我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番

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【エリック】(真相ルート)

4 日常が非日常

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「……あっ…ン…お、お兄……様……もう、これ以上は……無理です」

私は痛み耐えながらお兄様を潤んだ瞳で見つめた。

「もう少しだ……こんなに硬くなってるんだ……ほら、ベル……息を止めるな、ゆっくりと息を吐け」

「んっ……は……はぁ……お兄様……ダ…メ……もう……」

「ベル……もう少し……もう少しでいける……」

お兄様がゆっくりと腰を支えてくれていた。

「くっ……はぁ……うう」

「いく!! いけるぞベル!! ……いけた!!」

「やった~~!!」

ようやく私は用意された台に足を曲げずに手をつくことができた。


皆様!! こんにちは!!
私は昨日、クリス様の婚約破棄の書類にサインをして正式にクリス様の婚約者ではなくなりました。まさかあんなに無理だと思っていた婚約破棄がこんなあっさりと、信じられないですよね?

え? 今、何をしていたか?

ああ、今ですか? 

 現在私とお兄様は、儀式の練習をしています。なんでも近々隣国の女王陛下に謁見するとのことで、その時に必要な前屈のように腰を90度くらい曲げてする礼を練習していたのですが、私は身体が硬くて、90度も曲げられなくて、兄と一緒に訓練してようやく曲げられるようになりました。

柔軟体操だと思っていただけるとわかりやすいと思います。

「ベル!! よくやった!! では次はキスをするか!! 昨日は20分キス出来たからな。今日は30分を目指そう」

そう言うと、兄は私の腰を抱き寄せてきた。

「お、お兄様!! お願いです。少し休ませて下さい。そもそも、本当に世の恋人たちはそんなに長い間キスできるようにキス呼吸の練習をしているのですか?」

私たちはキスの間の呼吸のことをキス呼吸と命名して、その特訓(?)に励んでいた。

「ベルさえ出来れば、練習の必要はないのだが……私は問題ないしな……」

兄がふっと笑った。

「うっ!!」

まるで兄の言葉が矢のように私の胸に突き刺さった。

「いざという時つらいのはベルだと思うのだが……私はすでにできるしな」

「ぐっ!!」

またまた、言葉が突き刺さった。

「こんな赤子のキスより、私としてはもっと大人のキスをしたいが……」

そんな兄の言葉に私はもう開き直るしかなかった。

「わかりました!! 頑張ります!! キスしましょう!! キス呼吸マスターしましょう!!」

 その途端、兄は私の唇に自身の柔らかく手入れされた唇を押し付けてきた。
最近の兄は、いつでもとこでもキスの練習をしてくるので困ってしまう。最初は顔を赤らめていた侍女たちも、次第に『またキスしてるわ~』という感じになり、最近では私たちがキスをしていても特に問題なしというように平然としていた。

(なんだか、恥ずかしがっている私がおかしいみたいな空気じゃない? 最近?)

腑に落ちないまま、兄とキスをしていると、執事は至って普通な様子で声をかけてきた。

「お取込み中申し訳ござません。お客様がお見えです」

「……んっ……、ふぅ~。誰だ?」

兄は名残惜しそうに唇を離すと、執事の方を向いた。

「コンラッド様でございます」

 予想外な名前に私も驚いてしまった。コンラッド君は、私たちの次の年に入学した2期生で入学した当時からヴィオラ科の不動のトップだった。だから私ともよく一緒に演奏していた。だが、私はどうやらコンラッド君に嫌われているらしく、個人的な付き合いは一切ないので、コンラッド君が家に来るのは意外だったのだ。

「……え? コンラッド君? どうしたのかな?」

私はチラリと兄を見た。

(お兄様と仲がよろしいのかしら?)

すると、兄が大きな溜息をついた。

「わかったすぐに行く」

兄は私の腰から手を離すと、エスコートをするように腕を差し出した。

「ベル。行くぞ」

「は、はい」

私は兄の腕を取ると、コンラッド君が待つサロンに足早に向かったのだった。

+++

「こんにちは、ベルナデット様」

サロンに行くとコンラッド君が優雅に立ち上がって私の手を取った。そして兄の方をついでのように見た。

「エリックも」

「ああ」

兄が少しだけ困った顔であいさつをした。

「こんにちは、コンラッド君どうしたの?」

私はあいさつを返すと、急いでコンラッド君に尋ねた。するとコンラッド君は美しい顔でまるで輝くような笑顔を作って見せた。

「ベルナデット様、婚約破棄おめでとうございます!! これでひとまずあなたを他所に出さずに済んだことに安然致しました。」

「え? あ、ありがとう? ……でいいのかしら??」

 婚約破棄をおめでとうと祝われるとは思っていなかったので、私はどう答えたらいいのかわからずに戸惑ってしまった。

「つきましては、ベルナデット様の今度の卒業演奏のパートナーを仕方ないから引き受けてあげようと思いましてね? エリックもそれが一番いいでしょ?」

コンラッド君の言葉に兄は眉を寄せて苦しそうな顔を作った。

(え? どういうこと?)

私は1人訳が分からずに立ち尽くしていたのだった。



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