、そんなルールすれすれのことしても記録は伸びなかった。
本当に雪合戦とは奥深い。
その後、5組の戦いを見たが、【攻め】【守り】【作る】のバランスの取れた良いチームだった。
だが5組も【指令】がいないようで、やはり穴がある。
そして、すぐに試合は終わった。
自分たちがやっていると、長く感じるが見ていると5分はあっという間だ。
「5組が勝ったな……」
山岡の言葉にクラス全員に緊張が走った。
だが、そんな空気をこの男はたった一言で吹き消した。
「大丈夫だ。……行こう」
そしてコートに向かって威風堂々と歩き出した平塚の背中はとても大きく見えた。
平塚栄一の持つ大将としての威厳。
それを肌で感じた。
そしてそんな平塚に、山岡が続き、鈴木が続き、相沢が続きクラスのみんなが動き出した。
俺はその光景を目に焼き付けていたので中々動けなかった。
ドンッ!!
背中に衝撃を感じて振り向くと、西田が俺を見て笑った。
「野沢、ラストだね」
西田に声をかけられて笑って答えた。
「うん。西田たち、本当にありがとう、ラスト。頼むな」
「任せなさい!!」
西田が手を出したので、俺は再び西田の手を当てた。
そしてコートで再びみんなで集まって手を伸ばした。
コート内に平塚の声が――響き渡った。
「いよいよ、ラスト。行くぞ、2組!!」
「おお~~!!」
今度はほとんど全員と手を打ち鳴らすように手を当てて、平塚の防具を着ける手伝いに向かった。
防具をつけると、平塚のが俺を見て笑った。
「野沢、俺、今、すげぇ楽しい」
俺も笑って答えた。
「俺も楽しい」
そして平塚と手をパチンと音が響くように合わせた後に、自分の位置向かった。
(やれることはすべてやった。すでにほしい結果も手に入れた……あとは勝利を受け取りに行こう)
もしかしたら、俺たちのことをたかが雪合戦で大袈裟なと笑う人がいるかもしれない。
学校行事なんかで熱くなって、と呆れられるかもしれない。
そう、たかが――雪合戦。
でもその雪合戦に俺は、いや……俺たちは夢中になっていた。
ホイッスルと同時に試合が始まった。
俺はひたすら雪玉を作った。
ただそれだけの単純な作業だったが、とても楽しかった。
耳に『特盛デラックス弁当』という西田の声が聞こえた。
(ああ、かなり乱戦だな……)
特盛デラックス弁当とは、全体的に攻撃が来ているので、均等に守れという意味だ。
ふと清水を見ると、休むことなくひたすら雪を投げている。
そして、顔を上げて的を見た。すると俺の視線の先に平塚が目に入った。
(え?)
平塚はまさかの逃げるだけでなく、自分に来た雪玉をテニスのように撃ち落としていた。
まさに鉄壁の守りだ。
「あはは、うちの大将最強。あれは、破れないわ」
俺は平塚が凄すぎて、思わず笑ってしまった。
ただでさえ動く的なのに、さらに手に持っている盾で撃ち落とされたらどうしようもない。
俺たちの大将は最強。
そう思うと、安心して雪玉を作ることに没頭できたのだった。
◇
あたたかな布団から出ると、時計の針はもう8時だった。
今日は休みなので、学校はない。
ただ酷くお腹が空いていたので、ベッドから出ててキッチンに向かった。
扉を開けた瞬間……
「斎~~!! 平塚くんと一緒に新聞に載ってるよ~~!! 二人ともイケメンに写ってる~~」
母親が興奮気味に俺の新聞を押し付けた。母親はコートを着込むと車の鍵を持った。
「どこに行くの? 今日は仕事?」
母親に尋ねると、彼女は相変わらず興奮しながら言った。
「新聞買いに行ってくる!! 息子の写真がこんなに大きく載ってるんだし!! もう一部、買ってきて切り取らなきゃ!! 行ってくる!!」
「いってらっしゃい……」
俺は新聞をテーブルに置いてあくびをすると、コーンスープを袋を開けた。
電気ポットに水を入れて待っている間に先ほど母親に渡された新聞を再び見た。
するとそこには平塚と、彼の横で自分とは思えないほど、真っすぐに前を向いてやりきった顔の自分が写っていた。
昨日、俺たち2組は、2戦目も同じく7つの的を守り抜いた。
合計14個も守った俺たちが他を圧倒して、優勝した。
本当は、平塚一人がインタビューを受けて新聞にのるはずだったのだが……
『今回の勝利は軍師野沢くんの功績です』
平塚はそう言って譲らずに、俺も一緒に写真を撮ることになった。
なんだかカッコつけて写っている自分が少し照れくさい。
でも……
(うん、楽しかった……)
気が付けば笑っていた。
俺は今回の雪合戦で、いや、平塚のおかげで無駄かもしれないことでも、何かに没頭することでしか得られない楽しさがあることを知った。
――そして、月日は流れ25年後。
俺は再び平塚と一緒に、今度は世界的な経済誌に写真が載ることになるのが……
それはまた少し先の未来の話だ。
【完】
《エンドロール》
1 野沢斎
2 平塚栄一
3 五十鈴琴葉
4 西田
5 川中
6 佐々木
7 相沢
8 山岡
9 鈴木
10 会川
11 高山
12 井村
13 坂田
14 清水
15 仲野
16 小川
17 木村
18 佐藤
19 原岡 先生
20 野沢の母
21 野沢の父
22 平塚の母
23 西田の母
24 田辺(建設関係)
25 平塚の父
以上、苗字の出て来た登場人物
【25人】
――――――――――――
最後まで読んでいただきましてありがとうございます。
彼らと共に雪合戦までの日々を歩んで下さって本当にありがとうございます。
ここまで読んで下さったあなたはすでに、平塚くんや、野沢くんのクラスメイトです(笑)
最近楽しいことないな~という時は、彼らを召喚してください。
きっとあなたの力になってくれるはずです。
それでは、またどこかで皆様にお会いできますことを楽しみにしております。
物語には関係ありませんが、名前がすでにアニバーサリー(笑)
たぬきち25番
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嬉しいよ~~
朝から泣きます!
ありがとうございます!!
ぜひぜひまた雪合戦に参加を!!
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ありがとうございます!!
とても嬉しいお言葉、感動です。
ぜひともまた、彼らと一緒に雪玉を作りに戻って来てください!
彼らはずっと、仲間です!!